第1-5話 光と闇の始まり
9月29日 水曜日
夏休みが終わって1か月が過ぎようとしていた。
「あ〜終わった」
塾が21時に終わると、教室で大きく伸びをする。
この1ヶ月、慣れなかった塾の生活も、やっと生活パターンに馴染んできた。
ふと教室の出口を見ると、背の高い生徒が出て行くところであった。
この塾は、駅から近い事もあって、他の中学校の生徒も多い。
僕は夏期講習から、この塾生になったので、知り合いという知り合いはいなかっが、知り合いという訳では無いのだが、知ってる生徒が一人いる。
その一人が、今教室を出て行った生徒である。
彼は身長が大野と同じくらいで、180cmを越えていて、ガタイも良くて、顔も筋肉で出来ているのではないかと思うぐらい、ゴツゴツした顔立ちである。
ちょっと目を合わせたくない存在だ。
ただ彼は大野と同じくらい中学野球では有名人である。
夏の都大会で彼のいる亀山中学校に僕達は0-1で負け、彼達は次の準決勝で姿を消した。
その亀山中学校のサードで4番の近藤光輝が彼である。
亀山中学校とは、夏の大会前に練習試合をして、2-1で僕達は勝っていたので、都大会で負けた時の悔しさも一入だった。
その練習試合で、僕は最終回に、リリーフで近藤を三振に切って落とした。
僕の中学野球生活で、唯一誇れる武勇伝だ。
公式戦は出ていないので、武勇伝が練習試合というのは情けない話だが。
それにしても、彼が塾に来るなんて高校推薦がこなかったのかな?
僕も帰り支度をして、席を立った。
そして塾から出ると、出た所に近藤が立っている。
ただ立っているだけで、存在感があり、ちょっと怖い。
僕は目を合わせない様に、そーっと彼の横を通り過ぎ様とした時
「小野だよな?」
?
僕は恐る恐る近藤を見ると、思いっ切り目が合った。
こわっ!
「そうだけど、何?」
「お前、心城学園に行くんだよな」
えっ?
「何で知ってるの?」
「秋山に聞いた」
「うん。そのつもりなんだけど、近藤君は?」
「分かった」
一言だけ言って去って行く
えっ?
耕太のやろう!
人の進路をペラペラと喋って、落ちたらどうするんだよ。
翌日の朝(9月30日 木曜日)
男子3人でいつも通りに登校していた時、耕太に文句を言う。
「耕太、俺の進路を人に言うなよ」
「えっ誰から聞いた?」
「亀山中の近藤だよ」
「何で近藤の事、知ってるの?」
「同じ塾なんだよ」
「へえ〜そうなんだ。近藤の奴、俺が言った事を信用していなかったんだな。」
「どう言う事だよ」
「いや、アイツが勝利の行く学校を知りたがっていたから教えたんだよ。それなのに、勝利に聞いたって事は、俺を信用していないって事だろ」
「ところで何で近藤が俺の学校を聞いて来たのか教えてくれよ」
「知らない。それは自分で聞いてくれ」
「そんな事を聞く仲なんだから、耕太が聞いてくれよ。ちょっと近藤君は苦手なんだ」
「あれ?さっき呼び捨てにしてたのに、今度は君付け?」
すると祐輔が
「そういう事か。それはそれで面白い」
えっ
「何だよ祐輔まで。教えろよ」
祐輔はいつもの様に一言だけ返答した
「知らない。」
学校に到着して、クラスの違う2人と湧かれて文句を独り言で文句を言いながら席に座る
まったく何なんだよ!
僕がふくれっ面をしていると、となりの席の奈緒が話し掛けてくる
「何むくれているの?」
「耕太が、馬鹿だから」
「何それ?」
と笑う。
メガネを外しただけで、表情が変わるもの何だな。
奈緒の笑顔を見て感じる。
「何?」
「何でもねえよ」
確かに、これならモテるのも分かる
「あっそうだ!今週の日曜日って暇?暇だよね。ちょっと買い物に付き合ってくれない?」
「何で俺が行くんだよ」
「いいでしょ!どうせ勝利は暇なんだから」
「まったくしょうがないな。昼飯おごれよ。それなら行ってやる。」
「相変わらずセコいわね。分かったわ。日曜日の10時に、マンションの下で待ち合わせよ」
「勿論、俺の家のマンションだよな?」
「お昼をおごるんだから、私の家のマンションの下!」
「もう、分かったよ」
僕は日曜日の買い物に付き合う約束をした。
ただ、後でその買い物に付き合った事を、物凄く後悔する事になるのであった。




