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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第1章 中学卒業
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第1-14話 日帰り温泉

(莉乃)

日曜日


いつも起きる時間に目が覚めて、布団の中で昨日の事を思い返す。


奈緒ちゃん、可愛いかったな


あんなに可愛いくて性格が良さそうな子が、勝利が振り向いてくれなくても、勝利だけを想い続ける。


勝利への愛情の深さを感じる


(ダメダメ、もう勝利の事は考えないと心で誓ったばかりなのに)


するとLINEが届いた。


えっ勝利からだ!。


LINEを読むだけなら震えない。

多分、直接会ったり直接話さなければ、大丈夫なんだと感じている。


ただ、それは果たして二人にとっていい事なのだろうか?


いや、絶対に間違っている。


勝利には、あんなに想ってくれる子がいるのに、こんな中途半端な付き合いを引きずっていたら、奈緒ちゃんも可哀想だ。

それに、幸せになる事が出来る勝利も、こんな私が引き止めたら可哀想だ。


ここは、きちんと身を引くべき!


私は自分で気持ちを奮い立たせる。


(勝利、もう連絡しないで下さい。私はもう貴方と話したくありません。)

と入力したが、送信ボタンが押せない。


頭では分かっている、分かっているんだけど・・・


携帯を勉強机に置き、朝食を作りに台所に行く。


父も今日は休みなので、まだ寝ているようだ。


私はお湯を沸かしてコーヒーを淹れて、こんがりと焼けたトーストにマーガリンをつけた。


TVのスイッチを入れて、TVを観ながら朝食を摂るが、勝利の事ばかり考えているので、TVの内容が入ってこない。


はあ〜


出るのは溜息ばかりだ。


「何だ、朝から溜息ついて。溜息をつく度に幸せが逃げてしまうんだぞ。」

根拠も何も無い事を言いながら父が起きてきた。

「ハイハイ、私の幸せはすばしっこくて、捕まえられないんですよ。」

すると父が思い出した様に話し掛けてくる。

「あっ温泉でも行くか?何か横須賀に知る人ぞ知る名湯があるらしいぞ」

「横須賀?」

「うん。インターから近いみたいだから、混雑もしないらしいぞ」


温泉にでも入って、心を休ませたい

「行こう!」


その一言で、今日の予定は決まった。


父も最初から行きたかったのか、朝食も摂らず着替えを始める。

「莉乃も早く支度しろよ。莉乃が支度出来たら行くぞ」


やけに積極的だな?


先週の私の様子を見て心配してるのかな?


私も支度を急いで、準備が出来るとすぐに家を出た。


首都高速に乗り湾岸線に出て車を走らせる。そして横浜に入ると横浜港が目に入った。

目の前に橋が見えると

「あ〜海だ〜、あれがベイブリッジよね?」

「最初の橋が「つばさ橋」で、次が「ベイブリッジ」だよ。ちょっと寄ってくか?」


「うん」


車はつばさ橋を越えると左にウィンカーを出し、大黒パーキングに入った。

円を描く様に下に降りて行くとパーキングに着いた。


取り敢えずトイレに入り、トイレを出ると父が誰かと携帯で話している。



「パパ誰と話していたの?」

「あ〜小野さんだよ。」


まさか!

「小野さんと何を話していたの?」

「小野さんもこっちに向かっているんだって」


えっ


「もしかして、勝利も?」


「いや、勝利君は来ないみたいだよ。小野夫婦と奥さんの友達とその娘が来るみたいだけど」

「その娘?」

「何だか家族同然の付き合いをしている家族みたいだよ」


それって、勝利の幼馴染だ!


もしかして奈緒ちゃん?


今日は勝利の事を考えたくなくて温泉に来たのに・・


「莉乃、あそこの展望台に行くか?」

「うん」

展望台に向かう父の後を歩いて展望台に着いた。


橋の下なので景色は凄いとは言えなかったが、潮の香りと波をぼーっと眺める。不思議と心が休まっていく。


海って癒やし効果があるのかな?

何も考えずに眺めているだけで、嫌な気分が和らいでいる様に感じる。


だいぶ嫌な気分が和らいで来た時に、父の携帯に電話が入る。

「あ〜今、展望台で海を眺めているよ」

そんな会話が聞こえると、

「莉乃ちゃ〜ん」

と走って来る圭子さんの姿が目に入ってきた。

圭子さんは、そのまま私に抱きついて来た。


キャンプの時もそうだったが、母のいない私にとって、圭子さんにハグをされると母の温もりを感じるのか心地良い。

今の私にとって、その心地良い温もりで、心に積もった嫌な気持ちを目から涙になって出ていった。

圭子さんも何も聞かず、泣いている私を黙って抱いてくれた。


「お母さん・・・」


もちろん母では無いが、自然と口から漏れていた。


泣き終わり、我に帰ると

「圭子さん、ごめんなさい」

「いいのよ、たまには莉乃ちゃんのお母さん役させてね。」

と笑顔で言ってくれた。


さっきまでは誰とも会いたく無い気分だったが、海で浄化された心を、圭子さんの母性愛で埋めてもらい、嘘の様に元気が出た。


「あっそうだ。莉乃ちゃんと同じ歳の子を紹介するね」

と言って、圭子さんが手招きして女の子が近づいて来た。


「初めまして、一条彩香です。よろしくね」

と握手を求めてきた。


髪はロングで眼もくっきりしていて、ちょっと垂れ目で笑顔で出来るえくぼが可愛さを引き立てる。

背は女性にしては少し大きい162、3cmぐらいで、私より少し大きい。


私も手を差し出して、握手をしながら、

「私は結城莉乃(ユウキリノ)です。こちらこそよろしくね、」

と握手した。


すると圭子さんが

「貴方達って、姉妹みたいね。ねえ和子さん」

彩香ちゃんのお母さんだろう人が

「本当ね。でも圭子さんは髪型が一緒だと、みんな姉妹になっちゃうんだもんね」

と笑顔で言う。

その言葉に皆が笑った。


でも、この子が勝利の好きだった子なのだと納得してしまう。


今日はどんな1日になるんだろう?



