精術武具【屍山血河の茨】
5人が一斉に唱える。
「精術駆動!」
紅蜂の4人が叫ぶ。
「火輪四方の陣!」
4つの異なる方向から燭龍の弓で最大級の火炎を巨大な火の玉として一斉に解き放つ。4つの火炎の火の玉は、お互いに絡み合い、急速に巨大な火炎の渦となった。そしてその火炎の渦を隠れ蓑にして猫は両腕を強く振るう。
「飛棘槍破!」
猫が腕を振るのと同時にその両腕にはめている肘の長さまでの籠手が光を放ち、密集した極めて鋭利な巨大な針を幾重にも幾重にも打ち出したのだ。
極めて鋭利で巨大な針を、無数に幾重にも高速生成することができる――、これこそが猫の所有する精術武具〝屍山血河の茨〟の一番の特徴だった。
【銘:屍山血河の茨】
【使用者:猫 麗珠】
【系統:鋼製系】
【形態:スリムな形状の籠手型の武器で両手にはめて用いる。無数の針状の突起物を超高速で生成する事が可能。その攻撃射程距離は使用者の技量やコンディションに左右される特長がある】
巨大な炎の球体による押しつぶしと、高密度の鋭利な針による刺突、その二重攻撃を前にして逃げる術はどこにもないかに思えた。
猫たちの誰もがシュウの死を確信していた。
そして、猫と紅蜂たちの攻撃は見事に目標へと命中する。
――ボォオオンッ!――
火炎爆発と巨大針による刺突、その二重攻撃から逃れる術は無いと誰もが思っていた。爆炎がやみ攻撃の結果が明らかになる。火炎と煙が過ぎ去った時に猫たちはそこにあり得ないものを見た。
「な、何だアレは?」
「氷の塊?」
「いや、氷の障壁だ」
「奴の持っている精術武具とはまさか?!」
シュウの座していた玉座の周囲を、守り固め覆うように巨大な円柱形の氷塊が包んでいた。当然ながら爆炎は防がれ、巨大針は氷塊によって阻止されていた。
氷の中から声がする。
「おやおや、頑張ってこれくらいかい? 期待して損したね」
氷塊の向こう側でシュウは立ち上がった。
「〝次〟が無いならこっちから行くよ」
――パチンッ!――
シュウが再び指を鳴らした。その瞬間、シュウの周囲を守り固めていた氷塊が一気に砕けた。
「氷轢乱舞!」
単に砕けたというよりは爆砕したと言った方がいい。そして氷の塊は爆発の勢いで氷の弾丸となり、その周囲を無差別に吹き飛ばして行ったのだ。
――ゴッ!――
――ゴキッ!――
――ドカッ!――
――グサッ!――
氷の塊の群れが立て続けに4人の紅蜂を打ち砕いていく。避ける余裕はなくかわそうとしても無駄だった。
「精術! 鋼装針林!」
とっさに唱えた聖句で猫の精術武具が機能を発揮する。
屍山血河の茨から一本を巨大な針が高速生成されて打ち出され、猫の前方の床に突き刺さると床の材質そのものを無数の巨大な針に変えた。
突如現れた針の密林により、飛来してくる氷塊の群れをかろうじて阻止することができた。
「間違いない! この能力は氷精系! 氷と冷気を操る精術武具か!」
「その通り」
飛び散った氷塊の残骸と、それを阻止した針の群れを間に挟んで、シュウと猫は対峙していた。







