第20話 恋は始まっている?
圭子さんの歌声が心に響く。
子供のリクエストに応えた歌を歌い始めた
!
う・・上手い
つい聞き入ってしまう
そして曲はサビに突入する
*****
戸惑い傷つき
誰にも打ち明けずに
悩んでいた
もうそれももうやめよう
ありのままの姿を見せるのよ
******
このフレーズで、溜まっていた涙が零れ始めた
あれ?
止まらない?
小学3年の時から自ら胸に閉まって来た自分と重なる。
涙を拭いても拭いても流れ出てくる。
こんな事があるとは思わなかったので、ハンカチも持っていなかった私は、手で涙を拭き取る。
すると拭いている手に布の感触が伝わる。
ショウリがハンカチを私に渡そうとしていた。素直にハンカチを受け取る。
「辛かったんだね」
私はその言葉に声を出して泣いた。
ショウリの胸の中で
その後も3曲ぐらい歌った後、テーブルが運ばれて来て、圭子さんが裸足でテーブルの上に立った。
夜空を見上げて
「子供がいるから、「星に願い」を歌うわ。アカペラで歌うから皆も一緒に歌いましょう」
ドラム缶から上がる炎を中心に輪になり、星に願いを歌ってキャンプファイヤーは終了した。
テントに戻った私は明日の朝が早いので、早目に横になる。
目を閉じてもキャンプファイヤーの出来事を思い浮かべてしまう。
キャンプファイヤーで聞いた、圭子さんの歌声。
過去を思い出し泣いている時のショウリの言葉。
圭子さんの歌では無いけれど、何だか自分が変われる様な感じがした。
それにしても、ショウリの胸板は、思ったより厚かったなあ。
気を許すとショウリの事ばかり考えてしまう。
私の心がショウリに流されていくのを感じる。それは決して嫌なものではないのだが、ショウリに好きな人がいる事も知っているので複雑な気分であった。
それでも、今の私の頭にはショウリの事で頭がいっぱいだ。
どうしたらいいの?
キャンプが終わったら、もう終わり?
絶対に嫌だ。
でも自分から連絡先を聞く勇気もない。
そんな事を考えると眠れない。
父がテントに入って来た。
「寝れないのか?」
「うん」
「キャンプは楽しかったか?」
「うん」
「そうか、勝利君を好きになったのか?」
「うん」
えっ!
「違う、好きになりそうなだけ」
「いいじゃないか、それに好きになりそうと思った段階で、既に好きなんだよ。そして、好きになった時点で恋が始まるんだよ。」
「そうなの?こんな感情は初めてでよく分からないや。ではこれが初恋なのかな?」
「そうだな、
恋は誰でも出来る、だが、お互いが恋をした時に愛に変わる。
そして、二人が一緒に歩いて行こうと思っている限り愛は終わらないんだ。
離婚したパパが言っても説得力ないけどな。」
父が笑う
「一緒に歩く事も出来なかったら?」
「それは莉乃の運命の人では無かったという事だと思うよ。
莉乃が恋を抱いても、相手が莉乃に恋を抱かなければ、莉乃の恋は愛にはならない」
「そうだよね。相手もいるんだもんね。」
ショウリの運命の人は、今ショウリが好きな子なのかな。
嫌だな
「でもな、運命の人って、パパはいると思ってるんだ。きっと運命の人だったら、いつか結ばれると思うよ。」
「パパって意外と乙女チックだね。」
「うん。パパは恋に変わっちゃったけど、いつか愛になると信じてるんだ。」
「えっ!パパは今でもママの事?」
「うん。いつまでもママに恋してる。」
「他の男と逃げたのに?」
「うん」
「パパの事を、既に忘れているかも知れないのに?」
「あんまり虐めるなよ。逃げた女房をいつまでも未練がましく想い続ける情けない男だって、思い知らされているみたいだよ」
「でも、そんな格好悪いパパの事、私は好きだよ。
私の恋が実らなくても、パパの話を聞けただけで、キャンプに来て良かった。」
「莉乃なら大丈夫だよ」
「何で?」
「うーん、親の感かな」
「パパありがとう。なんか眠れそう。おやすみパパ」
「おやすみ」