そしてベイブリッジを出て目的地に向かった。


首都高速から横浜横須賀道路に乗り終点まで行くと、海が見えてくる。

高速を出た信号で待っている時に

「パパ!海だね。この近くなの?」

と聞くと、父が右手で真横を指し

「ほらアソコだよ」

と指を向けた先に「湯楽」と書かれた看板が見えた。

「本当に近くだね」


そして信号が変わり湯楽の駐車場に着いた。

小野さんの家の車も着いて湯楽に入った。

日曜日の昼前とあって結構人がいる。


「取り敢えず1回風呂に入って、食事にしよう」

と号令の様に言った。


女性は4人、男性は2人それぞれがお風呂に入る。


さすがに初対面で、いきなり裸を見せ合うのは少し恥ずかしい。

コソコソと脱いで浴場に入る。まずは、体を洗い始めると、横に彩香ちゃんが座って洗い始める。

「結城さんってスタイルいいね。何かスポーツやってるの?」

「ううん。スポーツは苦手なんだ。部活も文科系の吹奏楽をやってるの。

あっそれと莉乃でいいよ、苗字で呼ばれると、何かくすぐったい感じ」

「うん、分かった。じゃあ私も彩香って呼んで」

「うん」

そして二人で内風呂に入る。

「莉乃ちゃんはパート何?私も吹奏楽でフルート吹いているんだ。」

「私もフルートよ。一緒だね」


話しやすい子だな。


更に彩香ちゃんが

「ねえ露天風呂に行く?」


やけに積極的な子だな?


勝利は、こういうタイプが好きなんだ

とつい考えてしまう。


露天風呂に行くと、10月の少し肌寒い空気と太陽による温かさと海がコラボして、気持ちがいい。


思わず

「はあ~」と息を吐く。

すると横でも

「はあ~」と同じく彩香が息を吐いた。


二人は目が合い笑った。

「莉乃は何処に住んでるの?」

「御茶ノ水だよ」

「学校は?」

「池女の中等部だよ」

「え~じゃあ来年は同じ学校かも知れない。私、池女の高等部を受験するんだ。」

「そうなんだ。じゃあ一緒になるかも知れないね。よろしくね」


笑顔で話すが、どうしても彩香が私に話すように距離を近づけれず、一歩距離を置いてしまう。


話はいきなり勝利の話に変わる。

「キャンプで勝利と仲良くなった子って、莉乃ちゃんなの?」

「なんで?」

「勝利のお父さんが社長に電話しようと言っていたから、確かキャンプも会社で行ったと言っていたような記憶があって」

「そうか、確かに勝利とキャンプで仲良くなったのは私よ」

「そうだったんだ、莉乃ちゃんなら納得。綺麗だし優しそうだもんね」


さすがにその言葉に対して、返す言葉が見つからない。


その時、圭子さんが

「そろそろ出るわよ」

と声を掛けてきたので、湯舟から出ようとした。

その時、後ろから声が聞こえた


「勝利と付き合うの?」

と聞いてきたので、後ろを振り返り

「ううん。それは無いわ」

と答えて浴室を出て、脱衣所に行った。


そして女子4人は待ち合わせ場所の食堂前に向かった。


4人で食事が終わり、圭子さんと彩香ちゃんの母はエステに向かった。


私と彩香ちゃんは、海が見渡せるリクライニングチェアーに座ってのんびりと海を眺めていた。


「さっきはごめんね。気を悪くしちゃった?」

「えっ何が?勝利の事なら平気だよ。本当に付き合わないから」


「何で?嫌いなの?」

グイグイと私の中に入ってくる。

「嫌いでは無いんだけど、男と付き合う気が無いだけなんだ」

この話を終わらせようと興味が無い素振りを見せた。


すると意外な言葉が返ってくる。

「実は私も男に興味が持てないの。これって異常なのかなって思ってたけど、同じ気持ちの人がいて良かった。」

と笑顔で言ってくる。


やばい、墓穴を掘った!


慌てて取り繕うとする

「いや、そういう意味では無いのよ」

「そういう意味?」

私は顔を赤くして、小さい声で

「私はノーマルだから。友達として、同性は好きだけど、愛する事は無いわよ」

すると笑いながら

「私だってノーマルよ。ただ同年代の男性に興味が無いだけよ。」


何だそういう事か。

勝利が好きだった人が、実は同性愛者だったなんてオチではなくホッとした。


すると彩香ちゃんが

「そろそろ、もう一度お風呂に行こうか?」

「うん」

と頷いた。


お風呂場に向かっていると、20代のカップルがイチャついていて、キーケースを私の足下に落とした。

私はすぐにキーケースを拾う。

男性が

「ありがとう」

と私が持っているキーケースに手を伸ばしてきた。

私は、その手を見て震えてしまう。

その震えた手にある、キーケースを男性は取り

「ありがとうね」

と何の気もなく、お礼を言ってきた。

私の声は震え

「いいえ」

と言うのが精一杯だった。

更に足も震えて、その場にしゃがみ込んでしまった。


その一部始終を見ていた彩香ちゃんが


「莉乃ちゃん、それって男性恐怖症?」

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