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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第3章 高校1年 秋冬
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第3-56話 クリスマス 莉乃と

甲子園が決まり、周囲の僕達に対する接し方が大きく変わってきた。


これほど甲子園というブランド力の強さを改めて感じる。


12月に入ってもグラウンドの練習が主に組み立てられる。

本来なら基礎練習が主体になりがちなのだが今年は違う。OBの人達からバッティングマシーンを贈呈されたり、ボールやバット等の野球道具の他にも、飲み物等も贈呈された。


そして12月24日、クリスマスイブ


今年のイブは日曜日


練習も中止され、僕は莉乃とデートの約束をしていた。


本当に本当に久しぶりのデートだ。

莉乃の調子も良くなってきて、来月から1ヶ月に1回の通院になったのだ。


もちろん、待ち合わせ場所は、お茶の水駅の聖橋だ。


僕は約束の30分前に到着した。まだ莉乃は来ていない。

それから10分


ピーポーピーポー


えっ救急車?


近くに病院があり、年中救急車が通るので珍しい音では無いのだが、どうしても嫌な事を考えてしまう。

救急車が僕の居る場所を通り過ぎる。


「私だと思った?」

後ろから莉乃の声がした。


僕は後を振り返る。


そこには笑顔の莉乃の姿があった。


「莉乃・・・」


「どうしたの?」


「莉乃・・・」


「もう莉乃だよ。もしかして他の女の子と待ち合わせしているの?」


「やっと、やっと会えた・・」


「うん。ちょっと時間が掛かっちゃったね。ごめんね」

莉乃の目から涙が零れる。


「もう、今日は泣かないつもりだったのに。」


「ごめんごめん。でも本当に嬉しいよ」


「ねえ勝利?」


「なに?」


「まず最初に神社にお参りに行かない?」


「えっ、神社?クリスマスだよ」


「お正月のやり直し。あの日からやり直そう」


莉乃が僕の手を握る。僕も莉乃の手を強く握った。


「勝利、痛いよ」


「ごめんごめん。お参りに行こう」


僕達は神社にお参りに行った後、ランドマークに向かった。

さすがに今日はカップルばかり目立つ。もちろん家族連れも多いが、僕達みたいな学生や大人のカップル等が展望台に溢れていた。


莉乃が僕の耳元に口を寄せて小声で話し掛けてきた。

「展望台でお互いの頬にキスをすると、幸せになるんだよ」


「キス?莉乃とのキスを思い出す。」


「頬よ。頬!」


少し端に寄って、莉乃が倒れるフリをして、僕の頬にキスをした。


「えっ?それってキスっていうの?」


真っ赤な顔をした莉乃が「キスだよ」と小さい声で呟く。


かわいい


僕は男らしく莉乃の頬にキスをしようとしたが、周りの人が僕達を見ている事に気付く。


莉乃はそんな僕を見て

「さっきの私のキスに不満がっていたから、かっこいいキスをしてね」

莉乃が頬を僕に突き出した。


たかだか頬にキスするだけなのに緊張する。


混んでいる展望台で周りを気にしていたらキスなんて出来ない。

「もうどうにでもなれ!」

僕は莉乃の頬だけを見つめて、唇を寄せていった。

その決心がつくまで時間が掛かったせいか、莉乃がしびれを切らせて文句を言おうと僕に顔を向けた。

僕は目を閉じていたので、莉乃の頬が動いている事に気付かなかった。


「もう、しょう・・・」

莉乃が僕の方を向くと、唇が重なってしまった。

ちょっと唇の芯からはズレたが、唇と唇が重なる。


唇にマシュマロの様な感触が伝わる。

僕は目を開けると、ほんの数センチ前に莉乃の目が見えた。


僕はすぐに後ろに頭を反らす。

莉乃の顔がさっきよりも真っ赤になっていた。


「ごめん莉乃」


周りで見ていたカップルが

「若いっていいなあ」等と僕達をいじった。

更に近くに居た小さい子が

「キスしてる。ねえママ、キスしているよ」

大きな声で母親に言った。


もう恥ずかしさのMAXである。

これから先は展望台で景色どころでは無い。

恥ずかしくて莉乃の顔が直視出来なかった。

でも莉乃と手は離さず握り合う。


握った手をグイグイと軽く引っ張られる。

莉乃が小さな声で

「もう降りよう」


「うん」


僕達は展望台を降りた。


ランドマーク下の歩道は、公園みたく所々にベンチがあり、僕達も二人にベンチに座った。


「勝利?私からのプレゼント」

リュックから長いマフラーを渡される。


「わあ凄いね。自分で編んだの?」


「うん。家に居る時間がいっぱいあったから、長いマフラーを作ってみたんだ。これをグルグルと何重にも巻けば、もの凄く暖かいのよ」


そう言いながら僕の首に何重もマフラーを巻き付けた。


僕はせっかく巻いてくれたマフラーを解き、莉乃と僕の首に巻き付ける。

二人で巻くと1周半になる。


「莉乃、ありがとう。凄く暖かい」

僕は莉乃を見てお礼を言う。


莉乃も僕を見て

「本当だね。勝利と一緒だと凄く暖かいね」


二人は見つめ合う。


その瞬間。この世界は二人だけになった感覚に陥る。

自然とお互いの唇が近づいて行く。


そして重なった。


今日は莉乃の唇に触れる感覚が分かる。


僕と莉乃は繋がっている。

そんな事すら感じてしまった。


「あ~またキスしてる~」

展望台に居た小さな子供だ。


僕達は唇を外した。


僕は何を買っていいか分からず、水玉模様のシュシュを買って莉乃に渡す。


莉乃は、凄く喜んでくれて

「これを付けて、甲子園で勝利の応援に行くからね」


「えっ来れるの?」


「彼氏の晴れ舞台だもの、絶対に行くわ」


「ありがとう」


僕達のクリスマスは幕を閉じた。

本当はもっともっと一緒に居たかったが、無理して莉乃が風邪をひいたら困る。

まだ陽は暮れていなかったが、莉乃の家の前で別れたのであった。



莉乃と早目に別れて自宅へと帰る。


帰りの電車の中でも莉乃との厚いKissの余韻に浸っていた。


思い返せばあの中学3年の夏


ファーストキスから3回目のキスである。


今日のKissは、莉乃と一つになれた感じがするKissであった。


女の子の唇って柔らかいなあ


そんな事を思いながら電車に揺られた。

多分、無意識に微笑んでいたのだろう、小さい子供が僕を指差して笑っていた様に感じた。

でも今日の僕には、笑われようとも関係無い。

それほど浮かれていたのである。


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