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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
プロローグ 勝利と莉乃
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第7話 莉乃の過去

圭子さんに連れられて、夕食の準備に向かう


どうしても、アイツと一緒に脅かす係は出来ない。


私は父に考え直す様に、言おうとしたが圭子さんに引っ張られ、夕食の準備をしている大テントに抵抗むなしく連れて行かれた。


さっきまでの態度とかでは無く、私は男性を根本的に嫌いで恐怖さえ感じている。いわゆる男性恐怖症と呼ばれている病気である。


小学校の時、ママの彼氏がふざけて、私のお尻を触ってきたのである。

勿論、ふざけて触ったのだけど、小学3年で男女を少し意識し始めた私にとって、とても恐ろしい出来事だった。

私はしばらく泣き続けて、ママを困らせた事があった。

その出来事があって、ママの彼氏が嫌いになる。


それから数週間後、たまたまママの彼氏と二人きりになった時の事である。

僅か10分ぐらいの時間に事件は起こった。

私がTVを観ていると、

「麦茶飲むかい?」

と麦茶を差し出して来た。

「要らない!」

と手で避けようとした時に誤って、手を払い除けてしまい、麦茶をこぼしてしまった。


パシッ!


ママの彼氏が私の頬に平手打ちをしてきた。


私はママが来るまで泣き続けたのであった。


これで完全に、ママの彼氏の事は嫌いになり、ママが一緒に出て行こうと言ってきた時も、頑なに拒否をした。


それから私は、男性を触ると震えが止まらなくなってしまうのである。


アイツから、ソフトクリームを貰うなんて、美希の事が無くたって無理な事だった。


夕食の準備に圭子さんと大テントに着くと、女性達が集まっている場所に交わる。

どうやらカレーを作る事になっているみたいで、私と圭子さんは野菜を切りに炊事場に向かった。


炊事場に着いた私達は、野菜を切り始める。

「ねえ、莉乃ちゃん。」

「はい?」

「部活は、何かやってるの?」

「はい。吹奏楽をやってます。」

「パートは?」

「フルートです。」

「フルートかあ、莉乃ちゃんの演奏聴きたいな。今度聴かせて」

「はい。いつでも言ってくれれば吹きに行きますよ。」

と社交辞令的に返答した。

「スポーツは?」

「あまり興味がないです。」

「そうか、野球は?」

「まったく興味が無いです。友達の彼氏が野球をやっていたので、その子が野球の話ばかりするから、何となく分かりますけど」

「そうなんだ。私も野球のルールも分からないのよ。ねえ、甲子園って知ってる?」

「はい、高校野球の聖地ですよね。全国大会をやる場所ですよね。」

「えっ!よく知ってるわね。」


知っていると言うより、常識だと思うのだが・・・


「全国大会かあ。小学校の時ね、勝利がみんなの前で甲子園で優勝投手になって、プロ野球選手になるって宣言したのよ。それで私も甲子園の事を知ったんだ。」


中学の控え投手なのに、それはさすがに無いでしょ、と思ったが、そのまま圭子さんの言葉に耳を貸す。


「それでね。勝利は手と足が大きいから、これから背が伸びると言ったんだけど、最近背が伸びないかもって思ってるのよね」

「でも手が大きいと背が高くなるって、よく聞きますよ?」

「うちの主人の身長高いと思う?」

「普通ぐらいですかね?でもちょっと低いかな」

「そうよ低いのよ、何であの人が水泳早いか分かる?」


さっきの川での事を思い出す。

「う〜ん。力が強いからですか?」

「確かに背筋と握力は人並み外れていたと、よく威張ってたけど、実はね、手と足が大きいのよ。」

「えっそうなんですか?」

「そうなの、多分、勝利の手足が大きいのも遺伝だと思うのよ」


何が言いたいのだろう?


「それでね、勝利は身長が大きくなれば、どこへ行ってもエースになれると思っていて野球の有名校に行こうと勉強を頑張ってるの」


何を言いたいのだろう?


「勉強を頑張るのは凄くいい事なんだけど、背が高くならなくても行くのか聞いて欲しいのよ」



「私が?」


「うん」


「何で?」


「ずーと私が言い続けてきちゃったから、私から言いづらくって、お願い!」


「旦那さんなら、普通に言ってくれると思いますけど」


「あの人は、背なんか関係無いって、いつも言っているから、私に相談して来たと思うのよ。」


「えっ、でも私は無理ですよ。」


「今の莉乃ちゃんなら言えると思うのよ。

(あんた、手足が大きいのは遺伝なのよ、あんたの身長は伸びないわ!)

なんて言ってくれると嬉しいわ」


確かに今の私なら怒るネタとしてなら言えそうだけど

「無理!無理ですよ」

「お願い」

手を合わせてお願いしてくる。

「でも・・・」

「お願い、私を助けると思って!」


どうしよう


「約束は出来ないけど、言うタイミングがあったら言います。それでもいいですか?」

「ありがとう」

圭子さんが抱きついて喜んだ。


なんか母に抱きつかれた様な感覚となり、懐かしさと嬉しさを感じた。


すると横の炊事場にいた女性が圭子さんに話し掛けてきた

「今、甲子園って言ってました?」


「ええ。うちの子が甲子園の優勝投手になるって言ってたから、今話してたの」

「あら、凄いわね」

「そうなのよ、高校に入って背が大きくなったら大投手になるって、頑張ってるわ」



それは、無いでしょ!


すると

「うちの主人が甲子園に出た事があるのよ。キャッチャーだけど」

「キャッチャーって、ボールを取る人よね。あとで勝利の投げる球を取ってもらおうかしら?」

「多分、ボールとグローブを持ってきていると思うから、言っておくね」

「ありがとう」

いつの間にか、圭子さんのペースにはまっていく。

でも甲子園の優勝投手になると言っていた子が、ここで投げたら恥をかくと思うんだけど、大丈夫かな?


横の女性は大テントに戻って行った。

その女性を見送ると、圭子さんが私に向かって

「どうしよう、また言っちゃった」


圭子さんが、息子に言えない理由が分かった気がした。


そして私達も野菜を切り終えて大テントに戻った。


しばらく煮込んで、カレーのルーを入れると香りがしてくる。

ご飯も炊けたので、皆んなに食事が出来たことを伝えると大テントに集まってくる。


父が挨拶をして、小野さんが乾杯の音頭を取って、食事が始まった。


私の横には圭子さんが座り、圭子さんの横にはアイツが座った。

「上手い!」

あいつが言う。


大袈裟な、ただのカレーなのに


私も一口食べる。

「わあ、美味しい」

とつい口に出てしまった。

「莉乃ちゃん、美味しいでしょ、こうやって外で食べるから味以上に美味しさを感じるものなのよ。」

「本当ですね。凄く美味しい」

と笑顔で伝えた。


圭子さんが、本当に自分の母の様に感じ始めていた。


皆んなが食事を食べ終えると、小野さんが皆んなに話し始める。


「これから、肝試しを開催します。

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