表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
特別編:序:北の女帝と妄執の女 ―夜戦争、その序編として―
332/445

女王シュウと、首魁マオ、その邂逅

 床に絨毯はなく輝くばかりの化粧石が敷き詰められている。テーブルの類はなく椅子も当然用意されていない。

 部屋に窓はなく、壁際には額縁が飾られている。しかしそれは不思議なことに白磁の石版で作られておりともに描かれている絵画は、古典名画から模写した図柄を、白磁の石版にほり込んだものだった。


 部屋の中央には入口から突き当たりへと帯状に、赤い化粧石の石版が敷かれていた。その突き当たりには玉座が据えられている。

 純白の大理石の肘掛付きの椅子、そこに極北狐の白い毛皮を何枚も何枚もつなぎ合わせて作られた敷物を敷いており、その形状はまさに王者の椅子だった。


 それは玉座だった。

 偉大なる女王を玉座に据えて、彼女に謁見するための、壮麗なる白磁の空間。それはまさにこの巨大都市イベルタルを支配する存在であると暗黙のうちに知らしめるための謁見の間であるのだ。


 その部屋は何もないがゆえに距離感が狂うほど広大に感じられた。

 扉を開いて足を踏み入れた者の視線は部屋の中央に敷かれた赤い化粧石の石板タイルが示す、一直線の道の向こうに誘導される。


 そしてそこに、あの白い大理石と毛皮で彩られた玉座があり、そこに君臨する者の姿を目の当たりにせざるをえないのだ。


「おや? 20名くらいいるって聞いたけど、随分頭数が少ないじゃないか。残りはどうしたんだい?」


 玉座に座る女性からかけられた凛とした声に耳目を引かれずにはいられない。(マオ)はその声の主を真っ向から見つめた。


 それは女王――

 白い色のドレスをまとった美しき雪の女王。

 輝くばかりのハイプラチナの銀糸で作られたイブニングドレスを纏っていた。首元から吊るすホルターネックのアームホールデザインで、女性としての美しいプロポーションを隠すことなくより魅力的に映し出している。

 両腕にはロングサイズのアームグローブがハメられている。色は白でドレス同様に光り輝いていた。

 その美しい漆黒の髪は、いつもならば丁寧に編みこまれているが、ほどかれて背中や首筋へとなだらかな美しいラインを描いていた。

 その頭部には大粒のダイヤをあしらった銀色に輝くティアラがあり、その肩から背中に流れるように、純白の毛皮で作られたロングマントを羽織っていた。

 

 その玉座の上から〝女王〟は語りかけた。


「水晶宮総支配人、シュウ・ヴェリタスだ。覚えときな」


 自ら名乗ってシュウは語りかけた。


「名前を聞こうか」


 名前を問われて(マオ)も自らを名乗る。


黒鎖(ヘイスォ)〝元幹部〟猫 麗珠(マオ リージュ)

「ふうん、――〝元〟ね」


 シュウは口元に笑みを浮かべ興味深げに(マオ)を眺めると彼女に対してさらに問いかけた。


「来訪の目的を聞こうじゃないか」


 その言葉に(マオ)は両腕を振るい身構える。


御首(みしるし)いただく」


 その言葉と同時に配下の紅蜂(ホンフォン)の四人は手に携えていた矢のない弓を構えた。シュウはその精術武具の正体を即座に見抜いた。


「矢の無い弓矢かい――ああ、燭龍の弓だね?」

「知ってるのか?」

「ああ、どうやって作ったのか複製品が手広く出回ってるって聞いてるよ。本物(オリジナル)は知り合いの所にあるからね」


 (マオ)は言葉を切り返す。


「知っているなら話は早い。この精術武具の威力は知っているはずだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関連作品リンク .
【旧作】旋風のルスト
逆境少女の傭兵ライフと無頼英傑たちの西方国境戦記
Link⇒第1部:ワルアイユ編
Link⇒第2部:オルレア編
旋風のルスト・外伝 ―旋風のルストに憧れる少女兵士と200発の弾丸の試練について―
▒▒▒[応援おねがいします!]▒▒▒

ツギクルバナー
【小説家になろう:ツイッター読了はこちら】
小説家になろうアンテナ&ランキング
fyhke38t8miu4wta20ex5h9ffbug_ltw_b4_2s_1 cont_access.php?citi_cont_id=541576718&size=200 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