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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
特別編:序:北の女帝と妄執の女 ―夜戦争、その序編として―
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闇の魔神のランプ、不夜の街を暗く灯す

 イベルタル中央市街区〝オスタメント〟

 南北と東西に4つの方向に伸びる街道筋が1つに交わる場所にそびえ立つオベリスク風の石塔がある。


――繁栄の大鐘楼――


 イベルタルの繁栄の象徴とされている巨大なモニュメントである。

 内部は5階構造の建物になっておりその地上4階は4方向に向いた時計塔の機械室だ。4面を向いた時計の針が夜10時を指す。

 商業都市であるイベルタルは夜になっても眠らない。

 時代が進みオイルランプ灯やガス灯が街路のあちこちに建ち並んでいる中でたとえ深夜になっても夜の帳に包まれることはない。ある人はイベルタルを【不夜城の街】と呼ぶ人もいる。


 しかし、その不夜城の街が急速に夜の帳につつまれようとしていた。


 北部商業地域から東南の方に移動した地点、そこに20人居た猫大姐の配下の1人がフェンデリオル正教の鐘楼塔の頂に立ち、ある仕掛けを作動させようとしていた。

 彼女が手にしていたのは水差し型の古風な形式のオイルランプ。その先端に火芯が覗いている。それを空高く投げると〝聖句〟を詠唱した。


「精術駆動、闇の魔人の嘆きの霧」


 そのオイルランプのノズルには火芯が覗いておりその先端に聖句とともに火が灯る。そしてさらに聖句は続く。


「覆え、繁栄の街を闇の霧で覆い尽くせ」


 2つ目の聖句が詠唱された瞬間、ランプのノズルの先端に灯った火は、さらに勢いを増したかと思うと炎ではなく猛烈な勢いの暗闇色の噴煙を吹き出し、それは恐るべき勢いで広がっていく。そして街の光景に張り付いたかのように月灯りや街灯の光ですらも覆い尽くしていく。


【銘:闇の魔神のランプ】

【系統:火精系】

【形態:古いスタイルのオイルランプの形状をしている精術武具で、攻撃能力に乏しく環境操作に特化した代物。光の透過を著しく制限する黒い霧を生成、一定領域にその黒い霧を展開することで視覚を奪う事に特化している】


 その煙が覆い尽くしたのはイベルタルの中心地の行政区画だ。都市の心臓部とも言えるその場所で1人の女がその街を牛耳っている。そしてその居城があの〝水晶宮〟である。

 魔神のランプが吹き出した黒い霧は速やかに広がり不夜城と呼ばれた街の灯を打ち消していく。そして同時に(マオ)とその配下の者達紅蜂(ホンフォン)の行動を覆い隠していく。

 建物の屋根から屋根へ、路地から路地へ、一歩一歩少しずつ、そして確実に歩みを進めていく。


 しかしながら、夜の帳の中にあっても、黒い霧に包まれていても、水晶宮のその輝きは決して衰えることはなかった。

 建物の上から上へ移動を続けていた猫だったが、その視界の中に水晶宮を捉えると忌々しげにつぶやいた。


「ああ、腹立たしいね。夜の闇にも負けずにあんなに輝いているなんて」


 しかし離れた位置にあって、その水晶宮の建物は黒い霧の中に隠されようとしていた。


「しかしその輝きも今宵限り、嘆きとともに血しぶきの中に沈めてやる」


 そう唱えると同時に(マオ)は一気に駆け出す。そして、夜の帳の中を着実に進んで行くと瞬く間に水晶宮の敷地を21人で取り囲んだのだった。


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