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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
幕間:イベルタル新体制へ ―内地商人 対 在外商人―
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都市自治会議臨時会議Ⅰ ―臨時会議始まる― 

 北部商業都市イベルタルには東西に伸びる街道と南北に伸びる街道とが街を縦横に貫いている。その2つの街道が交差するあたりがイベルタル最大の街区で中心地〝オスタメント〟だ。

 商業や政治や金融などの主要施設が集中した都市自治の心臓部である。

 その2大街道の交差する地点には、イベルタル最大のシンボルである『繁栄の鐘楼塔』がそびえている。環状交差点があり人通りが絶えない中をたくさんの馬車が行き交っている。

 その繁栄の鐘楼塔から南西の方角に在る地上3階建ての焦げ茶色のレンガ造りの堅牢な建物が、イベルタル都市自治の要である【イベルタル都市自治会議会館】だ。


 イベルタルは商業都市というその性格上、高度な自治が国家から認められている。この3階建ての建物はイベルタルの反映と市民自治の象徴でもあった。

 そしてそこに、数多の人々が集まろうとしていた。これから迎えるであろう難局を乗り越えるために。


 これより〝イベルタル都市自治会議・首脳級臨時会議〟が開かれようとしていたのである。

 

 

 †     †     †

 

 

 イベルタル都市自治会議会館は焦げ茶色のレンガ造りの3階建ての建築物だ。

 その建物の周囲は石造りの外塀で囲まれており、建物の周囲の敷地には冬でも落葉しない針葉樹の木々が観賞用に植えられている。そして、建物母屋の周囲は馬車用の広い停車場になっており、100台規模の馬車が集まっても無理なく停められる様になっている。

 そして、その日、停車場の敷地はある理由から2つに分けて使用されていた。

 建物の東側に大通りに面した入り口門があり、そこに複数の守衛が常駐する警備所がある。そこで守衛による確認を受けて敷地内へと入ることができる。そして、来場した馬車は2つに分けて停車していた。

 集まった馬車は上流階級の候族格の人たちがのるクラレンス高級馬車ではなく、一般的な乗用のワゴン馬車であった。一見すると外観は簡素で実利的だが、その素材や作りは非常にしっかりとしている。商人階級の者たちが多く、華美な装飾よりも実用性を重視しているためだった。そのため、内装は外観に反して豪華かつ上質の素材で作られており、この当時、登場したばかりのソリッドゴムタイヤを装備している車両もある。そのいずれもが2頭立ての馬車であるのは、身分的な威厳よりも実用的な経済性を重視しているためだった。

 馬車と馬というのは、頭数が増えれば増えるほど維持費が増える。替え馬を調達するのも大変になる。馬に無理がかからないのであれば2頭建ての馬車十分と言うのが商人という生き物だ。

 そして、忘れてならないのは、イベルタルは商業都市であり、商人の街であるという事だ。

 

 その日、都市自治議会会館には、イベルタルで活躍する有数の商人たちが集まっていたのである。

 

 会館内の2階フロア中央区画に、大会議場が存在する。イベルタル都市自治に関する話し合いはすべてここで行われる。

 構造は円形劇場のようであり、演説台が据えられた中央舞台の周囲にすり鉢状に議席が並んでいる。その議席が並んだひな壇の一方向が最も大きい出入り口となっており、そこから議長や重要人物が出入りする。この入口を〝議長通用口〟と呼ぶ。

 なお、一般の会議参加者はひな壇の最上階部分から3階フロアへと出入りするのがルールである。

 

 その日、ひな壇席は2つに勢力が別れていた。その外見や服装からは明確な違いはあまり見られないが、強いて言えば、議長通用口から見て左手に一般的な金髪・銀髪のフェンデリオル人が多く、右手側には黒髪や赤毛やその他様々な風貌の者たちが多く座っている。

 右手左手のそれぞれの勢力は黙したまま静寂を守っていた。その会議の進行役である二人の人物が姿を表すのを待っていた。


 議長通用口の扉が開く。そしてその向こうから姿を現したのは2人の人物。

 1人は、シュウ・ヴェリタス、もう1人は自治会議の議長を務める人物で名を〝アダマン・タイセリウス〟と言う。

 (よわい)55才になる、イベルタルの重鎮の1人である。

 ルタンゴトコートにクラバットと言う伝統的なスタイル。恰幅はよく、長い白髪を後頭部から肩にかけてゆったりと広げている。視線は鋭く、老いてなおメガネを着けるようなことはしていない。

 議長職という職務にあって、様々な事情をつぶさに見識を向ける事に注意を怠らない。そんな柔軟さと認識の広さを感じさせるような人物だった。

 

 会議室の中に入ってくると、シュウはアダマン議長と視線を交わし頷きながら、会議室の中を横切り、中央突き当たり議席場を左右に分ける位置の席に腰を下ろした。

 シュウが着席するのと同時に、アダマン議長も議長席に腰を下ろす。

 居住まいを正しながら彼は声を発した。


「全員揃ったな? では早速始めよう」


 その声に会場が一瞬ざわめくがすぐに止む。アダマンの議長としての威厳と技量の高さゆえだった。


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