第1-4話 相応しい人
2学期が始まり、学校まで歩いて10分の距離を男子3人で歩いて登校する。
1学期の途中から祐輔は一緒に登校しなかったのだが、昨日一緒に遊んだ事で元通りの登校スタイルに戻っていた。
昨日も聞けなかったが、何故僕の事を無視するようになったのだろう?
今は元に戻ったばかりなので、少し間を空けてから聞いてみよう。
教室に着くと、背の低い僕は窓際の前から2番目の席に座り、夏休み中に持って行った机の中の物を戻して授業の準備をしている。
教室がざわつき始める。
「あれ、飯嶋だよな?」
「奈緒ちゃん可愛い」
などの声が聞こえる。
?
奈緒?
僕の横の席に奈緒が座る。
「勝利、おはよう」
メガネ姿の奈緒ではなく、コンタクトに変えた奈緒の姿があった。
昨日、海でメガネを外していたので違和感は無かった。ただ、昨日の奈緒には僕も驚いたので、クラスの生徒が驚くのも無理もない。
「おはよう。メガネ外したのか?」
「うん。おかしい?」
目が合い思わず照れて目を逸らしてしまう。
「こっちの方がいいんじゃ無いか」
とぼけて返事をした。
見た目が変わると、人の反応が明らかに変わるものなんだと感じる。
普段と同じ態度の筈だが、女子が奈緒の周りに集まる。
更に、男子も奈緒に対する見方が変わってくる。
それは、1週間後に知る事になる。
その日は授業が終わり、塾に行こうと急いで帰ろうとした時であった。
頭脳優秀、スポーツ万能で更に男から見てもイケメンの池田が、急いで帰ろうとしている僕の足を止めた。
「小野、ちょっと待って」
後ろから走ってくる。
「どうした?」
「ちょっと聞きたい事があるんだ。」
「何?お前に教える事なんてあるかな?」
「いやいや、そういう事では無くて、飯嶋の事なんだけど」
「奈緒がどうした?」
「俺、飯嶋の事を好きになっちゃったみたいなんだ。小野は飯嶋と付き合ってるのか?」
余りにも唐突な事で、言葉を失う。
1学期までは、暗い等と言って馬鹿にしていたと思ったが・・・
「別に付き合って無いよ」
「本当か?じゃあ俺、告ってもいいか?」
凄いな。
こんなに早く心って変わるものなんだと、ある意味感心する。
でも、そんな奴が奈緒を幸せに出来るのだろうか?
でも、恋人でも無い僕が付き合う事を反対するのもおかしい。
僕も心に想っている子がいるからだ。
「告るのは、人に聞いてするものでは無いと思うぞ」
「そうだよな、ありがとう」
池田は笑顔を見せて走って行った。
全く何なんだよ!
僕は塾に急いだ。
塾が終わり、暗くなった家路を歩きマンションの敷地に着く。
そして自分のマンションに歩いて行くと、マンションの入口近くに女性が立っている。
奈緒だ
奈緒が近づいてくる。
「どうした?こんな遅く」
「今日、池田に告白された。」
えっ!
もう告白?
何だろう、結果が気になる。
「でっ、どうしたの?」
「付き合う事にしたわ」
!
「池田とか?」
「うん」
えっ
あいつは、夏休み前まで奈緒の事を何とも思ってなかった奴だぞ!
本当にいいのか?
何だろう、僕は複雑な気分になる。
僕は想っている人がいるから、口出しは出来ない。
でも・・・
「奈緒、本当にいいのか?あいつがお前の事を幸せにする様な男には見えない。」
「でっ?」
えっ!
「だから・・・」
「だから?」
「だから、止めろ。お前にはもっと相応しい奴がきっと現れるから。あいつは止めとけ!」
「ふ〜ん」
「何が、ふ〜んだよ。」
「そうやって最初から池田くんに言ってよね!」
池田に聞かれた時の事を思い出す。
下を向きながら
「うん」
とだけ答える。
「嘘よ。断ったわよ」
えっ!
「勝利が告ってもいいって言ってたと、池田くんから聞いたから、からかっただけだよ」
何故か胸を撫で下ろした。
「それに、勝利は私に1つ間違った事を言ったわよ。」
「何を言った?」
「私に相応しい人は、もう現れているから」
?
「じゃあね。」
と笑顔で帰って行った。
まったく、何を言っているんだ?




