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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第2話:助命への道 ――死刑囚パリスと救済者ルスト――
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グリムゲート監獄 Ⅷ ―ルスト、報告書をしたためる―

 パリスを見送り私はオルレアへと帰還する。

 軍用馬車に1人乗り込み、途中一泊して2日の行程だ。

 その途中で私は報告書をしたためた。


――――――――――――――――――――――

【報告書】



 死刑囚パリス・シィーア・ライゼヒルト(以下パリスと表記)についての特秘判断基準54号の適用に関連して判明した事実を報告する


 54号案件の適用の是非に関して、パリスを尋問したところ、いくつかの事実が判明した。


 まず、精術武具の密輸出事件について――

 密輸組織〝闇夜のフクロウ〟において、本事件の実質的意思決定者が誰なのか判明した。密輸出事件は外部からの持ち込み案件であり、これは組織のナンバー3である〝デルファイ・ニコレット〟(以下デルファイと表記)がその実行を決断した。


 これまでにおいて、事件の首謀者として判断されているパリスだが、組織の実態はデルファイが実質掌握しておりパリスは傀儡に過ぎない。

 パリスはデルファイから生命の危機を含むいくつかの恫喝と脅迫を受けており、逆らえば命がないという状況下で本人意志とは沿わない形でこれに従ったに過ぎない。

 パリスを組織の首魁とし本密輸出事件の首謀者であるとする判断は間違いであり、別の人物が実質的指揮をとっていた事を重視すべきである。

 

 重要なので再度明記する。

 パリス・シィーア・ライゼヒルトは組織の首謀者ではない。別の人物が組織の支配者として存在している。

 パリスは密輸出事件の首謀者ではなくお飾り、すなわち傀儡である。彼女を主犯とする判断は誤りであり、捜査の終結を撤回し、実質的首謀者を再度捜索する必要をここに進言する。


 さらに、闇夜のフクロウの背後関係であるが、闇夜のフクロウは独立した単一組織ではない事が判明した。その背後に隣国フィッサールに由来する秘密結社組織〝黒鎖(ヘイスォ)〟が関与している。


 組織のナンバー3のデルファイが黒鎖との窓口的役割であり、本当に組織を掌握していたのは外部の別な人物である。そのデルファイに関連する外部の人物の名前は〝古小隆〟と言う。

 古小隆が命令を下し、デルファイがこれに従い組織を率いる。この状況が闇夜のフクロウの実態である。


 なお、デルファイは先の制圧作戦において、独自の逃走ルートを確保して逃走に成功しており現在その消息は掴めていない。本事件において事件の主犯が逮捕されていない状況にある。

 組織の活動目的、デルファイの周辺人物事情などから考え合わせて一刻も早急な対応が求められる。捜査活動の終結宣言を撤回し、速やかな捜査再開を求めるものである。


 文責

 軍外郭特殊部隊イリーザ隊長・エルスト・ターナー

――――――――――――――――――――――

 報告書はこうして書き終えた。後はブリゲン局長にこれを提出するだけだ。


 事件のすべてが解決したわけではないが、パリスに関してだけはこれで私ができることは全て終了したことになる。


「ふぅ」


 一山を越えたという安堵感があったのだろう私は一人ため息をついてしまう。そして一言つぶやく。


「疲れた」


 お風呂にゆっくりと入って疲れを癒したい。そんなふうに考えてしまう。

 別れる時のパリスのあの笑顔が唯一の慰めだった。



 †     †     †



 私はあの局長が勤めている事務所邸宅を訪ねていた。

 オルレアに帰り着いてまずまっすぐに局長のところに報告に向かう。

 とにもかくにも報告が最優先だからだ。口頭と書面で報告を終えるとその日は一旦帰宅する。一晩休息を取り翌日改めて局長のところへと向かった。


 局長がいるはずの書斎の扉をノックする。


「誰だ」

「私です。ルストです」

「入れ」


 その声を受けて重い扉を開く。中に入れば所定の席についていたのはブリゲン局長だった。


「失礼いたします」


 軽く会釈をして言葉を続ける。


「エルスト・ターナー、ただいま帰着いたしました」

「ご苦労」


 そう答える局長の顔はどことなく嬉しそうだった。


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