施設裏側強襲突入 ―Ⅲ― 狂乱の火砲、吠える
私から離れて別動を始めた隊員は3人居た。
偵察に優れたプロア、
私にとっての知恵袋的存在のダルム、
そしてもう一人――
地下階から引き上げて半地下階へと戻ってきた彼らは、隠し階段のあった部屋から表通路へと出ようとしていた。
だがその時だ、
「待て!」
3人の中の1人、黒髪の東方人が警告を発した。
残り2人が表通路にと飛び出そうとした時に強引にその襟首を引き戻した。
その瞬間だ、ふたりの眼前を赤熱した弾体が通り過ぎていく。
それも一発二発ではなく何十発も連続で。
――ブォオオオン――
断続的に叫び声が上がるような凄まじい音がする。言い換えるならそれは銃砲が絶え間なく連続で撃ち放たれるようにも聞こえた。
「なっ――」
驚きのあまり声を詰まらせたのは高齢のダルムだ。
反対にとっさに後ずさりながらも、素早く懐から小さな手鏡を取り出したのは若いプロアだ。
偵察や斥候を得意とする彼らしく一秒も無駄にせずに攻撃者の正体を掴もうとする。そして彼は鏡に映ったその攻撃者の正体に苛立ちを隠せなかった。
「ちっ! 精術武具の密輸組織という看板は伊達じゃないってことか!」
プロアは、二人の襟首を掴んで引き戻した彼に言う。
「ありがとよ、パック。引っ張ってもらってなかったら今頃蜂の巣だ」
「いえ、異様な気配を感じたので」
そう答える彼の言葉はこともなげにあっさりしていた。
――ランパック・オーフリー――
二つ名は〝絶掌のパック〟
徒手空拳の武術を得意とする白兵戦闘の専門家、
別大陸の四つの武術大会で覇を唱えた【龍の男】の称号を持つ凄腕だった。
自由を求めて故郷を離れ、フェンデリオルに帰化して自由を得た過去を持つ。
あらゆる戦いを素手で行うが、それゆえに野生的勘は神がかっていた。
「銃口や砲の気配を感じました。もしやと思ったので」
パックの言葉にプロアが答える。
「正解だ。可搬式の銃砲型の大型の精術武具だ。昔いた闇社会組織で一度現物を見たことがある」
そこにダルムが語りかける。
「そういやお前、精術武具の闇オークションにいたんだったな」
「ああ、闇のマーケットでは結構ヤバいものが当たり前に取引されてる」
パックが問う。
「それは、どのような武器なのですか?」
プロアが言う。
「〝ブリギットの乱狂〟――、両手で抱える銃砲型の精術武具で火精地精複合系だ。発射する弾を高速形成しながら火炎をまとった弾丸に変えつつ連続発射する。敵を足止めするには最適な代物だ」
ダルムが言う。
「大筒な上に、しかも連続発射か。厄介だな」
だがプロアは言った。
「時間が無い。一気に制圧する」
パックが問う。
「どのように?」
プロアは腰の後ろから金属製の鞭状の武器を取り出しながら言う。
「俺の武器で敵の弾を弾き飛ばす。隙を作るから、パック、お前が一気に敵の懐に飛び込んで仕留めてくれ」
そう言いながら着衣の懐から一振りのナイフを取り出した。赤黒く艶光りする一本のナイフ、それもまた立派な精術武具だ。
総金属製の鞭状武器の柄の根本にちょうどいい大きさの穴が開いている。そこに赤黒いナイフを差し込む。
――シャキン!――
小気味良い音を立てながら、プロアは語る。
「手持ちの武器の鎖牙剣に、もうひとつの精術武具を組み合わせることで、火炎効果を与えることができる。こいつを使えばやつの火炎弾を弾くくらいはできるはずだ」
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