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精術武具の解説総覧【序:精術と精術武具について】

【①精術とは?】


〝精術〟とは〝精霊術式体系〟とも呼ばれ、600年前の太古の先史フェンデリオル王国において盛んだった精霊科学であり、かつては大々的に使用されていたとされている。 


 基本概念として風火水地の4大精霊と光と闇の双極とによる〝エレメントタワー〟の概念を主体として理論が組み立てられており――


①作動手順としての〝人間の思念と理論〟


②発動としての〝聖句詠唱〟


③精霊存在を物理事情に影響させる媒体としての〝ミスリル素材〟

(作者注:書籍版では名称を変更する予定です)


 以上の3要素から成り立っている。


 つまり、精術を行使すると言うことは、術式発動者の認識と思念の中に精術の効力が発揮されるために必要な作動プロセスが存在することが大前提であり、精術武具登場以前の精術は、この発動プロセス理論認識がすべてを左右するほど重要なものだったと言える。

 後の時代に、様々な技法により精術発動プロセス発動理論が、呪像図や巫術式、水晶板焼き込み論理回路などを用いて、ある程度の自動化が図られる事となる。

 そして、それは時代を負うごとに高度化していく。


 しかしそれでも、最終的に精術の発動効果の結果と質を左右するのは精術発動者の〝理論認識能力〟によるものである。


 旋風のルストこと、エルスト・ターナーが精術の天才と言われる所以は、この理論認識能力と理論構築能力の高さにあるのである。




【②精術武具とは?】


 600年前の古の先史フェデリオル王国において用いられていたのは大半がミスリル素材を発動触媒として用いる精術であり、その精術の自動化の試みの一端として精術の武器化と言う概念から、精術武具と言うものが生まれたという側面がある。


 旧作:旋風のルストにおいて登場した600年前に作られた弓形の太古の精術武具である〝ベンヌの双角〟は、この時代のものであり、いわば精術武具の黎明期の作品である。それゆえに構造に無駄が多く、現在の精術武具技術レベルならさらなる小型化が可能と言われている。


 しかし、それらの高度な太古の先史精術学は先史フェンデリオル王国滅亡と言う悲劇の中で失われてしまうことになる。そしてそれはフェンデリオルの兄弟国であるヘルンハイト公国において密かに継承されることになる。


 そして、先史フェンデリオル王国滅亡と350年後の再独立の歴史の流れの中で、独立運動の闘争の中で、ヘルンハイトで密かに伝承されてきた精術学を復刻する動きが生まれ、そしてそれは精術の自動化という概念から生まれたはずの精術武具の再誕生という流れにたどり着く。

 

 このとき生まれた精術武具は、独立闘争中のフェンデリオル民族の独立運動を後押しすることになり、独立戦争を勝利へと導く鍵となっていくのだが、それについてはまた別の機会に語ることにする。


 さて――

 精術武具は、復刻に成功した精術技術体系により生み出されたもので、特に精術の自動化という目的を更に発展させることで生まれたものである。ある程度の自動化が果たされれば、精術への適性さえあればより多くの人に簡便に利用することが可能となるからだ。

 そして、精術武具の存在は独立闘争のレジスタンスのより強い味方となったのは言うまでもない。


 精術武具はある程度、精術発動プロセスを自動化していると言っても術者/使用者が精術機能の発動の際の〝力の動き方〟を理解し認識している事が必要となる。

 すなわち――


 1:使用者が、使用する精術武具で行使可能な〝発動機能〟の発動プロセスを強く認識する

 ↓

 2:その認識が精術武具の心臓部であるミスリル触媒機構に伝達される

 ↓

 3:使用者の聖句詠唱がトリガーとなり武具の精術効果が発動される。


 このプロセスによって精術武具の個々の能力は発動されるのである。



 精術武具は所有使用者が適正に精術を執行することにより、武具内に仕込まれた精術発動機構を通じて、精術を執行することを可能である。また、様々な形態・機能性を持った物が開発されている。


