第18話 僕は君に恋をした
みんながキャンプファイヤーの火を中心に輪になり始めた。
僕達も輪になつように椅子を動かす
そしてドラム缶から激しく上に向かって伸びる火の粉を、ただただ見つめる。
炎をこんなにマジマジと見た事は無かったが、不思議と見入ってしまう。
色々な形に変わる炎を見ていると、時が経つのを忘れてしまう。
そんな感傷に浸っていると、母が
「私、歌います。」
母が父と社長の方に歩き出して、いつ出したのであろうギターを社長から手渡される。
えっ?
ドラム缶から少し離れた場所に移動すると、母の方に社員が移動し始めた。
何だろう?
家でもTVの歌番組で流れる曲を歌っているが、確かに歌は上手いと感じるが、何故みんなが母の歌が上手い事を知ってるのだろう?
僕のプロ野球選手と同じ様に、父が大袈裟に母の歌が上手いとばらまいているのだろうか?
すると社長が
「これからKIのライブが始まります。マイクは無いので近くまで来てください」
するとキャンプファイヤーを見ていなかった人達も母の前に集まって来た
「ねえ、どういう事?」
莉乃が聞いてきたが、僕にも分からない
「いや、俺もよく分からない。何だろう?」
社長が椅子を置くと、母は社長が用意した椅子に座る
いつの間にか、子供達も母の前に集まっている。
「今日はディズニーソングを歌うね、何がいい?」
子供に聞くと
それぞれが自分の好きなキャラクターを言う。
そして、その中では一番大きい子供に何を歌って欲しいか質問する
「えっと、アナと雪の女王が聞きたい。」
小さい声で言った。
母は笑顔で子供に答える
「じゃあ、歌うね」
ギターを弾き始める。
初めて母がギターを弾く姿を見た。
本当に弾けるんだ
伴奏を演奏して歌い始める。
家でTV画面に向かって歌っている時とは、声も質も違う。
このアナと雪の女王の歌は、自分の殻を破って自分の道を歩きだす歌である。
最初は子供達に向かって歌っていたが、錆に近づいて来て僕達の方を、いや莉乃の方に向いている。
母から聞いた元母の彼氏から受けた恐怖心、好きだった母と離れた小さい時の記憶。
彼女は自分を守る為に自ら殻の中に閉じこもったのだろう
僕は莉乃を見た
彼女の頬を涙が流れる
莉乃・・・
苦しかったんだね
泣き噦る莉乃を見て、彼女は誰にも話せず自分の中に何もかも閉じ込めてきたのだと分かった。
男性恐怖症にしても、母への思いにしても、この小さな胸で抱えていたんだろう。
僕の心も暑くなり、目頭も熱くなっていく。
彼女はタオルを持っていない様だったので、僕はジーンズの後ろポケットからタオルを出し、母が居た椅子に移り、莉乃の手にタオルを渡しながら
「辛かったんだね」と声をかけた。
その言葉を聞いた莉乃は僕の胸に飛び込んで大声で泣いた。
僕は泣いている彼女を包む様に抱きしめる。
中途半端な声は掛けれず、ただ黙って胸を貸していた。
僕は純粋に彼女を愛おしく、そして守って行きたいと思ったのである。
もう誰が何と言おうと、僕は彼女に恋をしている。
僕の心には彼女しか見えない




