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バロンの放つ《神の目》の弓矢

 かたやこちら、単独行動を始めたバロン。巨大な革製の弓用収納ケースを背負いながら1つの建物を一気に駆け上がっていた。

 大星楼の向かい側にある雑居の建物で4階建て、その屋上に至れば地上での現在状況を俯瞰で見下ろすことができた。屋上に着くなり弓を取り出す。


【銘:ベンヌの双角】

【系統:風精火精複合二重属性】

【形式:大弓型、火と風の2つの属性を駆使できる多機能型】


 それは600年前の古い時代から継承され続けてきた、いにしえの弓形精術武具だった。しかし火と風の2つの属性を持っているがゆえに適性が極めて限られており現時点でこれを使いこなせるのはバロンただ1人だった。


 収納していた弓を展開して準備を終えたときだ、リサからの念話が入った。


『バロンだ』

『リサです。追跡要請です。現場から逃走した荷馬車を追ってほしいそうです。パックさんが後を追っているのでそれを目印にして欲しいそうです』

『了解ただちに実行する』


 そう答えながら建物の屋上から身を乗り出して地上を見つめる。するとものすごい勢いで走り出した荷馬車があった。後部の荷台にゴミ廃棄用の大きな袋が多数積んである馬車だった。


「あれか」


 見れば仲間のパックがそれを人間超えした速度で追いかけているところだった。


「軽身功か、だが長時間は持たんだろう。よし」


 そこから先は、バロンの独壇場だった。

 左手で弓を構えて矢立から弓矢を8本ほど取り出した。

 それらを全て同時につがえて聖句を詠唱する。


「精術駆動」


 弓をキリキリと引き絞る。狙いは頭上を向いている。


「――神の眼――」


 それと同時に8本の矢は放たれた。そして次の瞬間、


――ボッ!――


 矢の先端の矢尻の辺りから炎を吹き出したのだ。だがそれと同時にその弓矢の先端の位置を視点として地上を見渡すことがきるのだ。

 火は熱であると同時に物を動かす力でもある。風は吹き抜ける風であると同時に人の意思そのものである。

 この2つの特徴を巧みに組み合わせて通常の弓ではありえない実に現実離れした特殊な矢を射る事が出来るのだ。

 風は意思となり矢にバロンの意識を乗り移らせる。炎は力となりバロンの意識のまま矢を移動させる。バロンは矢を通じて様々な方向に散った八つの視点を上空から確保することになる。それはまさに〝神の目〟

 そして、バロンは指示された通りに荷馬車とパックを見つけ出した。


『バロンだ。逃走中の荷馬車は現在西へと向かっている。追跡をこれからも継続する』


 シンプルに事実を伝えるとバロンは技の実行に意識を集中させた。



 †     †     †



 大星楼の裏階段をドルスは一気に駆け上がる。そして3階、プロアの姿を探して裏の入り口のドアを開きっぱなしでしている銀虹亭の中へと飛び込んでいった。


「プロア! どこだ!?」


 その言葉に即座に反応が帰ってくる。


「ここだ!」


 声のする方へと駆け込んで行けば、アーヴィンたちが宴席を設けていたサロンルームだった。


「ドルスのおっさんか。どうした?」

「ルストを載せたと思われる荷馬車が発見された。今何とかしてその所在位置だけでも追跡している。お前は精術武具を用いて本格的な追跡に備えろ。ここは俺が待機する」

「そうか」

「だが問題はある」

「なんだ?」

「お前以外の人間の足の確保だ。今、カークに任せているが難しいだろうな」

「そうだな。突然の見ず知らずの人間に馬を貸せと言われて素直にはいそうですかと言う奴はいないだろうな」


 2人が深刻な表情でやり取りをしている時、声をかけてきたのはやはりあのアーヴィンだった。


「おい、どうしたプロア」

「ああ、すまない。こいつは俺の部隊の仲間でルドルス・ノートン、俺たちの部隊の副官だ」


 説明を受けてアーヴィンがドルスに向き合う。


「在外商人集団〝ヘルメスの鍵〟に所属している貿易商のアーヴィン・ラウドだ。何か困りごとでもあるのか?」

「こっちこそ邪魔してすまん。今、ルストを載せたと思われる荷馬車のその逃走ルートを追跡中だ。だが、制圧するために必要な足になる〝馬〟の確保が必要になった」

「馬か」

「ああ」


 その言葉にアーヴィンはニヤリと笑った。


「俺の商売は運送と馬喰(ばくろう)だ。馬なら任せろ!」


 この時代、運送の主力は馬であり、馬喰(ばくろう)とは馬の売り買いを生業とするブローカーのような商売だ。馬の調達には最適の人物なのだ。


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