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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
特別編:序:北の女帝と妄執の女 ―夜戦争、その序編として―
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消えた気配と、前に進む猫《マオ》


 (マオ)鈴芳(リンファン)に背後を託して水晶宮の建物の中、エントランスホールの突き当たりの大階段を一気に駆け上がる。


 人の気配を探りながら2階フロアまで登り切り、その突き当たりの大廊下を突き進む。そして分厚い正面扉にたどり着いた。


(マオ)大姐(ダージェ)この中から人の気配が」


 特別に鼻が利くと言われた紅蜂(ホンフォン)の女が(マオ)に囁いた。


「この部屋以外に気配は?」

「ありません。少なくとも1階と2階の階層には」


 その言葉を耳にして(マオ)は息を飲んだ。軽く深呼吸すると傍らの4人の部下たちに視線を投げかける。


「お前たち、覚悟はいいかい?」


 その問いかけに言葉が返ってこない。ただ真剣な表情で頷くだけでやる。

 顔にかぶった紅色の覆面をあらためてかぶり具合を直す。これとは逆に(マオ)は覆面をかなぐり捨てた。


「全員武器を準備、制限はしない。思いっきり暴れな」


 その言葉に4人たちはうなずく。ただ1人だけが(マオ)に尋ねてきた。


(マオ)大姐(ダージェ)

「なんだい?」

「後方で離れた者たちの気配が消えました」


 そのことが意味することはひとつしかない。


「わかった」


 (マオ)は静かにそれだけ答えた。

 彼女たちの命をもらうと告げたばかりだ。覚悟はできていたはずだ。しかし彼女には悲痛さを押し殺すかたくなな表情があるだけだ。

 だからといっても戻る場所はない。

 失うべきものももう何もない。

 ならば前へと進むだけだ。


「行くよ」


 その4人は紅蜂(ホンフォン)の女たちの中でも特に精鋭の者たちだった。腰の後ろに隠すように武器を治めていた彼女たちだったが、そこから取り出したのは小ぶりな弓であった。

 ただ、その弓の形状も一般とは異なるものだ。

 弓の中央部の〝弓柄(ゆづか)〟の所が前方へと張り出している。そして弦の中央部には(いしゆみ)の引き金である弩機(どき)のような形状の部品が設けられている。

 その外見から言って明らかに〝精術武具〟であるのは間違いなかった。


【銘:燭龍(しょくりゅう)の弓】

【使用者:紅蜂(ホンフォン)の隊員】

【系統:火精系】

【形態:弓の形状をしており、弓の中央部の弓柄(ゆづか)と弦の中央部に独特の意匠の部品が設けられている。いわゆる〝矢の必要のない弓〟であり、弦を引き絞ると、弓柄と弦の間に矢の形状に火炎が形成され発射することが可能となる】


 弓を手にして4人は(マオ)に頷きかえすと、それを受けて(マオ)は眼前の分厚く大きな両扉に手をかけた。


――ギイィッ――


 扉が軋む音を立てて開く。足音潜ませて扉の向こうの部屋へと足を踏み入ればそこは――


「ようこそ、我が水晶宮謁見の間へ」


 そこは、白一色であしらわれた巨大な応接間だった。


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