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プロア、ルストを空から追う/シュウ、銀虹亭に駆けつける

 そして、大星楼の屋上に待機しているのはプロアだ。

 全ての装備を確認し、指示があれば即座に飛び出せるように準備は抜かりなかった。


 ドルスが指示を下し、ダルムが交渉し、パックが追跡し、バロンが上空から監視する。そしてさらにカークとゴアズが制圧をするはずだ。


「そして俺は何としても捉える!」


 じりじりとした思いを抱えながらプロアはひたすらその時を待った。

 そしてその時、プロアの念話に入感があった。


『こちらリサ』

『プロアだ』

『状況に異変あり! 馬車が運河上の橋を越えるときに布袋を投げ落としたそうです! 動力運河船がそれを受け取りました! 追跡方向が二手に分かれます!』

『分かった! 船の方は俺が引き受ける!』

『お願いします! バロンさんの火矢を目印にしてください。荷馬車の方はカークさんたちが引き継ぎました』

『パックは?』

『投げつけられた布袋の中に火薬が仕組まれたものがあって、それをまともに食らったそうです。命に別状はありませんが追跡は困難です』

『わかった!』


 7人の中でついに脱落者が現れた。だが、これがいよいよ正念場だ。

 運河船に渡された物が本命か、荷馬車に残してある物が本命か、どちらを選ぶかによってここから先の結果が決まる。


「迷っている暇はねぇ、ならば行くしかない!」


 そう叫んで屋上で駆け出してステップを踏む。


「精術駆動! 飛天翔!」


 それはプロアが所有する精術武具への聖句詠唱、数少ない空を飛ぶことのできる物だ。


【銘:アキレスの羽】

【系統:地精系】

【形式:足に履くブーツ型で地精の力で重量を軽減、慣性制御を加えることで空への飛翔も可能にする】


 アキレスの羽が効果を発揮してプロアの体は天高く舞い上がって行った。西の彼方に数条の火矢の炎が見える。あれがバロンの放った追跡の火矢だ。あれの真下に運河船があるのだ。


「急がないと! 馬車と違って船の中で何をされるか分からねぇ!」


 ルストの身の安全を考えるともはや一刻の猶予も無かったのだ。

 本当に今度こそ、ルストを安全に助けられる唯一のチャンスなのだから。

 プロアは一路、西へと飛んでいったのだった。


 

 †     †     †



 プロアが飛翔して追跡を始めたのと同じ頃に大星楼の建物の正面に駆けつけた一台の馬車があった。

 シュウとダルムを載せた黒塗りのクラレンス馬車だ。かなりの速度で駆けつけたが、大星楼の正面に駆けつけるなり飛び降りるように降り立った。


「行くよ、この建物の3階だ」

「了解です、行きましょう」


 シュウとダルムが並び立つように降りると足早に駆けていく。その後をアシュレイが追う。

 そして、正面階段を駆け上がると3階の銀虹亭の正面にたどり着く。そこにはすでに若い男性のドアボーイが控えていたが、現れたのが店の実質的オーナーと言えるシュウ女史であったため、ドアボーイの彼は驚きの表情を浮かべていた。


「シュ、シュウ様?」

「挨拶はいい、支配人のアルメオはどこだい?!」

「こちらへどうぞ! 皆様がお待ちでらっしゃいます!」

「案内おし」

「はい、こちらへ」


 ドアボーイが先んじて店内を歩く。正面入口エントラスをくぐり、待合室に入る。そこから更に通用扉を拔けて従業員用通路に入る。その際にシュウは訪ねた。


「そう言えばあんたさっき〝支配人がお待ち〟とは言わなかったね? どうしてだい?」


 当然の疑問だった。ダルムも言う。


「そりゃそうだ。彼女くらいの格の人間が現れれば最初に出迎えるのは支配人だ」


 その二人の疑問にドアボーイは張り詰めた表情のまま答えた。


「アルメオ支配人は亡くられました」

「なんだって? アルメオが?」

「死因は確定しておりませんが、おそらくは毒物かと。居合わせた方々の判断で現場保存のため一切触れておりません」

「正しい判断だ。軍警察は?」

「まだお呼びしておりません」

「それじゃあ私が来たから頃合いだろう。早速呼んどくれ」

「かしこまりました」


 そして、従業員用通路を経由して向かったのは、プリシラことルストが接客していたあのサロンルームだった。


「こちらに〝皆様〟がお待ちでらっしゃいます」

「ご苦労。軍警察が来るまであんたは店の入口を頼むよ」

「お任せください。それでは」


 そう言葉を残してドアボーイの彼は去って行った。そして、シュウに代わってアシュレイがドアを開ける。そして、サロンルームの中にたどり着いたとき、そこに居たのは――


「アシュレイ様? それにシュウ様!」


 驚きの声が飛んでくる。声の主は専属酌婦の中ではリーダー格の青い目のアンジェリカだった。

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