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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第1話:特別幕:軍外郭特殊部隊イリーザ、強制制圧作戦
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元執事、情報を整理し、時刻を進言す

 私の傍らに佇んでいたダルム老が語りかけてくる。


「ルスト隊長、本格的に動く前に状況を再確認しようぜ」


――エルスト・ターナー――


 それが私の名前だ。

 傍らに佇む私の仲間であり部下である男の名前を呼ぶ。


「お願いします、ギダルム準1級」

「おう」


 彼は元執事だ。傭兵としては異色の経歴の持ち主だ。

 加えて高齢故に知識の引き出しが恐ろしく豊富だ。情報の把握や整理は彼の独壇場だ。


事前連絡(ブリーフィング)でも情報共有したが、今回の制圧対象は密貿易組織だ。組織名は〝闇夜のフクロウ〟組織編成して2年くらいと言う若い組織だ。ただ、小規模ながら首領が相当優秀なのか短期間で急速に勢力を広げている。海外の大物組織とも提携を結んでいるらしい」


 彼の言葉に私はつぶやく。


「通常でしたら、組織発足から5年か10年は独立した縄張りを得るのにかかります。2年という数字は驚異的ですね」

「相当交渉がうまいのか、あるいは強力なパトロンが居るのか、いずれにしろ厄介だな」

「ええ、放置しておけば我が国の中に彼らの組織を根深く広げられかねません」

「それだけは阻止しなければな」

「もちろんです」


 彼の言葉に私は頷いた。彼は言葉を続けた。


「さて、それで連中の活動内容だが、密輸――、それも精術武具に特化している」

「武器特化ですね?」

「あぁ、精術武具を投機目的に高い金を出して買う奴はいくらでもいるからな」

「精術武具は我が国固有の〝兵器〟、軍事上の敵対国との戦闘を優位に進めることができているのも精術武具あってのものです」


 私は大きくため息を付いた。


「投機目的など、武器本来の目的をないがしろにするを非常に迷惑な話です」

「まったくだ」


 精術武具――、我が国固有の武器で、風火水地の精霊の力を使うマジックウェポンと呼ぶべき代物だ。

 実に様々な形状と機能性を持っている。

 私も右腰に無銘ながら愛用の精術武具を下げている。

 その威力は絶大であり、250年間に渡りこの国の軍事情勢を支えてくれている。

 この国で職業的に戦闘に関わる職業傭兵や正規軍軍人と言った人々ならば、高い確率で所有している。


「精術武具の密輸出が例の組織の基本行動だ。そして今回、軍警察の捜査員たちが奴らの密輸出ルートを完全把握したのが今から一月前、その後も監視を継続していたが予想以上に取り扱い規模が大きい事が判明した」

「高い物から、安いものまで幅広くと言うわけですね」

「そうだ。だが最近になり特に安物を幅広く集めるようになった」


 なぜ彼らが金にならない安物を集めるようになったのか? そこには非常に厄介な思惑が隠されている。


「高級品ならばバラして内部を調べるのはもったいないですが、安物ならいくらバラしてダメにしても惜しくはありませんからね」

「分解解析――ってやつだな」

「えぇ」


 分解解析――それが一番危惧される事態だった。


「その危険性を軍警察上層部も認識しました。そして、密輸出ルートの壊滅と、組織の重要人物の拘束を下命したのでしたね」

「そうだ、連中は集めた〝部品〟を一箇所に集めておいて一晩のうちに一気に運び出す戦略をとっている」

「そして、ここが彼らの集積所にして活動拠点というわけですね」

「そういうことだ」

「ありがとうございます」


 私との会話を終えて彼は再び沈黙した。


 今夜の作戦の行動目的は、


――密輸物資の運び出しの阻止――


 そして、


――組織の壊滅――


 組織が小さいうちに決定的に叩き潰す必要があるのだ。

 そして、ダルム老がいかにも元執事らしい振る舞いをする。

 着衣の腰のあたりから黒塗りの鎖のついた懐中時計を取り出す。秒針までついた山岳軍用仕様だ。

 視線を落として時刻を確かめる。


「報告、指定時刻23時45分(フタサンヨンゴー)時到達1分前」


 ダルム老は私に視線を向けて言った。


「隊長、時間だぜ」


 私は頷いて通信師に命じた。


「発令、狙撃班に狙撃命令」

「了解、伝達します」


 テラメノが狙撃班の通信師に打伝する。

 いよいよ、始まったのだ。

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