夜戦争ⅩⅩⅧ マッサージ店の女たち
今まさに花街のいたるところで救援は駆けつけつつあった。
酒房カルドや、銀虹亭のように、職業傭兵や騎馬自警団の者達が被害のありそうな店へとたどり着いていたのだ。
救いの手は届き始めていたのだ。
〈建物の3階にあるとマッサージ店〉
花街の中のとある建物、その3階にある男性向けのマッサージを提供する店がある。当然ながらそこで働いている女性たちはほとんど裸と言っていいような薄い布のガウン一枚で働いていた。そういう状況下の彼女たちが、このような緊急事態に何かをできるはずがない。逃げ惑いうろたえるのが精一杯だった。
他の建物でも目撃された通り、蒙面の者たちは屋上を渡り歩きながら警戒の手薄そうな上の方のフロアの店舗を集中的に狙っていた。
屋上へと出る階段のある建物はそこから、あるいは屋根の瓦をはがし屋根裏へと侵入しながら、さらには屋根上から壁へと移動し窓を突き破って侵入する。あらゆる方法で襲撃を試みていた。
その建物は斜めの屋根の途中に屋根裏へと通じる窓がある。窓をこじ開けて数人の蒙面たちが進入を試みていた。
警戒されるよりも早く確実に侵入を果たすと上層階から襲撃を開始する。そしてたどり着いたのが、その建物の3階にあるマッサージ屋だったのだ。
「きゃあ!」
「何よアンタたち?」
「いやぁっ!」
蒙面の者たちは薄衣一枚の女たちを前にして欲望をむき出しにした。
「脱がす手間が省けてありがてえ!」
「殺す前に嬲りものにしてやろうか」
女たちをかばおうと進み出る男性客もいたが、蒙面には叶わずにあっさり殴り倒された。状況は女たちにとって圧倒的に不利だった。
「ふざけるんじゃないわよ!」
「だがあんたたちなんかに、肌を許すもんですか!」
それが精一杯の強がりにすぎないということは彼女たち自身もわかっていた。仕事柄、半裸状態の服装なので護身用の武器を隠し持つこともできない。窓際の方にじりじりと追い詰められていく中で、苦し紛れに手近なところにある長物をそれぞれに手にしていく。
その時間彼女たちのその振る舞いに蒙面どもは冷やかしの声を浴びせた。
「ほう? 一応抵抗するつもりはあるようだな?」
「それが通用するかどうか、その体に分からせてやろう」
「それはいい」
そう言いながら取り出したのは彼らが愛用する武器である〝キドニーダガー〟だ。単なる棒切れと肉厚なナイフ、それだけでもどちらが優位かは誰の目にも明らかだった。
「さぁ、命を散らす方がいいか、体中傷物にされる方が良いか、嬲りものにされるのがいいか」
「好きなのを選べ」
逃げ場のない状況下で彼女たちは憤懣やるかたない思いを抱いたまま、蒙面たちと睨み合っていたのだった。
ちょうどそれと同じ頃、花街の大通りの路上では新たな動きが起きつつあった。
現れたのは、その手に個性的な武器をそれぞれに携えた、野戦ジャケット姿にカーゴパンツ姿と言う特徴的な装いのその名も高き職業傭兵たちである。その中の二人が会話を始めていた。
「この上の方にはアレがあったな」
「アレってなんだ?」
「マッサージ屋だ。仕事柄、着ている衣装はほとんど裸の薄い布1枚だ」
「それじゃ逃げることもできねーぜ」
「だが、何とかしなきゃならん」
「そういう事なら」
「何かいい考えあるのか?」
「ああ、俺の地精系の精術武具で女たちを保護する、お前は先回り店の中に飛び込んで襲撃者から守れ」
「おう!」
2人が離脱してその上層階の店に救援に向かうこととなり、同時にアクションを起こした。







