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シュウ女史、状況を問う。男たち状況を類推する

 アンジェリカの言葉に対してシュウは事情説明がてらに答えた。


「ご苦労だったねみんな。知らせを聞いて飛んできたよ。プリシラが攫われたんだってね。どういう状況だったんだい?」


 するとそこで立ち上がって名乗り始めた人間がいる。イリーザ所属のドルスだ。


「それについちゃ、俺に説明させてくれませんか?」

「どなただい?」

「これは失礼、職業傭兵特殊部隊イリーザ所属ルドルス・ノートンです。階級は準1級。以後お見知りおきを」

「これはご丁寧に。大規模商館〝水晶宮〟総支配人シュウ・ヴェリタス、この店のオーナーも務めている。それと私たちがプリシラと呼んでいるあんたたちの隊長を高級酌婦(ガストアミーノ)に仕立て上げた張本人さ」


 それを聞かされてドルスの表情がかすかに張り詰めた。それを察してシュウが言う。


「正直、ここまでの騒動になるとは思ってもみなかったんだけど、見通しが甘かった。迷惑をかけたことは謝るよ。本当に申し訳なかった」


 とは言えドルスも様々な人間模様を見てきた経験もある。シュウの本意を察してお詫びの言葉をやんわりと受け止めた。


「いえお詫びには及びません。ルスト隊長も考えがあって今回の行動を選んだのだと思います。その是非は口にする権利は私にはありませんので。それよりも〝事態の解決〟を急ぎたいと思います」


 その傍からダルム老が声をかけた。


「お前の言う通りだ。今、最優先で解決すべき問題はルスト――この界隈ではプリシラの源氏名で呼ばれている俺達の隊長の身柄保護の問題だ」

「それとこの店の支配人の死亡事件の問題だね」


 シュウ女史の言葉にダルム老は頷いた。


「ええ、ルストの拉致事件と同時にこの店の支配人の不審死が発生するなどというのはあまりにも出来すぎている。2つの事件が繋がっていると判断するべきでしょうね」


 ドルスも同意する。


「ああ、俺もそう思う。この状況で店の支配人が殺される理由として一番考えられるのは〝口封じ〟だ」


 ドルスのその言葉に場に居合わせた在外商人の一人、法律家にして行政書士のカルロが問いかけた。


「口封じとなるとプリシラ嬢の誘拐を手引きしたのがこの店の支配人ということにならないかね?」

「むしろそう考えるのが妥当でしょう。どこと繋がっているのかをバラされたくないんでしょう。例えば今、巷を騒がせている黒鎖(ヘイスォ)なんかがね」


 ドルスの推測の言葉にサロンルームの中が騒然となった。

 専属酌婦(モノポーラ)のレベッカが驚きの声を上げる。


「まさか? アルメオ支配人が?」


 すると鉱山主のニルセンが勘を働かせて告げる。


「いや、全くありえないとも言えない。例えば店の雰囲気とは予想に反してこの店の経営状態が悪いとかで怪しい筋から金を借りてしまったとしたらどうだろう?

 あるいは必要経費の支払いの問題で短期的な借入が必要になり、真っ当な業者と思い込んで接触してしまったとかな。

 返済を猶予する代わりにその怪しい連中の息のかかった従業員を雇入れざるを得なくなる事も考えられる。その場合、支配人本人は自分が関わっている連中の裏側にやばい組織が関わっているとは気づかない場合もある」


 そこに専属酌婦のチコが尋ねる。


「知らない間に協力者にされてしまったってこと?」

「ああ、そうだ。当然事実が発覚し問題化する前に証拠隠滅として口封じが発生することはありえない話じゃない。むしろよくある話だ。そのタイミングが職業傭兵を本職とするプリシラ嬢の拉致誘拐とするなら、犯人たちとすればこれ以上この店に関わるのは不本位だ。可能な限り証拠を消しながら速やかに撤退するのが当然の選択だろうな」


 ドルスが呆れ気味に言う。


「こういう華やかな街で商売をするのであれば、きらびやかな表側と異なり、剣呑な裏側の事情にも注意を払ってしかるべきなんでしょうが、俺から言わせれば脇が甘いとしか言いようがありませんね」

「まったくだ」


 彼らの推論にシュウ女史は大きくため息をついた。


「まったく。私の目の届かない間にとんでもないことが起きていたようだね。ともあれこの店の経営実態に関しては改めて調べるとして、今何をさておいて〝プリシラ〟の安否だ」


 この場においてシュウ女史と近しい者達はルストをプリシラと呼び、ルストの本来の職業である傭兵稼業に近しい者達はルストと呼んでいる。紛らわしいことこの上ない。


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