第2-7話 坊主
4月13日(月曜日)
駅に近いA棟前の公園で耕太と奈緒と待ち合わせをして、学校に行くのが毎日の日課となっている。
僕達はギリギリの時間で行くので、御茶ノ水より少し遠い彩香ちゃんは、僕達より30分程早く登校するので一緒になる事は無い。
だいたい僕が一番乗りで公園で待っていて、次に奈緒が来てギリギリの時間に耕太がやって来る。
ところが今日は耕太が既に公園で待っていた。
昨日のコーチの話を奈緒に早く伝えたいからだろう。
「耕太おはよう」
「おう!勝利おはよう」
するとすぐに、奈緒もやって来た。
耕太が先にいてビックリして
「耕太どうしたの?」
「まあな。俺もやる時はやるって事だよ」
そして駅に向かいながら、唐突に耕太が話し始める。
「奈緒、女子マネージャー大丈夫だぞ」
と、ドヤ顔で言うと、奈緒は笑みを浮かべながら
「えっ本当?」
「だから、俺を信じろと言っただろ」
すると奈緒は満面の笑みを浮かべて
「うん。ありがとう耕太」
奈緒の笑顔を見て、耕太の表情が薄っすらと紅くなる。
そして学校に着く間、日曜日の出来事を詳しく話し始めた。
そして学校に着き、教室に入った。
「ねえ、勝利?今週の莉乃ちゃんの面会だけど、ちょっと相談があるんだ。」
「何?」
「勝利と耕太の髪の毛を剃って欲しいの。莉乃ちゃん自分に毛が無いのを気にしてたから」
「うん、勿論俺はいいけど、耕太は、中学の時も髪を切るの嫌がってたから、やってくれるかな?」
「私も一緒にお願いするわ。それと昼休みに教員室に付き合ってくれない?野球部の顧問に入部届けを出しに行こうと思ってるんだ。」
「しょうがない。ジュース1本で手を打ってやるよ」
「相変わらず、せこいわね勝利は」
そして昼休み
奈緒と教員室に行き、監督の席に行った。
そして奈緒が監督に話し始める。
「あのーすいません。入部届けを受けてくれると聞いたんですが、今出してもいいですか?」
「今週土曜日の午後に職員会議があって、そこで決めるから、来週の月曜日に出せると思うよ」
表情が変わる
「まだ決まったわけでは無いんですか?」
「一応、学校との取り決めだったから、職員会議にかけないとダメなんだよ。だけど、女子マネージャーを入部させてはいけない根拠が無くなったから、大丈夫だと思う」
再び笑顔になって、
「はい、分かりました。月曜日まで待ちます。」
と元気良く答えた。
そして奈緒と教員室を出て行った。
「奈緒、良かったな」
「うん。ところで莉乃ちゃんと連絡してるの?」
「うん。LINEだけど連絡してるよ。」
「苦しいって?」
「ううん。全然大丈夫しか送ってこないんだよ。苦しいはずなのに・・・」
「じゃあ今度行って、苦しい時は苦しいって言うように言ってあげてよ。」
「うん」
気を使ってくれるのは有難いが、出来れば僕にも本音を言って欲しい。
4月18日(土曜日)
午前中は授業を受けて、午後からは練習になる。
監督は職員会議があるので、練習には参加しなかったが、いつもの様に流コーチは、練習に参加した。
今日のコーチは、先週と違い、ノックにしてもいつもの数倍の量を行う。
結局守備練習だけで、今日の練習は終わった。
最後に全員を集めてコーチが話し始めた。
「君達は甲子園に行けるチームだ。ただ、代表を勝ち取るためには、今まで以上の練習と今まで以上に上手くならなくてはいけない。
バッティングは水物だが、守備は練習すればするほど、試合で生きる。
だから徹底して守備の練習をしたいと思う。」
みんなが
「はい」と力強く返事をする。
そしてコーチが
「絶対に甲子園に行こうぜ!」
先輩達も、こんな熱く語るコーチの姿を見るのは初めてだったらしく、一瞬戸惑ったが
「おう!」
と返事をした。
練習が終わって帰っている間も耕太は
「疲れた、マジで疲れた」
全員が個別ノックを100本受けたので、今日の帰りは皆んなも耕太と同じ言葉を言ってるのだろうと感じた。
そして亀戸に着くと、朝から決めていた1000円カットの店に入った。
まずは、僕が呼ばれて、丸刈りにしてもらう。
そして耕太も僕と同じように丸刈りにしてもらった。
「あ〜俺の髪の毛が・・・」
耕太は、嘆く様に呟いた。
店を出て、髪の毛が無くなった耕太に
「耕太ごめんな」
「お前が謝るなよ!俺は莉乃ちゃんのために剃ったんだから」
「ありがとう」
「だから、お前のため・・・」
僕の後ろを見て、耕太の口が開いたまま止まった。
僕は後ろを振り向くと
髪の毛も眉毛も無い、奈緒が笑顔で立っていた。
「どう、似合う?」




