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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第9話:ドーンフラウ大学にて ―ハリアー教授とケンツ博士―
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ルスト、ガリレオに依頼する。ガリレオ、プロアに託する

 私は彼に自らの提案について説明を始めた。


「私の部隊のイリーザの隊員の中にこの国最高の弓狙撃手と称された者がいるのはご存知でしょうか?」

「ああ、知っている。確か数百年前の太古の精術武具である〝ベンヌの双角〟を所有していたね? 名前は何かバルバロン1級」

「はい。その通りです。私がお尋ねしたいのは、ベンヌの双角の近代版は製作可能か? と言うことです。現状ではあまりに大きすぎ、小さく収納が出来ないので持ち運びで大変苦労するのです」

「確かに」


 バロンさんが所有している精術武具のベンヌの双角は非常に優れた弓形の精術武具だが、なにしろ作られたのが600年前なので構造が古く無駄が多い。現在の軍事任務で用いるにはかさばって仕方ないのだ。その点は私も以前から気になっていたのだ。

 ガリレオさんは私の言葉に頷くと私見を口にした。。


「ベンヌの双角の歴史的な古さから言って各構成パーツの集積率は高くはない。構造や作動原理にも無駄がある。全体的な見直しを図ればより小型化された状態で同等の能力を持つものは私なら作成可能だ」

「本当ですか?」

「うむ、実はベンヌの双角は以前にお借りして解析をさせてもらったことがある。当時の資料も残っているそう日数はかからないだろう」

「ありがとうございます」


 私は感謝の言葉を口にすると彼は持ち前の洞察力を発揮した。


「国境を越えて同盟国とはいえ敵対者の存在する国に向かおうと言うのだから、重くて大きくかさばる武装というのは邪魔でしかない。君達の部隊の任務傾向から言ってこういう相談が持ちかけられるのは遠からず存在すると思っていた。そこで私からもう1つ提案しよう」

「もう1つですか?」

「ああ、君の部隊に大型の戦鎚を常用する隊員がいらっしゃったね」

「はい、1人おりますが?」


 ああ、これは分かるダルム老の事だろう。


「彼の武装も持ち運びには大変苦労するはずだ。その辺を解決した物を用意させてもらう」

「本当ですか?」

「ああ、それについては良いアイデアがある。任せてくれたまえ」

「はいよろしくお願い致します」


 するとそれまで私の傍で会話に耳を傾けていたプロアが問いかけてきた。


「そのためにわざわざここに立ち寄ったのか?」

「ええ、そうよ。でももう1つ理由があるの」

「もう1つ?」

「その通りだ。実は君にこれを託したいのだ」


 すると、ガリレオさんは立ち上がると制作済みの作品が並べられている棚の中から木製の頑丈な収納ケースを取り出してきた。

 収納ケースをテーブルの上に置き蓋を開く。そしてその中から出てきたものは――


「ブレスレット形式の念話装置の子機だ」


 7つのブレスレット形式の念話装置だった。


「君も正規軍の小隊長の相互連絡のために運用されている複数通話可能な軍用念話装置の存在を知っていると思う」


 その問いにプロアは頷く。


「はい、よく知っています。今回、ルスト隊長の支援行動で使用しました」

「そうか、ならば話は早い。このブレスレットはその軍用念話装置を原型として、小隊における隊長と隊員の間での連絡を補助するために考え出した物だ。なお機構の中に精術適正を補正する機能が設けられている」

「適正補正機構ですね?」

「そうだ。それの最上級位の物を組み込んだ。精術適正反応を擬似的に再現して、精術の適正欠損を持つ使用者でもこの装置を用いる事が可能だ」


 プロアはそのブレスレット端末を手にしながら驚きの言葉を漏らしていた。


「こんなに小さいんですか?」


 ブレスレットは濃紺のブルーメタリックに鈍く輝く美しい仕上げだった。厚みは小指の半分ほどであり、幅は親指くらいだ。一見すれば単なる多少ゴツめのブレスレットリングにしか見えないが、ブレスレットの一部にはイリーザを示す虹を模したエンブレムが金色のモールドで型取られていた。エンブレムはダイヤル様の縁取りがなされている。


「小さくても機能は十分だ。部隊のエンブレムがあるセンターダイヤルを触れながら話すと隊長であるルスト君の念話装置に繋がる。複数同時に受信することも可能だ。そしてセンターダイヤルを回転させると全員に対して一斉通話が可能になる。使い方は以上だ」


 そうレクチャーしてからガリレオさんは収納ケースをプロアに託した。それを受け取ってプロアはエンブレムの反対側にある開閉機構を開くと、ブレスレットを早速自らの左手にはめながら答えた。


「なるほど、これをすぐに部隊の仲間たちの所に届けてくるというわけですね」


 私はそれを聞き、問い返した。


「ええ、そうよ。やってくれる?」

「もちろんだ。隊長のためならパシリから暗殺までなんでもやってやるよ」

「それじゃあ早速だけどお願いね」

「了解!」


 ガリレオさんもプロアに声をかけた。


「よろしく頼むよ」

「はい、お任せください」


 そう答えて私たちは立ち上がると連れ立って建物の外へと出た。そして、プロアが精術武具を使用する際の聖句を詠唱した。


「精術駆動、飛天翔」


 その言葉を発して数歩駆けると天高く飛翔していく。まさにあっという間である。

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