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奪回行動・非常戦闘Ⅱ ―ドルス、弾丸と爆薬と―

――ガラガラガラガラ――


 馬車が追いついてきた。イリーザの仲間たちを乗せた4頭立ての4人乗り馬車だ。駆けつけるが早いか馬車から仲間の4人が一斉に降りてくる。

 馬車から降りた男の1人、巨漢のカークが叫んだ。


「プロア! ここは任せろ! 人質を保護して森の中へ逃れろ!」

「わかった!」


 加勢がえられるのであればプロアにとっては好都合幼い子供の方を抱き上げると、母親の手を引いてそのまま道のすぐそばの森の中へと身を隠す。2人ほど追いかけてこようとしたが、それを遮ったのは仲間のドルスだった。

 プロアは息をひそめて母子を助け出したのだった。


 対して、拉致犯たちの行動は二手に分かれた。

 プロアが保護した2人を取り返そうとする者が1人、残る7人が駆けつけたカークたちへの対処だ。

 何もが武器として牙剣を携えている。しかしただの刃物としての武器ではない。刀身の何かに何らかの意匠が施されている。精術武具と見るべきだ。


 その状況を駆けつけた誰もが即座に悟っていた。

 一筋縄ではいかない状況を察しつつも、駆けつけたカークたち4人は散開した。

 残った頭数としては拉致犯側が1人多い。拉致犯たちは迫ってくるカークたちへは1人1人がそれぞれに対応して、残った3人がドルスに襲いかかろうとしていた。足止めと複数による集中攻撃。とっさの判断としては実に正しい判断だった。 


 カークは全体状況を見回してその様相のヤバさを分かっていた。思わずそれが声に出る。


「ドルス!?」


 不安げな問いかけ。それはドルスにも聞こえていた。だがドルスに狼狽えているような様子はない。むしろ口元には余裕の笑みすら浮かんでいた。

 まずはドルスが集まってきた3人への迎撃を開始した。

 小ぶりな片手用の牙剣を3人とも引き抜いて同時に振りかぶってくる。

 必然的に後方へとドルスはステップする。牙剣を右手から左手へと握り直し、それと同時に右腰脇のボックスポーチから親指先ほどの大きさの小さな球体を取り出し咥えタバコで〝導火線に点火〟した。


 ドルスは皮肉混じりに呟く。


「そら、お前らも一服やれよ」


 右手首にスナップを効かせながら襲いかかってきた3人の鼻先へとそれを放り投げた。導火線がシュウシュウと小気味よい音を立てていた。


「は?」


 襲ってきた3人はいずれも鼻先に放り投げられたその小さな球が一体何なのか誰も理解できていなかった。急いで逃げるべきだという事も分かっていなかった。それが判断の遅れに繋がる。

 火をつけてから数秒ほどでそれは炸裂する。


――ドオンッ!――


 それは超小型の爆弾だった。ドルスお得意の爆発物だ。対人戦闘用に大きさと威力を調整した代物だったのだ。

 まともに顔面の至近距離で爆発を受けた真ん中の1人が即座に気を失って崩れ落ちる。残り2人のうちの1人は気絶こそしなかったが緊張の糸は完全に切れている、失神寸前の状況でなんとか踏みとどまって立っている状態だ。

 さらにもう1人は警戒して後方へと退いた。むしろ、ドルスへの警戒からか攻撃の矛先を子供たちを守るために後ろへと退いたプロアへと向かう。


 ドルスに襲いかかってきた方のもう1人は、途切れそうな意識を必至に支えながら足元を踏ん張りドルスに切り付けようと振りかぶる。だがドルスは右手をとっさに腰の後ろへと回し愛用のパーカッション式リボルバーを再び引き抜いた。

 それを撃鉄(ハンマー)を腰のベルトに引っ掛けて引き起こしながら、腰だめにリボルバーを構えて勘で照準を合わせた。


「しつこいのは嫌いなんだよ!」


 そうボヤきながら引き金を引く。


――ドンッ!――


 その瞬間、鉛弾が撃ち放たれて、襲ってきた男の胸の中央へと弾は食い込む。


――ドサッ――


 心臓を一発で撃ち抜かれてその音が崩れ落ちた。


「もう1人!」


 銃爪(トリガー)を引き絞ったまま撃鉄(ハンマー)を手のひらで煽って弾丸を撃ち出せば、駆け出した拉致犯の1人を背後から脇腹を撃ち抜いた。胸と違い即座に絶命することはないだろうが、加熱した鉛玉に焼かれて地獄のような苦痛を味わうはずだ。

 見れば地面に横たわりながらのたうち回っている。


「死ぬまでそうやってろ」


 ドルスはそう呟きながら倒した3人の様子を冷静に見据えていた。


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