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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第13話:特別編:イベルタル市街地大規模動乱【夜戦争】 ―決戦・イリーザ 対 黒鎖《ヘイスォ》―
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夜戦争ⅩⅩⅩⅥ 赤毛のマーヴィン、その正体

 一方で、マーヴィンは逃走する蒙面(モンメン)の者共たちを追いながら階段を駆け上っていった。向かうは銀星楼の屋上である。


「待ちやがれ!」


 怒号をあげながらマーヴィンは一気に駆け上がっていった。

 しかしこの時絶妙なタイミングで蒙面(モンメン)どもはマーヴィンとの距離を保っていた。完全に振り切らず、マーヴィンが追いかけて来れるように計算していたフシがある。マーヴィン自身はその事にまだ気づいていなかった。


 それはまるで蒙面(モンメン)に屋上へと誘導されるかのような状況だった。そのことに気づいていたとしてもマーヴィンは彼らを追いかけていただろう。それくらいに彼の中では怒りの炎が吹き上がっていたのだから。


 いよいよ階段を上り切る。屋上へと出る扉をくぐり抜けるとそこは屋上のど真ん中だ。その時、マーヴィンはとっさに周囲を見回したがそこで彼が見たのは――


「おいおい、何の真似だこれは?」


 マーヴィンは憮然とした表情で周囲を見回した。そこに見たのは、非常にまずい状況だったからだ。


「ふっ、まんまとかかりよって」

「本来お前を相手に仕掛けるつもりはなかったのだがな」

「我らが的にしていたのは、旋風のルストの配下の者のためだった」

「だが、お前も旋風のルストに縁のある者らしいな?」

「ならば我らの」

「牙の下に服するがいい!」


 周囲の物陰からぞろぞろと現れたのは総計二十体あまり以上の蒙面(モンメン)の者たちだった。十重二十重にマーヴィンを取り囲んでいたのだ。


 そしてさらに蒙面(モンメン)どもは企みを実行する。


「やれ!」

「精術駆動!」

「縛鎖の陣!」


 20名近くいる蒙面(モンメン)どもの中の10名ほどがその左手をマーヴィンの方へと向ける。そしてその手首の先から鈍く銀色に光る〝鎖〟を撃ち出したのだ。


――ジャッ!――


 金属が擦れる音を響かせながら鎖は射出され次々にマーヴィンの体の各部に巻きついた。両腕はもとより両足にも絡みつく。一瞬にしてマーヴィンはその体を拘束されたのだ。


「かかった!」

「これでもう動けんぞ!」

「ただの鎖ではないぞ!? 特別に鍛え上げた高強度鋼の鎖を自動生成して打ち出しているからな!」

「我らの作りし精術武具〝縛鎖の拳〟だ」


【銘:縛鎖の拳】

【系統:地精系亜種鋼精系】

【形態:金属製のショートグローブ型の単機能精術武具、手の甲の部分に細い金属チェーンの巻取射出機構とチェーンの高速生成機能が備わっている。敵の拘束や、身体移動などに用いる】


 目を凝らしてよく見ると10名の蒙面(モンメン)たちの拳には手袋のような短い籠手が嵌められている。そしてその拳の甲の部分から鎖が伸びているのだ。

 それ以上の機能性はないようで攻撃力としては鎖で敵を絡め取るのがせいぜいだろうが、それでも数がこれだけに増えるとなかなかに厄介なものがあった。

 マーヴィンは静かにつぶやく。


「ほう? ドブネズミどもにしては少しは頭を使ったようだな?」

「抜かせ! 数で一気に押し潰すのも戦術の1つよ」

「そうだな、数に物を言わせるのもやり方の1つだよな。だがな!」


 マーヴィンはそこで語気を荒くした。


――ギッ、ギギギッ――


 鎖が軋みの音を上げている。マーヴィンが鎖に抗おうとしている。軋みの音は鎖がマーヴィンに負け始めていることを意味していた。


「ぐっ?!」

「な、なんだ? この力は?」

「1対10だぞ!? くっ! くそっ!」


 圧倒的な数でマーヴィンを絡め取り拘束していたはずだったが押し負けていたのは意外にも蒙面(モンメン)たちの方だった。

 四方八方から10本の鎖で抑えられていたはずだったが、マーヴィンの秘めた力はその程度のもので抑えきれるほど安いものではなかったのだ。


「甘いなお前ら! この程度の鎖でこの俺を抑えられると思ったか!」


――ギィッ! ピシッ! パキィン!――


 1本の鎖が引き合う力に耐え切れずに亀裂を生じて千切れてしまう。その事実に蒙面(モンメン)たちは驚きの表情を浮かべるが、それに対してマーヴィンは不敵な笑みを浮かべた。

 その笑みに何かを気づいた者がいた。


「どこかで見たと思ったら、その燃えるような赤毛! 貴様まさか『海賊・赤鮫』!」


 その言葉にマーヴィンは歯をむき出して笑った。あまりにもその不敵な笑みに蒙面(モンメン)たちには驚きを通り越して恐れと怯えの表情が浮かんでいた。マーヴィンを包囲していた蒙面(モンメン)の中には遠距離武器としての拳銃を所持しているものも居たが、その気迫に気圧されて狙いを定めることすら躊躇われていた。

 四方八方からの鎖拘束にも関わらず、まだ動ける余地を見せているのだ。反撃の可能性を考えずにはいられないだろう。

 そんな弱卒共を前にマーヴィンは語る。


「嬉しいねぇ、昔のその名前を覚えているやつがまだ居たとはな。現役を退いてもう十何年にもなるんだがよ?」


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逆境少女の傭兵ライフと無頼英傑たちの西方国境戦記
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