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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第13話:特別編:イベルタル市街地大規模動乱【夜戦争】 ―決戦・イリーザ 対 黒鎖《ヘイスォ》―
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夜戦争Ⅷ 騎馬自警団総隊長アーク、報せを受ける

 そこは中心市街区のイベルタル騎馬自警団の総本部事務所だった。

 フェンデリオル正規軍の軍警察とともに都市の治安を預かる騎馬自警団。その実質的な総隊長である第1部隊長を務める人間がいる。


〝アーク・ノバステロ〟その人である。


 今、騎馬自警団の本部詰所は騒然とした空気に包まれていた。

 都市中央の行政区画の中心地点であるモニュメント『繁栄の大鐘楼』から、少し西に移動した辺りにあるのが、騎馬自警団の総本部だ。

 堅牢な石造りの建物で3階建て。騎馬部隊を常設しているため建物裏手に広い馬場も設けられている。隊員たちは輪番制で昼夜を問わず総本部にいずれかの舞台が常駐している制度をとっている。

 その日の夜に当番となっていたのはアークが会長を務める第1部隊と第7部隊と第13部隊だった。

 ちなみに騎馬自警団は全てで24部隊編成であり、ひとつの部隊が10名編成となる。

 実働部隊として30名がその日は総本部で詰めていた。


 夜回りに備えて仮眠をとっていたアークだったが、部下に叩き起こされることになる。


「第1部隊長! 大変です!」


 アークは常に眠りが浅い。いつでも受けられるように体がそう慣れてしまっているのだ。部下に声をかけられておもむろに飛び起きた。


「どうした? 何事だ?!」

「イベルタル都市南東部の独立記念塔が破壊されました!」

「なんだと!?」


 まだ目覚めが浅かったアークだったが眠気を吹っ飛ばすには十分すぎる現実だった。

 騎馬自警団の制服であるレザー生地ズボンとボタンシャツ姿と言う装いで寝ていたが、その上に防寒ベストとレザージャケットを着込んで出動体制を整える。

 装備を身につけ革製ブーツを履きながら部下の報告を聞いた。


「それで他に情報は?」

「はい、独立記念塔周辺の自然公園にも大規模な放火が行われています」

「火つけか。周辺地域への類焼は?」

「今のところ問題ありません。自然公園を囲む運河水路に阻まれて類焼は防がれています」

「物見塔の上から見えるか?」

「はい」

「よし行くぞ」

「はっ」


 アークは革製の丸つば帽子を頭にかぶりながら急いで駆け出した。


 自警団本部の建物には遠くを見渡すための見張り台の塔が設けられている。そこにつながる螺旋階段を一気に登り切ると、その光景を目の当たりにする。

 彼の視界の中、イベルタルの南西方向に明らかに炎の手が上がっている。その火事の規模から言って消火しようにもどこにもできるものではない。さらに冬の季節であるため木々は乾燥している。炎上するには最悪の時期と言っていい。


「仕方ねえ、あれはあれで放っておくしかないか」


 火事消火には様々な方法がある。大別すると、水をかけて冷却するか、火の原因となる建築物を除去してしまうかだ。だが、水をかける型式の消火が通用するのは比較的小規模な火災までだ。公園全体の火災となると多少水をかけてどうなるものでもない。


「確かあの自然公園と、水路を挟んで隣り合っているのはマナーハウスなどが立ち並んでいる高級住宅街だったな」

「はい、同じように北側では正規軍の関係者の住宅地域が並んでいます。人為的でない事故による火事であるなら鎮火するのを待てば良いと思いますが、これがもし人為的なものによるのならとても厄介なことになります」

「ああ、水路を越えて〝放火犯〟がさらなる炎の拡大を画策しかねない」


 すなわちそれは上流階級と正規軍の親族に被害が及ぶということであるのだ。ちょうどその時、螺旋階段の下の方から大声が聞こえてくる。


「総隊長! 急いでこちらにお願いします! 正規軍より念話通信です!」


 その声に弾かれるかのようにアークは急いで階下へと降りていく。


「正規軍からだと?」

「はい、こちらへ」


 部下に招かれてアークは情報分析室を兼ねた通信連絡室にたどり着く。事件や災害が起きた際に寄せられる情報を、この部屋に集めて整理して次の行動の判断材料とするための場所だ。

 その情報を得る手段として念話通信も当然のように準備されていた。そこには複数の女性通信師が居たが、そのうちの1人が視線を向けてきた。


「総隊長、こちらへいらしてください。中継いたします」

「たのむ」


 その女性通信士の所に近寄ると立ったまま中継を始めてもらう。

 念話装置には〝中継〟と言う機能がある。

 念話として遠隔から送られた音声概念を自分の聴覚中枢で再生するのみならず、それを、通信師が付近にいる人間に遠隔中継して音声念話を送り、念話装置を使えない者でも念話を可能にするのが中継機能だ。


「繋ぎます」


 その言葉と同時に、アークの認識の中に相手の声が飛び込んできた。


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