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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第13話:特別編:イベルタル市街地大規模動乱【夜戦争】 ―決戦・イリーザ 対 黒鎖《ヘイスォ》―
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夜戦争ⅩⅩⅩⅩⅨ 爪痕のガンダ、猛攻

「何者だ貴様!?」


 そのころには先ほどの目潰しで一時的に視力を奪われた者たちも完全に回復していた。全員が倭刀を手にして構えを取っている。それに対峙する位置で向かい合っていた男が自らの名前を名乗った。


「地下オークション組織所属、爪痕のガンダ」

「貴様、地下オークション組織のエージェントか!?」

「だったらどうしたってんだ?」


 ヴァガンダはその背後にカーヴァをかばいながら、蒙面(モンメン)たちと向かい合う。すでに彼の武器である〝黒豹の鉤爪〟は発動状態にある。いつでもフル戦闘が可能だ。


「お前らの出る幕ではない、我らに殺されたくなければとっとと闇へ帰れ」


 蒙面(モンメン)たちもヴァガンダの介入を受け入れるつもりはなかった。倭刀を構え直しながら改めて闘争心をヴァガンダへとぶつける。


「それにこの数だ! 1対7でどうにかなると思っているのか?」

「我ら倭刀衆、楯突くのであれば我らの刀の下にて骸となるがいいわ!」


 だが、それらの脅しの言葉も何の意味もない。ヴァガンダは強く吐き捨てた。


「雑魚連中が、いちいちうるせえんだよ!」


――ダッ!――


 ヴァガンダは速攻で駆け出した。


「精術! 超高速火炎刃!」


 聖句詠唱の叫びとともに、ヴァガンダの両腕の手甲から炎のブレードが吹き出し、ヴァガンダの全身が超加速される。そしてそこからは一方的な虐殺となった。

 対する蒙面(モンメン)の者たちは自らが構えた倭刀を振り下ろすまでの間に1人1人がヴァガンダからの攻撃を受けていた。


 1つ、

 正面から振り下ろそうとする刀をかいくぐりその腹を横薙ぎに切り裂く。斬撃のあまりの速さに、人体が両断され分離し、上と下とで別方向へとすっ飛んでいく。


 2つ、

 右腕の鉤爪で敵の体を受け止めつつ吹き上がる炎でそのまま相手を焼き尽くした。


 3つ、

 そのすぐ傍を通り過ぎる瞬間、その胸部を心臓めがけて一突きにする。

 

 4つ、

 完全に背後に回り込み、超高速の回し蹴りで背後からその頭部を蹴り飛ばす。頸椎が千切れて頭部が屋上の外へと吹っ飛んでいった。


 5つ、

 襲いかかってくる敵の斬撃を左の爪でいなすと、斜め下から上へと逆袈裟斬りで切り裂いた。


 6つ、

 背後から襲いかかってきたが、とっさに手を下にして倒立すると両足で敵の首を挟み、両手両足の精術装備の機動力を全開にしてさらに半回転して、敵の頭を石張りの屋上の床へと叩きつける。


 そして最後、

 前方から振り下ろされた倭刀を両の爪で打ち砕きながら、その体を真正面から両断する。

 それらを超高速動作を発動させた後に、わずか十数秒足らずのうちに終えてしまったのだ。


――ブォッ、シュウゥゥ――


 吹き上がった炎が消えて瞬間的にクールダウンされる。冷えた外気との温度差で、ヴァガンダの全身からは湯気が立ち上っている。


「ふうぅぅぅ――」


 その威力は余りにも絶大だ。だがそれと引き換えに、よほど身体的な負担が大きいのかヴァガンダは肩で荒い息をしていた。ともあれ、7人の襲撃者を打ち取って戦闘モードを終了する。


 彼が負傷していたカーヴァの元へと戻った時、彼の相棒であるカンティがすでに治療対応を始めていた。

 扉の向こうに身を隠していた補助の青年の一人が現れ不安げにしている。白衣姿のカンティは彼に問いかけた。


「そこのあなた」

「は、はい」

「手を貸してください。負傷部が上になるように患者の姿勢を直してください。それと可能な限り患部を露出するように衣類を外すこと」

「はい、わかりました」


 理性的にはっきりとした口調で淡々と告げるカンティに青年は気圧されて素直に言うことを聞くしかなかった。

 カンティは1番重症であるカーヴァの治療準備をしていた。

 背後から何度も切りつけられたカーヴァをうつ伏せにしてその背中をむき出しにする。

 その傍らでは青年とヴァガンダが、他の3人の負傷者の準備を終えていた。


「あ、あの――準備終わりました」

「ありがとうございます。治療をはじめますので離れてください」

「はい」

「わかりました」


 そして準備を終えてカンティは立ち上がると自らの愛用の精術武具を発動させる。傍らではヴァガンダが余裕の体で状況を見守っていた。


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