 その内部にはミスリル素材を使用した精術発動機構が組み込まれている。これを使用者が思念を通じて精術の発動パターンを指定し、聖句詠唱をトリガーとして作動させるプロセスとなっているのは前述のとおりである。

 精術発動機構の特性により風火水地を4精霊属性を基本とした固有傾向があり、使用の際には適性が要求される。


 精術の発動には使用者との適正がある他、使用者自身が精術の理論を正しく理解し、その思念と言霊を一致させる必要があるため誰にでも扱えるわけではない。当然、譲渡や継承には所定の手続きや所有者間での同意が必須である。しかし、その資産的価値を目当てに投機対象になっているケースも珍しくないと言う。そのため盗難や詐取が跡を絶たないと言われている。


 忍び笑いのプロアこと、ルプロア・バーカックがかつて所属していた地下組織は、この盗品精術武具の地下マーケットであり、プロア自身も先祖から受け継がれた家宝の精術武具を盗難される被害にあっており、その奪回と追跡のために地下オークション組織に所属したと言われている。


 なお優れた精術武具は『銘入り』と言って名前が冠されている。銘入りの精術武具を持つことは正規軍人や職業傭兵では一つのステータスである。


 その精術能力の駆動の際には、使用者の〝体力〟〝生命力〟を代償として消耗する。そのため優れた精術武具使用者は基礎体力はしっかりした者が多く、普段から基礎トレーニングを欠かさない。肉体派のカークは当然として、ルストが普段から定期的なトレーニングを欠かさず行なっているのはこうした理由もある。


 逆に、旧作旋風のルストにおけるワルアイユ領のアルセラ嬢のように、基礎訓練が全く身についていない者の場合、急激な体力の消耗により気絶したり、最悪瀕死になる場合もある。実は作中でアルセラ嬢が三重円環の銀螢を見よう見まねで使ったのは非常に危険な行為であり、死んでもおかしくない状況だった。一気に疲れた程度で治ったのは僥倖というほかはない。


【③精術が失われた理由】


 一般に歴史上の説話では、先史王国時代に精術の実行に必要なミスリル素材の一つミスリル水晶の主要鉱脈を採掘し尽くしてしまったため、精術の運用が困難になり、先史フェンデリオル国の衰亡が始まったと言われ先史王国滅亡と共に失伝したとされている。

 一度は失伝し完全に失われていたと思われていたが、隣国のヘルンハイトへの亡命者から伝承として密かに伝えられていた事がわかり、また、さらなる地下深くに新たなミスリル素材の鉱床が発見されたために精術の理論体系を含めて復活させる事が可能となった。


 これはより厳密言えば、

 無加工で精術に使用可能な高純度ミスリル鉱石を採掘し尽くし枯渇させたことが、先史フェンデリオル王国の敗北と滅亡の引き金となっている。だが、歴史における科学技術の発達により、かつては無価値とみなされて投棄されていた、低純度ミスリル鉱石(通称クズ石)を精錬精製することで、濃縮型のミスリル原素材を作り出すことで、精術の復刻に必要なミスリル素材を確保することに成功した経緯がある。


 当事、トルネデアスによる支配政策への反抗が強まっていたことや周辺各国の協力もあり、精術技術復活が後押しとなって独立闘争が活発化。戦線が形成されるのと同時に、精術の一部が『精術武具』として完成されたことにより、フェンデリオル民族側が有利となりトルネデアスとの独立戦争に勝利する事になるのだ。


 現在はミスリル素材を組み込んだ『精術武具』『精術器具』は実に盛んに研究開発されており、幅広く取引されている。

 風精の精術から派生した〝念話装置〟はそうした、精術器具の民生化品の代表的な一例である。


 しかしながら、精術には4大精霊要素への適性が問題となる。

 精術武具/精術器具がまだまだ高価である事も加わり、市民生活全体への普及を妨げる一員となっているのである。


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【旧作】旋風のルスト
逆境少女の傭兵ライフと無頼英傑たちの西方国境戦記
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旋風のルスト・外伝 ―旋風のルストに憧れる少女兵士と200発の弾丸の試練について―
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