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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第13話:特別編:イベルタル市街地大規模動乱【夜戦争】 ―決戦・イリーザ 対 黒鎖《ヘイスォ》―
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夜戦争ⅩⅩⅩⅩⅧ 超遠距離射撃

「こうしてはおれん!」


 カーヴァは確実を期すためにまずは念話通信で状況を報告する。通信師の女性に中継を依頼する。

 カーヴァはバナーラたちの所へと連絡する。


『こちらカーヴァ』

『こちらバナーラ、どうした?』

『花街の西七番丁のエスライズ病院の屋上に爆発物が設置されています。早急に排除お願い致します』

『なんだと? よしわかった! すぐに職業傭兵たちに伝達しよう』


 念話を終えて再び望遠鏡越しに状況を観察すれば、それまで姿と見えなくなっていた新たな蒙面(モンメン)が顔を覗かせている。その振る舞いは明らかに爆破準備を進めているような節があった。


「私が愛する花街をこれ以上荒させはしない!


 これで次のターゲットは決まった。爆破役を撃ち抜き爆破を阻止する。

 しかしそれを行うには明らかに距離が遠すぎる。


「銃を」

「はい」


 カーヴァに命じられて補助役の青年はさらなる銃を準備する。銃身がさらに長い遠距離狙撃用のライフルドマスケット銃だ。それを受け取り構えを定める。

 カーヴァの身長と同じぐらいの大きさがあるため簡単には支えられない。二脚架を取り付けて屋上の端の方へと設置し、カーヴァも片膝を突いて狙撃の準備に入った。

 口径の大きいスコープ越しに狙いを定めれば、導火線に火がつけられていた。一切の猶予はない。

 迷わずに狙いを慎重に定めて引き金を引く。


――ダァアアンッ――


 さらなる破裂音を響かせて、大口径の弾丸は虚空を切り裂く。そして見事に導火線をピンポイントで打ち抜いて爆発の可能性を見事に防いだのだ。

 点火が阻止されたことに気づいて物陰から1人の蒙面(モンメン)が姿を現した。そして彼は明確にカーヴァ協会長の存在に気づいて何かを叫んでいた。


「銃を」

「はい!」


 補助の若者が別のライフル銃を差し出す。それを構えて狙いを定めると、新たに合わられた蒙面(モンメン)も撃ち抜いて見せたのだった。しかし状況は変わった――


「まずいですな。こちらの存在を確実に察知されました。敵に襲撃される恐れもあります。十分な成果は得られたので速やかに撤退しましょう」

「はい、それでは速やかに」


 残念ながらカーヴァには、優れた狙撃能力はあっても戦闘力は皆無だ。見つかればただでは済まない。だからこそ撤退手順もあらかじめ決められていた。10秒もしないうちに準備は終わり、1人が2丁のライフル銃を抱えてその場から立ち去ろうとする。だが――


「見つけたぞ! 狙击手(スナイパー)!」


 建物の外壁を登って来たのだろう、2人ほどの蒙面(モンメン)が姿を現す。少し遅れて、さらに4人が加わり合計6名になる。だが、存在を知られてから駆けつけるまであまりに早すぎる。その理由にカーヴァは即座に気づいた。


「そうか、花街の外部にも展開しているのか!」


 彼らはカーヴァたちを包囲するように立ちはだかった。


「そのとおり、すでに十重二十重にこのイベルタルの市街地に我らの同胞は散っている。相互連絡も容易いこと」


 6人の中のひとりが進み出ながら告げる。


「貴様! 我らの仲間をこの夜の暗がりの中で正確に打ち抜くとは、あまりにも見事な狙撃の腕だ。殺しの技に生きる者として褒めてやろう。しかし、お前のような危険な存在を放置するわけにはいかん。仲間を(ほふ)っただけ落とし前をつけてもらうからな!」


 その恫喝の言葉を前にしてもカーヴァは引き下がらなかった。背後に補助役の青年たちをかばいながらカーヴァは真っ向から向かい合った。


「そのような脅しをかけられても、はい分かりましたと首を縦に振る理由がないでしょう? 私ひとりの命を奪ったところで大勢に変わりはありませんよ」


 そう告げながら腰の後ろに所持していた物を右の手のひらの中に隠し持つ。手のひらに収まるサイズの金属製の円筒のようなものだ。


「抜かせ。お前の命を絶つ事に価値は十分ある。お前ほどの優れた狙撃者を見逃したままあっては我々のメンツが立たんのだ」


 黒鎖(ヘィスオ)蒙面(モンメン)たちはじりじりと距離を近づけてくる。

 そんな彼らが背中の側に隠し持っていたある物を引き抜く。


――ブォッ!――


 鈍い銀色に光る長尺の片刃の刃物、東方フィッサールのさらに東から伝わったとされる曲刀片刃の剣・倭刀である。片手で握って振り回せるほどの刃渡りで携帯性と威力が絶妙に両立していた。

 その倭刀をたずさえた蒙面(モンメン)の者が6名、瞬く間にこの7階建ての建物をよじ登りカーヴァたちの所へと到達してきたほどの、足の速さと身軽さを備えた者たちだ。その実力たるや、末端で些末な襲撃を行なう者たちとは異なる格の嵩さを匂わせていた。


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