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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第9話:ドーンフラウ大学にて ―ハリアー教授とケンツ博士―
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ルスト、ドーンフラウ大学に駆けつける

 私は用意してもらったギグ馬車にプロアと共に乗り込むと、自ら馬車の手綱を握りオルレア市街を一路南西部郊外へと向かった。そこに学術機関が多く立ち並ぶドーンフラウ市街区があり、その大半を締めているのがドーンフラウ大学である。そこは私にとって懐かしい母校であり、自らをひたすら研鑽していた学舎でもある。


 そこはフェンデリオルの最高学府。

 現在のフェンデリオルが建国されてからすぐに基礎となる上級学校が開設され、それが220年の長きに渡り拡大されてゆき現在の巨大な学び舎へと発展した――

 中央首都オルレアの南西部郊外に位置し、ドーンフラウの市街区画の大半が学院を構成する学び舎とされている。


 学舎は17存在し、付属する講堂や研究施設は多岐にのぼる。

 さらに提携下にあるサブカレッジはフェンデリオルの全国に存在し、フェンデリオルの学力向上と知識追求を担っている。


 その中でも最高の入学競争率と難易度を誇る学部なのが『精術学部』である。

 フェンデリオル独自の精霊科学である〝精術〟

 風火水地の4大精霊の概念を軸に、人間の思念とイメージで作動原理理論を構築、言霊をトリガーに、ミスリル素材を触媒として発動する精霊科学理論。


 その研究と勃興が私たちフェンデリオルと言う国の趨勢を担っていると言っても過言ではなかった。それ故に国を代表する優秀な頭脳がそこに集まっていた。

 そう――、そこはフェンデリオルの頭脳なのだ。


 そんなドーンフラウ校の中核を成すのが第1カレッジ『緋蝗舎』だ。


 3000人を超える学生と、500人を超える教授や講師・職員を有し、一年を通じて活発な活動がなされていた。

 ドーンフラウの最主力学部『精術学部』の施設もその中にあった。

 そこは国の命運を担う学部。万が一にも情報流出などあってはならない。フェンデリオルの正規軍から派遣された警備兵や憲兵が昼夜を問わずその安全を守っている。

 これが外部から入ってきた人間なら警戒のしようもあるだろう。しかし私が今追っているのはこの学舎の関係者なのだ


 緋蝗舎の敷地の南側。そこが精術学部の建物になる。

 私は念話装置経由でドルスたちに連絡を取ると、彼らにはケンツ博士の行動監視をそのまま継続してもらい、何かあれば連絡するように命じた。

 私はそのまま勝手知ったるかのように、ある人の研究室へと直行する。


――ドーンフラウ大学精術学部教授、アルトム・ハリアー――  


 現在の学長を務める極めて優秀な人物であり私の恩師だ。

 彼の執務室へと直行する。執務室入り口の扉をノックする。


「誰だね?」

「突然失礼致します、私です。ルストです」

「なに? ルスト君か? 入りたまえ」

「恐縮です」


 私は彼の許しを得てプロアを伴い執務室に入った。するとそこでは教授はすでに立ち上がって私を待っていた。


「どうした、ルスト君、何事かね?」


 教授の言葉に私は答えた。


「教授大変です! ケンツ博士が精術研究用のミスリル素材を持ち出そうとしています! 急いで止めないと!」

「なんだと!?」


 さすがのハリアー教授も驚愕の表情を浮かべていた。


「彼は今どこにいる?!」

「私の仲間が彼の動向追跡をしていましたが、ケンツ博士は現在、この大学の敷地の中に舞い戻っているそうです」

「馬鹿な!? 彼は今、研究室利用の禁止処分を言い渡されてるんだぞ?」

「しかしそれを破ってでも、このドーンフラウ大学に来なければならない事情が彼にはあるんです。博士の妻子は今軟禁下にあります。おそらくは脅迫を受けているでしょう。大学の敷地の中に舞い戻っていても、誰も怪しまないと確信を得た上でここに戻ってきているんです」

「なんということだ!」


 そう言いながらすでにハリアー教授は動き出していた。

 一方私は、ちょうどその時、リサマインさんからの念話を受け取っていた。


『はいこちらルスト』

『失礼いたします。リサです。ドルスさんから連絡です。追跡対象が大学敷地の精術研究施設区画に到達したそうです』

『施設の警備員は?』

『なにも咎めた様子が無いそうです。完全に見ないふりをしていたそうです』

『それおそらく賄賂を受け取ってるか、特別な利害関係にあるわね。分かったわ今から合流すると伝えなさい』

『了解です』


 リサはバロンの現在の恋人だが、かつては企業秘書をしていただけあり、情報の流れの整理や伝達は手慣れたものだった。

 私はハリアー教授に告げた。


「ケンツ博士が研究施設区画に足を踏み入れたそうです」

「急ごう、彼の身柄を確保しよう。今の段階ではもはやそれしかない」

「同感です、行きましょう!」


 私たちはハリアー教授を伴ってそこから駆け出していったのだ。


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