夜戦争LⅩⅩⅩⅧ 乱戦、華人街決戦
開戦の口火は再び切られた。
黒鎖勢と、イベルタル華人街勢+職業傭兵、
お互い大人数が、華人街の南門前の大広場で真っ向からぶつかり合い大乱戦が始まった。華人街勢が30数名に対して、黒鎖勢は50人を超えた。
その乱戦の真っ只中で、雷精を操る強者同士が真っ向からぶつかっていた。
武魔衆筆頭である理海皇と、
ルスト率いる精鋭傭兵部隊イリーザのメンバーで雷神カークことダルカーク・ゲーセットだ。
雷を操る者同士雌雄を決したが、戦闘における駆け引き以上に雷精の何たるかを知り尽くした雷神カークの方が1枚上手だった。理の対雷精防御の仕掛けをかいくぐり、確実にとどめのダメージを加えた。
かくして、理は脳を焼かれて命を落とした。
戦いにおいて、カークは容赦ない。戦場においては確実に敵を倒すこと。そして勝利を得ることそれが最大の命題であるがゆえだ。元軍人であるカークはその価値観において一切の迷いは無いのだ。
勢力のトップが倒れた、武魔衆の頭目である男が敗れたという事実は、戦いの勢いに影響を及ぼした。
武魔衆の残党は押され気味になり、華人街が押し返し始めた。
「敵の頭が討ち取られたぞ!」
「雷神カークに続け!」
「敵の数を確実に削れとれ!」
敵側の武術家集団である武魔衆だが、確かに屈強な男揃いであり1対1の武術対決であるならば引きを取ることはないだろう。
職業傭兵が高らかに告げた。
「お前ら、ガチとガチの拳のぶつかり合いだったら強そうだが」
「悪いけどこれ〝戦争〟なんだよな」
2人組の職業傭兵が左右同時に1人の男に2振りの刃を切りつける。
「ぐっ? ぐあっ!」
悲鳴を上げる間もなくどてっ腹と頸動脈を切られてあっという間に果てた。
「精術駆動! 銀刃弾!」
片手用の牙剣型の精術武具、その切っ先を敵に向ければ先端から小指ほどの大きさの鋭利な金属製の針が生成され打ち出された。物質を形成し生成するのは地精系の特徴だった。
――ドンッ! ドンッ!――
確実を喫するため2発連続で撃たれる。このあまりに太い金属製の針は狙った敵の胸ぐらに確実に命中する。
また別な箇所では職業傭兵の2人が言葉を交わしていた。
「めんどくせーな、炎で焼いちまおうぜ」
「バカ! 市街地だぞ、炎は使うな」
「やり方一つだよ! 見てろ」
そう告げると彼は片手用の牙剣を取り出すと敵に向けて向けながら聖句を詠唱した。
「精術! 超高圧炎針!」
牙剣の刃峰全体が一瞬炎をあげたかと思うと、それが先端部分に一気に集約される。そして狙い済ました相手へ向けて一気に解き放たれた。
――ビュイッ!――
炎とは思えない甲高い奇妙な音がしたと思うと、放たれたのは炎ではなく、超高圧に圧縮された熱そのものそれが一筋の線となり敵を確実に貫いた。
「ぐっぁああああ!?」
その炎は人間を体内から焼き尽くした。内臓を焼かれてのたうち回ったあげく事切れて動かなくなるまで数秒だった。
「ざっとこんなもんよ」
「えげつねえな」
そう返しながらも、彼も別の敵を切り捨てたところだった。







