第3-58話 耕太とのクリスマス
(奈緒)
「はあ〜クリスマスイブか」
24日の日曜日の朝、いつもと同じ時間に目が覚める。
「今日、部活が有ればいいのに」
独り言を呟く
携帯が鳴る
耕太?
「もしもし奈緒?」
「耕太おはよう」
「奈緒はどうせ暇だろ?飯でも食いに行くか?」
「・・・」
「そんな警戒するなよ。前にも言っただろ、無理強いはしねえって。今日は昼飯がねえんだよ。だから駅前のファミレス行こうぜ。クリスマスだからケーキぐらい奢ってやるよ」
「えっホールケーキ?」
「馬鹿、俺の小遣いが無くなっちまうよ」
何か胸のモヤモヤが薄れていく。
「分かった。じゃあランチしに行こう」
「お前、その言い方って、既におばさんだぞ」
「じゃあ何て言うの?」
「う〜ん、昼飯行こうかな?」
「それは男の言い方でしょ!」
「そっかそっか、じゃあ11時に公園で待ってるぞ」
電話を切った。
勝利では無いが、何だか嬉しい。
そんな事を思っている自分はどうなんだろう?
でも本当の事だからしょうがない。
日曜日も練習ばかりで私服を着るのは久しぶりだ。
洋服タンスから持っている洋服を何度も着ては、自分でダメ出しする。
もしかして耕太だから?
いやいやそんな事は無い。
だって私は勝利しか愛せない。
11時
公園に5分前に着いたのだが、既に耕太が公園で待っていた。
「ごめんね」
私は駆け足で耕太の所に向かった。
そして二人で駅前のファミレスに入って行く。
ランチメニューを頼み、雑談をしながら食事をした。
「耕太はモテるんだから、私なんか待たなくていいんだよ」
「それは言ってはいけない事だろ」
珍しく怒った顔をする。
「もう俺にはお前しか見えねえんだよ。奈緒が勝利しか見えないのと同じだよ」
少し寂しそうな表情に変わった。
「そうだ、そこの雑貨屋でクリスマスプレゼント買おうぜ。俺は奈緒の買うから、奈緒は勝利のを買えよ。」
「耕太のは?」
「俺は勝利から貰うよ」
「勝利はお金持ってないわよ。すぐに無駄遣いするから」
「本当にあいつは無駄遣いの天才だからな」
そんな会話をしながら笑い合う。
店を出た二人は雑貨屋に入る。
店内を物色していると、耕太がアクセサリーコーナーから声を掛けてきた。
「奈緒、これ3人で揃えようぜ」
耕太の所に行くと、耕太の手に黒い紐に作り物だろう羽が付いているネックレスを手に持っていた。
「えっこれ?」
「何かインディアンっぽくてカッコよくねえ?」
「そんなにカッコいいかな?」
「いやいや、絶対に勝利は喜ぶって」
「勝利がネックレスするイメージなんて無いよ」
「前に電車の向かい側に座っていたチャラい男が、こんなのを付けていて、興味がありそうな顔をしてたぞ」
「えっ本当に?」
一つ千円のネックレスか、しょうがない
「じゃあ私が耕太と勝利の分を買うから、耕太は私のを買って」
「しょうがねえな。クリスマスプレゼントだぞ」
「何故だか私が一番出費が多いんだけどね」
「甲子園祝いって事でいいだろ?」
「しょうがない」
会計を済ます。
やけに耕太は喜んでいる。
でもポッカリ空いていた時間は完全に埋まった感じがした。
あっ携帯が鳴った。
「奈緒、電話が鳴ってるぞ」
「うん」
電話の相手は同じクラスメイトで、この頃よく会話をする秀実だ」
私は電話に出た
「もしもしどうしたの?」
「飯島さん一人?」
「う、うん」
「そうか良かった。夕方にそっちの方に用事があるから。どっかでお茶しよう?」
「えっ?何時頃?」
「う〜ん4時には行ける。確か奈緒のマンションって亀戸の駅から少し歩いた所だよね?」
何で知ってるんだろう?
「うん。」
「じゃあ、マンションの入口の所にある公園で待ってて、じゃあね」
電話が切れた。
まだ行くとも言ってないのに
「誰から?」
「うん、同じクラスの秀美。何だかここに来るからお茶しようって言ってきた」
「奈緒が友達と休みに会うなんて珍しいな」
「うん」
「オレ達のプレゼント交換も終わったし、遊んできなよ」
「うん、そうだね」
別に彼氏では無いのだが、自然と支持されて、違和感なく耕太の言葉に従った。
でも何だろう、本当は秀美と会うよりも、耕太ともう少し居たい気分であった。
私と耕太はマンションに戻って行く。
まだ4時までは時間があるので、一旦家に戻って、4時まで家で待つ事にした。
そして4時10分前