夜戦争LⅩⅩⅩⅩⅠ 華人街戦闘、集結
燃えた建物もある、負傷した者もいる、命を落としたものもいる。
完全なる勝利ではなかったが、最大の危機は回避できたのだ。
職業傭兵たちと共にカークはあたりを見回してこう呟いたのだった。
「これで、東方人居住区・華人街は襲撃の阻止に成功だな」
「ああ、こっちの方はもう大丈夫だろうぜ」
「それなら俺は別行動をとる」
「どうした? カーク?」
「パックが単独行動をとった。どこに行ったか気になるのでな」
「分かった、この辺りはもう大丈夫だと思うが念のため警戒として俺たちはこっちに残る」
「頼んだぞ」
「おう」
カークは職業傭兵たちとやり取りを交わした。
そのすぐそこで地上に降りてきたタクトとトゥフは次の行動について話し合っていた。
「タクト、俺は一旦、自警団の本部と連絡を取るがお前はどうする?」
「そうだね。この辺りはもう大丈夫だと思う。職業傭兵の人たちも来てくれているし。ここから先は君と行動を一緒にしたいけどどうだろう」
「ああ、お前さえ問題なければ俺は構わないぜ」
「よし、それじゃ早速行こう。今現在の全体状況がどうなっているのか僕も知りたい」
「それならなおさら自警団本部だ!」
そんな風に言葉を交わしながら、トゥフは指笛を鳴らした。
戦闘時に離れていたはずの愛馬が勝手知ったるかのように、即座に姿を現した。
トゥフとタクト、2人は馬にまたがると走り出す。トゥフが馬上から皆に向けて叫んだ。
「俺たちは一旦、自警団本部に戻ります! こちらの方の警戒はよろしくお願いします!」
職業傭兵の1人が大声で答えた。
「ああ、こっちの方は俺たちが引き受ける! 気をつけてな!」
「はい! では参ります!」
そう言葉を残してトゥフとタクトは馬で一路、自警団本部に向かったのだった。
† † †
華人街の南門前広場での戦いの趨勢が定着しているとほぼ同じ頃、そこから離れた場所で必死に1人の男を追いかけている人物の姿があった~
ルストが率いる傭兵特殊部隊イリーザのメンバーであるランパック・オーフリーこと白王茯――
世の中に対して〝龍の男〟〝絶掌のバック〟の名で呼び称された男である。
羅漢服と呼ばれる、東方国における修行僧や武術家が身につける長袖長ズボンの軽装服がある。それと同時に脚絆を身につけ、前腕には布を巻いている。
その服装で、華人街のあったエリアから一路西に脇路地の中を彼はひた走っていた。
「あの時見かけた姿は、まさか――」
彼は先ほどの戦いの中で、ある人物の姿を戦いの場の片隅に捉えていた。
「正 橘安! あなたがなぜこの国にいるのですか?!」
それはかつてパックが白王茯であった頃、拳を交えた相手だった。
「〝虎の男〟と呼ばれ、武術家としての栄耀栄華の頂きにあったあなたがなぜこの国の夜の街にいるのですか? 強敵よ!」
それはパックにとって無視はできない衝撃的な事実だったのだ。