第1-10話 私は認めない
月曜日
僕はいつも通り三人と待ち合わせをして中学校への通学路を歩いている。
今日の耕太は朝から心城学園でのテスト状況を、語り尽くしていた。
喋る元気が無い僕は、耕太の話に相槌を打つだけであった。
「お前さっきから黙ってるけど、具合でも悪いのか?」
「うん。最悪だよ。」
珍しく祐輔が
「女か?」
一番恋愛から遠い存在だと思っていた祐輔から鋭い突っ込みが入る。
「そんなところだよ」
小さい声で答える。
耕太「お前昨日、奈緒と出掛けたんじゃ無いのか?」
嫌な記憶が蘇る
「あ〜そうだよ。」
祐輔「フラれたのか?」
「フラれたけど、奈緒じゃ無いよ」
耕太「もしかして、あのキャンプで逢ったって子?」
その話題は話したく無い。
「俺ちょっと急いでるから、先に学校へ行ってるぞ」
逃げる様に二人から離れて学校まで走った。
胸のモヤモヤが全然収まらない。
残された二人が僕の事を話す
耕太「どうしたんだ勝利は?」
祐輔「図星だったって事だろ」
すると彩香と奈緒が合流する。
奈緒「勝利は?」
耕太「先に走って学校に行っちまった。」
勝利の話が出て奈緒が落ち込んだ表情をする
彩香「奈緒どうしたの?」
奈緒「昨日、買い物を付き合ってもらったんだけど、勝利が途中で慌てて帰っちゃったんだ。」
耕太「途中で?」
奈緒「うん。私が服を取りに行ったほんの何秒かで居なくなって、ちょっと遠かったから分からなかったけど、女の子2人と揉めている様だった。そしてしばらく無口になって、走って行っちゃったの」
耕太「分かった!その子がキャンプの子だ」
彩香「キャンプの子?それって何?」
やべっ!
勝利は耕太しかキャンプの事を話していなかったので、全員が耕太の説明を待った。
みんなには黙っててと言われていたけど、この状態で話さない訳にはいかない
耕太「分かったよ。勝利が2泊3日のキャンプに行っただろ?」
祐輔「確か盆踊りの時か」
耕太「そうなんだよ。その時にどうやら恋に落ちたらしい。何だか付き合っても無いのにKISSしちゃったりしたみたいだよ」
奈緒「じゃあ勝利が無理矢理、襲われたの?」
耕太「普通は男がするもんだろ。」
祐輔「でも勝利だぞ」
一瞬、間が空く
耕太「でもまだ付き合って無いみたいだぞ、高校が決まったら告るって言ってたから」
彩香「勝利は本気なんだ」
すると無言で奈緒が走り出した。
「私も先に行ってるね」
そんな会話がされているとは知らず僕は学校の校門を過ぎて、校舎に向かう。
しかし教室に行く気が起きない。
とにかく今は、人と会話をしたくない気分である。
僕は玄関に行かず、せめてホームルームが始まるまで一人になりたくて、グランドにあるベンチに座った。
フウー
溜息を吐いた。
空を見上げながら、キャンプでの莉乃の事を思い出していた。
すると、こっちに走って来る足音が聞こえてくる。
足音は僕の後ろで止まった。
白い頬を、ほのかに紅く染めた奈緒が立っていた。
一生懸命走って来たのだろう、奈緒の息遣いでそう感じ取れた。
奈緒は一度深呼吸して
「勝利、ごめんね」
意外だった。
てっきり、昨日の事を怒られるものだと思っていたからだ。
「どうして奈緒が謝るんだよ?悪いのは俺の方なんだから。昨日はごめんな」
どうしたんだろう?
奈緒の顔が更に紅く染まっている。奈緒は自分から物事を言ったり反発したりしない。
この様に真っ赤な顔をして、言葉を発せずにモジモジしている時は、決まって言いづらい事や聞きづらい事がある時に出る表情だ。
「勝利さあ、その子の事好きなの?」
えっ
何で奈緒が知っている?
エスパー?
取り敢えず違う子の事を言ってるかも知れないので、とぼけてみる。
「えっ誰?」
すると怒った表情で
「キャンプの子!」
やっぱり知ってた
そして怒った表情のまま、珍しく感情的に声を荒げた
「彩香なら認めるけど、そんな2、3日しか会っていない子なんか、私は絶対に認めないからね!」
奈緒は大きく息を吸うと
「勝利の馬鹿!」
言うだけ言って校舎の入口に向かって走って行った。
?
何だったんだ?




