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夢を叶えろ!  作者: 鈴月桜
第3章 高校1年 秋冬
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第3-37話 長い長い片想い

レストランに入ると高坂コーチがカウンター越しに見える。


私と美奈子さんが店内に入ると

「おっ!美奈子、いらっしゃい」


そして私に気付き

「あれ?マネージャーが一緒?午前授業?」


「お客さんに変な質問してはダメよ!」


コーチは首を傾げながら

「変な質問か?」

と私を見る。

私はただ苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。


店にはお客さんが4、5人いて、スーツを着た男性や、パンツスーツを着た女性が、食事をしていた。


コーチが私達のテーブルに水を運びながら

「何にする?」


「高ちゃんのオススメでいいわ」


高ちゃん?


そんな呼び方してたっけ?


「じゃあハンバーグ定食な」

と言って、カウンターの奥に消えて行った。


美奈子さんが話し始める。

「実はね、主人と高ちゃんと私は小学校の4年生の時から一緒に遊んでいたんだけど、私と高ちゃんとは幼稚園から一緒に遊んでいたのよ。」


「そうだったんですか?てっきり最初から3人グループだと思ってました。」


「最初はね、中学の卒業式に高ちゃんから告白されたの。ただ私の気持ちは、友達以外考えられなかったのよ。そして高校に入った最初の夏休みに、高ちゃんが私に

(流の事が好きだったら、俺に構わなくてもいいぞ)

と言ってくれたの」


何か私達の関係と似てる


「主人には言えないけど、その時は、二人に対して恋愛感情がMAXでは無かったの。」


「えっそうだったんですか?」


「うん。でもね、そう言われた翌日に、流から告白されて、付き合う事になった。心の中では二人とも同じくらい好きだったんだけど、何となくその場の流れで付き合った」


「何となくわかる気がする」


「ただ恋人同士になっても、365日野球漬けで、たまのデートも殆ど高ちゃんもついてきた。言葉はおかしいかもしれないけど、二人と付き合っている感覚だった。」


カランカラン


ここに居たお客さんが店を出て行く音が聞こえる。


店内を見渡すと、私達以外のお客さんは居なくなっていた。


足音が近づいてきて、ハンバーグのデミグラスソースの匂いがする。

「ほい、ハンバーグ」


と二人のハンバーグをテーブルに置いた。


コーチは美奈子さんの横に座り

「何を話しているんだ?」


「私達の関係についてよ」


「流と俺の?」


「そうよ、今は高ちゃんの一回目の告白について話したのよ」


一回目?


「何だか恥ずかしいな。取り敢えず暖かいうちにハンバーグ食べちゃえよ」


「それにしても、この店大丈夫なの?私達の後にお客さんが誰も入って来ないわよ。」


「美奈子が来た時に、店の外の札を臨時休業に替えてきたから、客は入って来ねえよ」


「いい加減な店ね。」


「生きていけるだけの収入があれば、いいんだよ」


「まったく高ちゃんは変わらないね」


「たかだか10年や20年で変われるかよ。そうだ!ちょっと食器洗ってくるよ。そのうちに食べちゃえよ」


美奈子さんは笑顔で

「はーい」

と答えた。


もしかして美奈子さん・・・



二人でハンバーグを口にする。


前にも食べたが、改めて美味しい


「飯島さん、美味しいね」

と笑顔でハンバーグを口にして、笑顔で話しかけてきた。


私も素直に

「はい。美味しいです。」

と笑顔で答える。


「やっと笑ったね」


美奈子さん達の話を夢中で聞いていたからだろう。

さっきまでの胸の締め付けが薄れている。


二人はハンバーグを食べ終えると、ホットコーヒーを二つとアイスコーヒーを一つ持って、コーチが美奈子さんの横に座った。


「それで?何を話してたの?」


すると美奈子さんが微笑みながら

「私と高ちゃんの恋の物語よ」


「俺の話かよ!いくら過去の話とはいえ恥ずかしいな」


「ダメ?」


コーチは少し顔を赤らめ

「別にいいよ。わざわざそんな話をするのは、何か意味があるんだろう?」


「あら、高ちゃんなのに、よく分かったわね」


「お前に言われたくねえよ!それで、秋山か?それとも小野か?」


えっ意外な質問に戸惑う。


代わりに美奈子さんが答えた。

「小野君よね」


「そっちか。じゃあキツイ方だな。それで俺の話をしている意味は分かったよ」


えっ?

