第21話 勝利の最終日
「勝利、起きろ!時間だぞ!」
「えっ何時?」
「もう3:00だぞ!」
「僕はギリギリでもいいんじゃないの?」
「面倒を見る子のテントを覚えないとダメだろ!」
「テントの場所は、書いてないの?」
「無い。というか聞くのを忘れた。」
「え〜それはないでしょ!」
父から強引に起こされて、半身起きあがる。
寒い!
あれ?
「何で母さん寝てるの?」
「母さんは、ギリギリまで寝かせてあげるんだよ。」
「えっ何で?」
「そりゃ〜女性だからな」
もういいや
僕は起き上がって服を着る。
朝は結構冷える。
取り敢えずトイレに行いこう。
僕はトイレから戻って来ると、父が大テントの所にいたので、父の所に行った。
「勝利、俺たちは7時に帰って来るから、ご飯だけ炊いといてくれるか?」
「炊き方なんて分からないよ」
テーブルの上にあるランタンを点けて、「キャンプ入門」と書かれた本をテーブルに置いた
「ここに飯盒の使い方が書いてあるから、3個炊いといてくれるか?」
「出来るかな?」
「大丈夫だよ。誰かしら起きてくるさ」
「それに火を焚けば、体も暖かくなるぞ」
確かに寒いので、火があるだけでも助かる。
火を起こすか!
と言っても着火剤にライターで燃やすだけだ。
そして小枝を集めた場所に燃え上がる着火剤を放り投げた。
パチパチパチ
木が燃える音がする。
焚火なんて初めてなので、妙にテンションが上がる。そして火にあたってると体が暖かくなり、火のありがたみを痛感した。
徐々に人が起きて集まってくる。
外気が寒いせいか、面白いようにみんなは焚火の近くに集まった。
社長も起きて来た。
父「お子さんがテントに残っている人は、テントの区画を書いて下さい」
二人が紙にテントの場所を書きに来た。
えっ?
2家族?
それも小学2年と3年の子供だ。
これって?
幼稚園生やそれ以下の幼児達は、母親が残って父だけが日の出を見に行く事になったらしい。
昨日の蛇に噛まれた事も、当日キャンセルした原因になっているようだ。
まあいいか
もうすぐ3:30になる。
「勝利、母さんを起こしに行ってくれ」
「えっ?まだ起きてないの?」
僕はテントに走って行くと、
まだ寝てる!
「母さん、起きて!もう出発しちゃうよ」
「えっ!」
母は跳び起きる。
そして、そのままテントを出て行った。
服は寝る時に着替えていたが、化粧はしなくていいのかな?
慌てて母がテントに戻ってくる。
大急ぎで化粧を終わらせて、また出て行った。
結局5分遅れで出発して行った。
みんなを見送り、大テントの横にある大きい石で作った石釜に焚かれた火にあたって寒さを凌ぐ。
それにしても寒いな
手を擦りながら火にあたっていると、莉乃がテントから出てきて、こっちに向かって歩いて来た。
「おはよう、寒いわね」
Tシャツに短パンで来れば、寒いに決まっている。
「おはよう。その格好では寒いだろう?」
「うん、寒い。ねえ、コーヒー入れてよ」
しょうがない
僕はガスコンロでお湯を沸かす。
「ねえ、長ズボンに着替えて来れば?その格好では寒いだろ?」
「うん。でも面倒くさいからいいよ。そのうち日が出るでしょ」
「日が出るのに、まだ1時間近くあるよ」
「じゃあ毛布持って来てよ。」
何で俺が?
まあいいか
僕は自分の家のテントに行き、毛布を1枚持って来て、莉乃に渡した。
「暖かい」
莉乃が微笑んだ
すると丁度お湯が沸き、インスタントコーヒーを入れる。
「はいコーヒー」
「ありがとう」
釜の火にあたりながら、毛布を肩に掛けてコーヒーを飲み始めた。
「あ〜あったまる」
まだ日も明けていないので、火の前に居ないと肌寒さが身にしみる。
寒いな
莉乃の横に座って、両手を火に翳す
「お~やっぱり火は暖かいな」
毛布を半分くらい僕の肩に掛けてくれた。
「これならもっと暖かいでしょ」
と笑顔で言う。
!
僕達は1枚の毛布を二人で羽織る事になった。ただギリギリ肌はぶつからない距離なのだが
近い
胸の鼓動が早くなったまま、なかなか収まらない。
アドレス!
アドレスを聞きたい。
そんな自分との葛藤が繰り返される。
莉乃が手に持っていたコーヒーを飲み終わり
「この紙コップも燃やしちゃおう」
紙コップを火の中に入れる。
紙コップは、徐々に火がついて、あっという間に燃えて灰となっていく。
何故か虚しい気分になる。僕達が二人でいる時間の様で、すぐに灰になった紙コップを見つめながら勇気を振り絞る
「莉乃、アドレスを教えて欲しい。」
胸の鼓動が更に早くなる。
「いいわよ」
と言って携帯を出した。
やったあ!
僕も携帯を・・・
あれ?
テントに置きっぱなしだ!
「ごめん、テントまで取りに行ってくる。」
恥ずかしい
僕は急いでテントまで走り、携帯を持って元の位置に戻った。
もちろん、毛布も一緒に入る
「ごめん。」
と彼女に謝り、アドレスの交換をした。
さっきまでの鼓動の早まりは収まり、二人で毛布を羽織ったまま無言で火にあたる。
彼女が話し始める。
「私、男性恐怖症だったんだ。多分、今もショウリ意外はそうだと思う。」
その後は、男性恐怖症になった原因、そしてそのせいで母について行かなかった事を、包み隠さず教えてくれた。
僕は母から概要は聞いていたので、驚く事なく彼女の話を黙って聞き、改めて彼女の事を守っていきたいと確信した。




