気遣うレグノたちと安堵するシュウ女史
私が喜びながら花束を受け取るとマーヴィンさんが言う。
「多分まだ回復しきっていないとは思ったが無事に生還しただけでも、顔を見ておきたいと思ってな」
さらに私を気遣うのはニルセンさん。
「毒を盛られたと聞いた。体の具合はどうなのだね?」
「はい。体の自由がきかなくなるそういう薬を飲まされたようです。よくあるしびれ薬や麻痺の薬ではなかったようなので回復もそう遅くはならないと思います」
「そうかそれは良かった」
レグノさんが私は気付かう。
「とは言え、まだ回復は完全でないようだね」
それに言葉を添えたのがシュウさんだ。
「ええ、完全に毒が抜けたわけではないので、今少しは安静にしておいた方が良いかと。今、医師が分析しておりますので」
「そうですか。では診察結果が出た辺りにでも、出直してくるといたしましょう」
「ええ、そうしていただけると助かります」
さらにニルセンさんがサイズの大きなガラスのボトルに入った透明な飲料水を差し出してきた。
「パルフィアの南洋果実の果汁の入った炭酸水だ。毒気を抜くには水分を取って排出を促進させることだ。ただの水を飲むよりは良いだろう」
私はそれを受け取り感謝する。
「ありがとうございます」
「無事生還できて何よりだった。それと伝えておくがアルシドとカルロの方は順調に調査を進めているそうだ。明日には、何かしら報告が出来るだろうと言っていた」
「ケンツ博士の身辺事情についてですね?」
「ああ、君の本来の業務の一助になればと言っていた。さて、あまり長居しても病身で触る。そろそろ失礼するとしよう」
そしてマーヴィンさんが言葉を添える。
「それじゃ、またな」
彼らの素直な好意に私はお礼を口にした。
「皆様ありがとうございます!」
「うむ、それではシュウ女史、後のことはよろしく頼みます」
「ええ、お任せください。それではまたお待ちしております」
「では」
伝えることを伝え、それでいて私の負担にならないように、短い時間で要点をまとめて彼らは去っていった。彼らのその姿を見送って私はシュウさんに打ち明ける。
「私がシュウさんにお願いしたいのは、彼らのようなまっとうで話の分かる在外商人の方たちを受けれることができる窓口となる身元保証や受け入れ窓口のような場所を作れないかということなんです」
「つまり〝優良な在外商人〟を選別して、その身元を保証するルールづくりと言うことかい?」
シュウさんは私の言わんとしている事の核心を的確に理解してくれた。
「はい。その通りです。そのようなことができる承認制度のようなものを作れないか? と思うんです。彼らは確かにフェンデリオルの国内のルールから半分外に身を置いています。ですが、国の外の状況には国内だけで活動している商人たちよりも、より早く触れることができる。国外との連携という面においては彼らには一日の長があるんです。これを有効に生かさない手はないと思うんです」
「なるほどそういうことかい」
そう答えつつシュウさんは笑みを浮かべていた。まんざらではない様子だ。
「そうだね、気に食わないからと排除するだけでは発展はないからね。前向きに検討しよう。そのためにはあの人たちの意見も聞いてみないとね」
「よろしくお願いします」
「ああ、任せておきな。何しろアンタがさらわれた時にも本気で心配してくれてたからね。信用しないわけにはいかないよ。さて、それじゃあ失礼するよ。食べ終わった頃に誰か取りに来させるからね」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあね」
そう言い残してシュウさんは部屋から出て行った。
用意された朝食を口にして再びベッドに身を横たえる。完全に回復しきっていないためか全身を疲労が襲った。私は再び、眠りの中に落ちていったのだった。







