夜戦争LⅩⅠ 華人街中心部にて、東方人の顔役たち集う
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■読者様キャラ化企画、参加キャラ■
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曽 我六 艮大門
颯 蓬鬆 静 燕
――華人街――
イベルタルの都市区画、北部商業地区の片隅にある異国人居留地。
特に東方のフィッサール連邦から国を超えてやってきた東方人が多く住んでいる街だ。
東方人が住む異国人居留地はフェンデリオルの様々な土地に存在するが、その中でもイベルタルの異国人居留地はフェンデリオル国内最大規模を誇る。それゆえに畏敬と畏怖の念を合わせて〝華人街〟と呼ばれているのだった。
華人街は地図の上でも真四角く切り取られたような土地形状をしている。外部の表通りに面した土地は全て物を売るための商店であり、豪奢な飾り立てをされつつ堅牢で作られたその建物は、華人街を外部から守るための防波堤のような役割を果たしていた。
その街路の建物のつながりと切れ目が東西南北にありそれぞれそこに大きな門が設置されている。
――大門――
そう呼ばれており、東大門から始まり時計回りに北西南と続く。
商いに、取引に、娯楽に、芸能に、様々な人々がこの門をくぐり抜けて華人街を行き来していた。そして今、4つの門は堅く閉ざされようとしている。
表の街路に面した店舗はすでに硬く扉が閉ざされている。店によっては分厚い戸板が建てられ無法者からの襲撃や略奪に対策を打っている。
街の外部からやってくる襲撃者から街を守るためである。
その華人街の閉ざされた門の内側にて華人街の代表的な人物たちの話し合いが持たれていた。
主なメンバーは7人ほど、その中でも特に名の通っている人間は以下の通りだった。
東方人系同族互助組織『華人協会』イベルタル支部、代表代行『曽 我六
武術師範にして、シュウ女史の側近の一人『艮大門』
大規模貿易商の『颯蓬鬆』
酒房楼組合代表代行『静 燕』
これに加えて、街の若者たちの集まりである〝青年部会〟の幹部や、街を取りまとめる老人たちの〝長老会〟の代表者、などが集まっていた。
華人街を東西南北に貫く大通りのど真ん中、広場となっている交差点のその真っ只中で彼らは話し合いを始めた。
まず会話を切り出したのは、華人街の有能な古老たちの集まりである〝宿老会〟のまとめ役である〝長老〟だ。古老会の顔役の中でも特に才覚に優れた年長者が特に推挙されてこの肩書きで呼ばれることとなる。
東方人によく見られる民族衣装である長袍姿の白髪の老人だった。歳を召していることははっきりとわかったが衰えを一切感じさせないほどその姿勢は矍鑠としていた。
両手を腰の後ろで組みながら彼は語る。
「各自状況を説明してもらいたい」
その問いかけに最初に答えたのは戦闘行動に対してもっとも見識に長けている武術家の艮大門だ。
「申し上げます。現在イベルタルの街の中での戦いの趨勢は、街の中心から北西の方角にある花街において活発に生じておりますが、いずれはイベルタル各地の様々な場所へと飛び火するものと思われます」
艮武術家にはよくありがちな服装である羅漢服であり、腰に帯を巻き、馬甲と呼ばれるベスト風の上着を肩からかけている。自然体で立ちながらもいつでも活発に動けそうな躍動感を感じさせる。
「花街が襲われたのは、かねてから黒鎖の拠点であると目されている雑居街の真っ只中にある堕天楼閣からほど近い場所にあるからと推察されます」
そしてそこにさらに言葉を続けたのがまだ年若い男性向けの漢服姿の颯蓬鬆だった。
「それに加えて花街という言葉が示す通りあの場所には若い女性が多い。それゆえに簡単に犠牲者を生み出せると決めてかかったのでしょう。普段から自らの暴力に酔いしれている悪漢どもにありがちな価値観です」
そこに華人街の酒房業者のまとめ役である妙齢の女性の静 燕が疑問を口にした。
「では、花街の被害はそう大きくはないと?」
その疑問に艮が顔を左右に振る。
「いや、黒鎖の組織力と戦闘力を甘く見てはならない。1人1人は雑兵として話にならなくとも、極めて優れた鍛錬と統制力により、闇夜の狼の群れのように恐るべき勢いで浸透してくる」
さらに状況を颯蓬鬆が掘り下げた。
「1つ理解しておかなければならないのは敵も戦略の一つとして組織の総戦闘力を将棋盤の上のコマのように後々の展開を想定して巧妙に分散させているということです」







