第1-13話 頑張れ!優勝
奈緒がストーカーとか言うから、電話もLINEも控えて止めている。
1週間経てば、LINEぐらいしてもいいよな?
大丈夫だよ
自問自答する
金曜日
朝のHRを終えると先生から、
「小野、昼休みに学年主任の桜井先生の所に行くように」
?
桜井?あの先生は苦手だな
取り敢えず「はい」と返事をする。
「心城学園の事じゃない?もしかして取り消しだったりして」
奈緒が笑顔で言ってくる。
「そんな事あるのかな?」
「それは学校次第でしょ」
と不安を駆り立てる。
しかし昼休みには、その不安は一蹴された。
僕と耕太は昼休みに桜井先生から、正式に心城学園の入学が決まった事を伝えられた。
よし!
さっきは奈緒に不安を掻き立てられたので、今度はお返しに、ドッキリを仕掛けてやろうと考えた。
まずは奈緒が言った通り、落とされた事にして、実は嘘だったというオチだ。
僕は暗い顔をして教室に入り、奈緒にも声を掛けず席に座り、頭を抱えて塞ぎ込んだ。
あれ?
声を掛けて来ない
僕は横の席の奈緒を見る
!
何と僕と同じ格好をして泣いている。
えっ?
何で泣いてる?
もうこうなったらしょうがない。本当の事を打ち明けようと思った時に、先生が入って来て授業が始まった。
わあ〜最悪!
授業が始まると、教科書を見る振りをして下を向き、涙が溜まるとハンカチで拭う。
授業中なので、携帯で知らせる事も出来ない。
僕はノートをちぎり、本当の事を書いて奈緒に渡した。
(紛らわしい態度をとってゴメン。心城学園受かったよ)
すると奈緒もノートを千切って、返事を書こうとしているが、涙がポタポタと机に落ちて、書きづらそうだった。
それでも何とか書いたものを、僕に渡してきた。
その時の奈緒の顔は涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃだった。
そんな表情をした奈緒が書いた「良かった」の一文字を見て、ここまで心配してくれる奈緒の優しさが、ありがたかった。
僕は鞄からティッシュを出して、再度ノートを破り
(心配してくれてありがとな、とにかくこれで鼻水を拭け)
授業が終わり、帰ろうとした時に奈緒が話し掛けてきた
「今日、一緒に帰ろうよ。合格祝いで何か奢ってあげるよ。」
すると耕太が教室に入って来て
「勝利、帰ろうぜ!」
すると奈緒が
「そういえば、耕太も受かったの?」
耕太も僕と同じ事を考えたのか、いきなり肩を落とす。
また泣いてしまうので、耕太を止めようとしたら、奈緒が
「そっかダメだったんだ。次は頑張ってね」
ほぼ無感情で普通に反応した。
それでも耕太は
「嘘だよ〜受かったよ〜」
とおちゃらける。
そして3人で帰る事になり、たわいもない会話をしながらマンション前に着く。
そこで3人は別れ、それぞれのマンションに帰って行った。
僕もマンションに着いて、エレベーターに乗り、家のある7階のボタンを押す。エレベーターが4階を過ぎた時にLINEが入る。
奈緒だ
(まったく一緒に帰ってんだから、その時言えよ)
と思いつつメッセージを見ると
「30分後に勝利のマンションのエントランスに来て」
?
まさか、また日曜日に買い物を付き合えとか言わないだろうな?
日曜日に莉乃にLINEして、もしかして会えるかも知れないと期待している僕は、そんな事を考えていた。
まあ聞くだけ聞くか
30分後
僕はエントランスに居た。
奈緒が時間指定したのに、まだエントランスに来て居ない。
すると奈緒が走ってやって来た。
「お前が遅れてどうすんだよ」
「ごめんね。エレベーターが点検だったの忘れてて」
「でっ?何?」
すると手に持っていた紙袋を僕に差し出す。
「はい、これ」
紙袋を受け取る。
「何これ?」
「合格祝いよ、合格祝い」
ここは素直に
「ありがとう」
僕はその場で紙袋を開けると、中に手で包装してプレゼント仕様になっている、ちょっとお洒落な袋が入っていた。さらにその袋を開けると
?
アンダーストッキング?
いわゆる野球のユニフォームを着るときに履く靴下だ。それも買った時の袋は無く、直接入っていた、
しかし、そのアンダーストッキングの片方に「優勝」とマジックで書かれていて、もう片方に「頑張れ」とマジックで書かれていた。
「よく分かんないから、靴下にした。これで1つ目の夢は叶ったも当然でしょ?」
何も疑わず話す奈緒だった。
「お前なあ、これで甲子園で優勝出来たら皆んな書くだろ!」
と言ったものの、嬉しかった。
「でもありがとうな。その時はちゃんとスタンドで見てろよ」
「その約束は多分出来ないわ。じゃあ帰るね。明日は大事な日だから」
?
大事な日って何だ?
土曜日
今日は特に用事も無く家でのんびりと過ごしていたが、15時頃に耕太から電話が入り、近くの公園でキャッチボールをやろうと誘われる。
17時には暗くなるので、今から公園に行っても30分ぐらいしか投げれない。
でも、どうせ暇だからいいやと思い、公園に行く事にした。
キャッチボールが終わると自動販売機でジュースを買いベンチに座って、たわいもない話で盛り上がる。
日も暮れ始め、べンチから立とうとした時
「なあ勝利?」
珍しく真剣な表情を浮かべている。
「何?」
「俺、本気で奈緒の事を好きだから。」
何だ改まって?
知ってる事だったが、真面目に言う耕太を見ると、冗談も言えない。
「うん。分かってるよ。俺も応援するから頑張れよ」
と言ったところでLINEが入る。
「あっ奈緒だ」
つい言葉に出してしまう。
耕太の表情が曇り
「LINEは何て?」
と言った後に言い直す
「あっごめんごめん、何でも無い、忘れてくれ。」
奈緒からのLINEの内容を耕太に伝える。
(莉乃を助けてあげて。このまま別れたら、彼女が可哀想だよ。頼んだわよ)
耕太がそれを聞き、暗かった表情が晴れやかに変わっていく。
「じゃあ、もう暗くなって来たから俺は帰るぞ。奈緒の悩み聞いてやれよ!じゃあな」
耕太は帰って行く
まったく何だったんだ?




