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大星楼の裏側、監視するカークたちと出入りする荷馬車

「この建物に関係している馬車のようだな。荷台に乗っかってるのがゴミだから、おそらく廃棄物回収の定期便だろう」

「時間を決めて回っているわけですね」

「ああ、そうだな。念のために報告しとくか」

「了解、報告を上げておきます」


 そして、バロンは念話を行使した。


『バロンです』

『こちらリサです』

『建物の裏側の方に廃棄物回収の荷馬車が向かっています。念のため、注意を促しておいてください』

『了解しました』


 そしてさらに2人は会話した。バロンが告げる。


「いざという時には、建物屋上に登って所持武器を用います」

「〝ベンヌの双角〟だな?」

「はい」

「よしわかった。その時は俺は裏側組に合流することにする」

「よろしくお願いします」


 そして、念話経由で情報を受け取った裏側組にも動きがあった。

 ゴアズ、パック、カーク組である。


 3人とも人目を避けるようにして少し距離を置いた場所の物陰から様子を伺っていた。

 まずはカーク、


「荷物馬車? 夜なのに廃棄物回収か」


 その疑問の声に応えるのはイベルタルの夜の街の事情にも詳しいパックだった。


「いえ、夜だからです。夕方に始まり朝に終わり、それが花街の時間の常識ですから。昼間は寝ているのが花街の常識です。昨日の分の廃棄物を夕方からその日の深夜までに回収します。廃棄するゴミはイベルタルの街の北のはずれの廃棄物処分区画に運び込みます」


 そして、パックは大星楼の建物を見上げながらつぶやいた。


「この建物だけでも排出されるゴミは相当な量になるでしょう。専属契約を結んでいる回収業者がひっきりなしに出入りするはずです」


 すると2人のやり取りを眺めていたゴアズがぼそりと呟いた。


「そんなに頻繁に出入りするのですか?」

「ええ、こういう場所では店ごとに異なる業者と契約しているはずです」

「なるほど」


 そしてゴアズは続ける。


「ゴミ回収の荷馬車だけに気を取られたわけにはいきませんが、人間を乗せて運び出すには一番都合が良いかもしれません」


 カークが苦虫を潰した表情で同意する。


「そうだな、最悪の状況としてその点は想定しておいた方がいいかもしれんな」


 パックも同意した。


「姿の見えない敵がどのような手段で動いてくるか分かりません。くれぐれも気をつけましょう」

「ああ」

「はい」


 無論、大星楼にやって来る馬車や人間たちは廃棄物回収だけではない。酒や飲み食いの飲食物。郵便の配送物も裏側からのアプローチになる。そうした者たちを見張る意味で警備の人間も2名ほどいるが、あまりに頻繁に人が出入りするので監視役としては十分な役目を果たしていなかった。

 その様子を見たカークが言った。


「警備がザルだな。建物の管理役の人間は何をしている」


 その言葉にパックが答えた。


「この種の建物の管理の人間は大抵やる気がありません。あくまでもそれぞれの店に対して施設と場所を貸しているという考え方だからです。何が問題があってもそれはそれぞれの店の問題。余分な金はかけずに建物を維持するのが貸店舗建物の商売上の鉄則ですから」

「ひどい話だ」

「ですがそれが、1つの現実ですから」


 そしてそれはすなわち現在状況に対する不安要素の1つでもあった。店と建物の警備状況には期待できないということでもあるのだから。

 3人での会話をまとめるようにゴアズは念話で報告をあげた。


『こちらゴアズ』

『こちらリサです』

『現在状況報告、建物の裏側で監視を継続していますが、想像以上に人の出入りが激しいです。荷馬車の出入りもあるため、監視は困難を極めると思いますがこのまま続行します』

『了解です、他の方たちにも伝達いたします』

『よろしくお願いします』


 そして念話を切るとゴアズはつぶやいた。


「あのリサと言う女性、思ったら良くやりますね」

「そうなのか?」

「ええ。複数から寄せられる情報を上手にさばいている。これなら複数離れた地点での同時進行での監視もうまくいくかもしれません」

「そうだといいがな」


 ゴアズの言葉にカークは同意した。彼らの監視はまだ始まったばかりだった。


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