私は恐る恐る質問する。

「私達の事が分かるんですか?」


「そりゃあそうだろ。君が小野を好きで、秋山が君の事を好きだって事だろ?」


「分かりますか?」


「分からない方がおかしいと思うよ」


顔が暑い


「勿論、小野が別の女性と付き合っているのも知ってるよ。」


すると美奈子さんが付け加える。


「KEIKOのライブで、あんな大々的に彼女宣言していたもんね」


確かに、今思えば早まった行為だと反省する。

「でもね、それと奈緒ちゃんは別だからね」



「はあ」


「高ちゃんはね、私と流が付き合っている間も、何回か告白してきたのよ」


「えっ、それで関係は壊れなかったんですか?」


照れ臭そうに高坂が話し始める。

「だってしょうがないだろ。好きなんだから」



「それに告白する前に流へ言ってから告白していたからな。振られたから次の恋なんて、俺には出来なかったんだよ」


分かる。

高坂コーチの気持ちは痛いほど分かる。


「流との関係も大事だから、想いの全てを言ったよ」


「もし流コーチが嫌がったらどうするつもりだったんですか?」


「う〜ん考えた事が無かったよ。でも告白はしただろうな。」


「普通は出来ないですよ」


「まあそうだよね。でも告白だけだから問題無いでしょ!」


どういうこと?

よく分からない。


不思議そうな顔をしている私に美奈子さんが高坂コーチの言葉に付け加えた。

「ただ告白するだけで、付き合ってとも言われなかったのよ」


えっ?

それって何の意味があるの?



美奈子さんが席を立つ。


「トイレか?」


「レディーに失礼な事言わないで!」


と言って、トイレに向かった。


美奈子さんの姿が見えなくなるとコーチが話し始める。


「俺がそこまで美奈子に告白したのが不思議か?」


「はい」


「そりゃあそうだよな。多分俺も他の奴からその話を聞いたら引くよ」

と笑顔で言う。


「では何で?」


「ダメなんだよ。小さい頃から、ずーっと美奈子しか見えないんだよ。諦めよう諦めようと何度も思ったが、そう思うと余計に好きになってしまう。自分で嫌になったよ。」


「それからずーっと美奈子さんの事を想っていたんですか?」


「大学で一度だけ別の女性と付き合ったんだが、どうしても心が満たされなかった。

そんな時、子供を産んだ事を、流には黙ってメールを美奈子から写真付きで貰ったんだ。

普通ならそこで完全に諦めれる筈だったが、やっぱりダメだった。

その後は女性と付き合うと相手に悪いから、一切恋人は作らなかったよ」


「もしかして今も?」


「さすがにそれは、今ここで言えないよ。」

と笑ってごまかす。


好きなんだ


私はコーチの表情を見てそう感じた。


「お前達も幼馴染なんだろ?」


「はい」


「お前達の関係は昔から、こんな感じなのか?」


「私が一方的に勝利の事を好きだったんです。でも勝利は、同じ幼馴染の子を好きだったんです。だから昔も今もずーっと片思いです。」


涙が出てきた。


「そうか、それはキツイな」


「秋山はいつからお萌の事を好きになったんだ?」


「え〜と、多分、中学の時かも?」


「そうか、でもな多分、秋山も小さい時から好きだったと思うぞ。

自分が想いを抱いている時は、相手の気持ちには気づけない。

小野も他の子を好きだったから、お前の気持ちに気付けなかったのだと思う。

ただ・・・」


「ただ?」


そこに美奈子さんが戻って来た。


「何を話していたの?」


「マネージャーの幼馴染について聞いていたんだよ」


「それで?」


「小野はマネージャーの気持ちに気付いて、心が動き始めていると伝えていたんだよ」


えっ?


「どう言う事ですか?」


「まだまだお前にも充分チャンスは有ると言ってるんだよ。」


「だって、今日フラれたばかりですよ。」


「だから、今まで何を聞いていたんだよ。

俺の場合は、無謀な告白だったけど、お前は無謀では無い。確実に女性として意識しているよ。男の俺だから分かるよ」


何か光が差し込んできた様な感覚を味合う。


すると美奈子さんが

「さすがに何度も告白されると、結構、嬉しいものよ。告白して相手が困った顔をしていたら、脈があると思うわ」


勝利はかなり困った顔をしていた。


「脈はありますか?」


すると美奈子さんが

「だから、ここに連れて来たのよ。」


「今日は俺も練習に行くから、マネージャーも練習に出るだろ?」


ハッ!


「はい」


私は学校へ向かって走り出す。


「私も悔いを残さない様に頑張ろう!

恋も野球も」


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