夜戦争LⅩⅨ 援軍来る ―騎馬自警団の少年―
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■読者様キャラ化企画、参加キャラ■
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影木とふさん:イン・ムー・トゥフ
――ドォオン!――
鳴り響いたのは火薬の破裂音、進撃してくる蒙面どもの1人に向けて弾丸は打ち込まれる。それは彼らの進撃を止めさせた。
「今度は何だ!?」
周囲を見回せば女に取り掛かってきたのは新たなる若者だ。
イベルタル騎馬自警団の制服姿で身を包み栗毛の馬にまたがった少年だ。髪は黒髪、目はブラウン前髪が両サイドのあたりで2列、銀色に変色している。年の頃はタクトとほぼ変わらないだろう。その手には馬上用に長さを切り詰めた大口径のフリントロック銃が握られていた。先ほどの弾丸はここから打ち出されたのだ。
馬から飛び降り、タクトと並び立つ。それと同時に彼は腰の脇からひとつのアイテムを取り出した。騎馬自警団の彼は死兆孔雀の女を挑発するように叫んだ。
「そこまでだ! おばさん!」
「お、おば――!」
いきなりの侮辱、そして挑発。その言葉は死兆孔雀の女にはダイレクトに響くものだったのだろう。瞬間的に叫び声が出る。
「やかましい! あたしはこれでもまだ27だよ!」
「なんだやっぱりおばさんじゃん」
ニヤリと相手を苛立たせるような笑みを浮かべながら騎馬自警団の彼は言い放った。
「どんなに歳が若くても、相手を踏みにじることにしか喜びが感じられないなら、心の根っこは腐った婆さんと同じだよ!」
そして彼は右手に握った手のひらサイズのアイテムを解き放った。
「奔れ! 銀糸悠悠」
彼が右手の中に握っていたのは小さなヨーヨーだった。外見は明らかにどう見ても子供のおもちゃだ。だがその会見に似合わずそのアイテムは恐るべきものだった。
右手を振りかぶってサイドスローでヨーヨーを投げ放つ。するとヨーヨーは予想外の動きを見せた。
――キュキュッ、オンッ――
車輪が路面を走る際にきしむような音を立ててヨーヨーは空中にカーブを描いて走っている。
「なに? 空中を走るだと?」
まるで空間に目に見えないレールを引いているかのように、それは物理法則を無視してカーブを描いて女に襲いかかった。
「精術! スリーストリングフロー!」
ヨーヨーは巻き取った糸をほどきながら伸びていくもの――
その常識を根底から無視してヨーヨーの本体からあらたに3本の糸が放出される。銀色に光るその糸は明らかに金属の光沢を帯びており、凶刃な強さを感じさせるものだった。
【銘:銀糸悠悠】
【系統:地精系水性系亜種銀製系】
【形態:子供の玩具であるヨーヨーの形態を持つ精術武具で、周囲の物質や大気中の元素を集積し、強靭な金属糸を自在に生成することが可能。使用法はヨーヨーそのままだが、糸をほぼ無制限に伸ばせるという特性があり、回転するボディには精術で慣性制御を加えることでその起動を自由自在に制御できる】
放たれた3本の糸は死兆孔雀を持つ女めがけて絡みつこうとする。
「チィッ! 光扇盾」
扇子を広げたまま立てて光の盾を作り出す。かろうじて銀糸を躱して、その場から後ずさる。それを騎馬自警団の若者は見逃さなかった。傍らのタクトに問いかける。
「俺、騎馬自警団第1部隊所属〝イン・ムー・トゥフ〟」
タクトも即座に答える。
「〝天奏〟のタクトだ」
彼の答えにトゥフも頷いた。
「あの扇の女は任せろ。残りの蒙面の革マスク共は任せる」
「分かった」
「よしっ」
同年代の若者同士、気持ちが通じるのだろう。やり取りは即座に決まる。トゥフが差し出した左手にタクトは右手を出して互いに打ち付けあった。
――パァンッ!――







