奪回行動・非常戦闘Ⅰ ―プロア、急襲―
旋風のルスト率いる特殊作戦チーム・イリーザ、その中にあって優れた〝眼〟の役割を果たしているのがプロアと言う男だ。
大空を舞い大地の力を無視した超常的な動きを可能にする特殊アイテムを彼も持っているからだ。
――精術武具――
この国のフェンデリオル人を代表する特殊武器だ。風火水地の4大精霊を基本として様々な能力を発揮することができる武器だ。
プロアが所有している精術武具は〝アキレスの羽根〟
ブーツ型の精術武具で系統は地精系、プロアはその力を利用して大空を舞うことができる。今もその力を使い上空からけんつ博士妻子拉致事件の犯人達を追いかけていた。
【銘:アキレスの羽根】
【系統:地精系】
【形態:ブーツ型、重力制御を最も得意とし、慣性制御も自在に行える。それにより高速移動や、高度な三次元立体機動、更には長距離の飛行能力も発揮する。原則として飛行能力を持つ精術武具は製法的にも非常に高難易度で実用に足りうる物は少ないと言われる。その中でも第一級の実用能力を持つ逸品である】
そしてそこから得られた情報を同じ作戦チームのイリーザの隊長であるルストへと知らせる。そして彼らは拉致実行犯たちは追い詰めつつあった。
彼らは馬に乗り裏街道へと逃れた。鬱蒼とした木々をかいくぐり北へ北へと逃れようとしている。だがそれも犯人たちの悪運が尽きようとしている。
プロアの仲間にして部隊の隊長であるルストが鬱蒼とした森をかいくぐり先回りに成功していた。そして、ルストたちが立ちはだかる地点に近づいたときだ。
地上で何かが強く光った。
尋常ならざる人工の光。そう解釈したプロアは敵がそこで身動きが取れなくなっていることを期待して急速にその高度を落としていく。そして彼がその目で目の当たりにしたのはまさに3頭の倒れた馬と混乱に陥る拉致犯たち。
馬の数は12頭で、犯人も同数、その馬の列の真ん中ほどに拉致被害者の女性とその娘が拉致犯とともに馬の背に乗せられている。簡単に逃げられないように縛られているのが見える。そして、拉致犯たちは刃物を取り出していた。
「まずい!」
拉致犯たちは間違いなく拉致被害者である母子を人質として傷つけようとするだろう。そして当然のように殺されたくなければそこをどけと要求してくるだろう。あるいは逃亡を容易にするためにここで殺処分することもあり得る。もはや一刻の猶予もない。
「ちぃっ!」
一気に高度を落として母子を捕らえている2人の拉致犯に狙いを定める。そして彼は叫んだ。
「精術、空戦舞!」
その聖句詠唱とともに彼の所有する精術武具である〝アキレスの羽根〟は更なる効力を発揮した。まさに、空中で舞を舞う花や蝶のようにプロアの両足は稲妻のように悪漢どもの頭部を撃ち抜いて蹴り飛ばしていく。そして――
――ガッ! ドゴッ!――
鈍い音が2連して拉致犯が吹っ飛ばされる。
プロアは拉致被害者の母子を守るようにすぐ側に立つ。そして彼の仲間にして隊長であるルストに向けて告げた。
「行け! ここは俺たちに任せろ!」
「お願いします!」
そんな言葉のやり取りと共に隊長のルストは逃亡を謀った拉致実行犯たちのリーダーである1人の男を馬に乗って追いかけて行った。
逃亡する馬列の最後尾についていたのだが、距離を取って馬列の後方に下がると加速をつけて混乱している馬列の群れを一気に飛び越えた。
そしてそのまま勢いをつけて一気に駆け抜ける。
隊長のルストは逃亡したその男を追いかけて行った。拉致実行犯たちのリーダーであるデルファイと言う男である。
プロアはその場に居合わせた人物等を再確認する。
すなわち、ルストに同行していたドルスと、監禁場所の監視を行っていたカークたち4人だ。ドルスはすでに拉致犯3人を打ち取っている。プロアは2人を蹴り飛ばしたが、よほどタフなのかそれを物ともせず立ち上がってくる。
ドルスの方に犯人側の3人が襲いかかり、プロアは背後に被害者である母子をかばいながらの状況になる。状況的には少々不利だ。さらに馬列の後方にもさらに人影が有る。
万事休すかと思われたその時だ。







