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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第1話:特別幕:軍外郭特殊部隊イリーザ、強制制圧作戦
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白い吐息と通信確認

 寒さで冷え込んだ深夜の郊外。

 白い吐息とともに私の声が静かに伝わる。


「現在日時11月30日23:32(フタサンサンニ)各自念話受信状況を知らせたし」


 私は通信師の運用する〝念話装置〟越しに言葉を伝えた。各隊員からの報告が集まるのをじっと待つ。


『街道沿い、監視第一地点、聞こえます』

『街道沿い、監視第二地点、感度良好です』

『制圧対象施設正面担当班、念話確認しました』

『制圧対象施設監視狙撃班、念話受信良好です』


 そしてこれに私が居る指揮班が加わり全5班となる。当然、通信師も5名だ。

 全体に向けて私は送達する。


『こちら、制圧部隊指揮官、全通信状態把握しました。全部隊、こちらから指示あるまで待機してください。異変があれば即時知らせるように』

『監視第1了解』

『監視第2了解』

『施設正面了解』

『監視狙撃了解』


 行動開始前の準備としてはまずまずだ。

 次は現在状況を取りこぼすこと無く、正確に把握する事が重要だ。

 私を含めて皆が息を潜めて周囲状況に神経を張り巡らせていた。

 今夜の作戦は失敗が許されないのだから。


 私は、この制圧部隊指揮官だ。

 今から始まる、犯罪組織制圧作戦、その陣頭指揮を任されている。

 

 大切な七人の仲間と、軍警察の将兵たちとともに、この作戦は実行される。

 それは、この国の平穏を左右する重要なものだったのだ。



 †     †     †

 


 広大なオーソグラッド大陸西部地方にある周囲を山脈に囲まれた国フェンデリオル、それが私の祖国だ。そのフェンデリオルの東部領域にある中央首都オルレア。

 そこからさらに東に向かった街道沿いの貿易都市〝ガローロ〟に私たちは来ていた。

 

 オルレアからガローロを経由して東の隣国へと至る国際路である東部山岳街道がある。その街道の町外れの途上、少し脇道へと入った場所に商業用倉庫の建物がある。

 それは、周囲を雑木林に囲まれた土地の中だ。


 書類上は所有者が存在しているが、その建物が商業に盛んに用いられているような形跡は全く見られない。本来ならば空き家だ。にもかかわらず夜に限って物や人の出入りが確認されている。

 その事実をめぐり、軍警察所属の内偵捜査部隊が明確な証拠を掴んで報告したことで事態は動いた。

 情報を精査した軍警察と正規軍の参謀本部は、早急にその建物を制圧する必要ありと判断した。

 そして、制圧作戦の実行役として私達が集められ、私は現場指揮権を委ねられた。

 正規軍兵でも、軍警察将校でもない、私たちにだ。


 頭上を仰げば、月は雲に遮られていて星明かりも乏しく辺りは暗かった。だが暗がりの状況に目を慣らしていたので視界は悪くない。

 私は今夜の制圧対象となる建物を静かに伺いながら雑木林の片隅で息をひそめる。


 冬の入り口の季節、雪は降ってはいないが我がフェンデリオルは海のない内地の巨大な盆地の中にある。夏でも比較的涼しく、冬はさらに冷え込みがきつい。

 呼吸をすると吐く息が白くなる。


 普通にそのまま話していると煙を吐いたように白い吐息が立ち昇るので口元に黒いスカーフを巻いて白い息を覆い隠す。

 周囲を軽く視線を走らせれば、周りにいる者たちもおなじように耐寒装備はしっかりと策を講じていた。


 私は愛用の傭兵装束一式を身につけていた。


 白いボタンシャツ、黒のロングスカートジャケット、黒のボレロジャケット、そしてフード付きのロングコート。これに足元には灰色のレギンスに、革製のショートブーツを履く。

 普段はこれで十分なのだが、今夜は例年にない冷え込みに対応するため、防寒用のマントコートを羽織り、首に黒いマフラーを巻いていた。これはこれで素顔を隠すのにも使えるからそう悪くない。

 さらに腰には小物や装備を入れるベルトポーチを巻き、そこに愛用のステッキハンマー状の武器をさげている。


――精術武具――


 そう呼ばれる一種の精霊武器であり、私たちの国フェンデリオルでは、250年前から国を守るための切り札として戦場で、そして治安維持の場で広く普及してきた。

 私が持っているこのステッキハンマー状のアイテムも立派な精術武具だ。


【銘:無銘】

【系統:地精系】

【形式:〝戦杖〟と呼ばれるステッキハンマー形状の民族武器型、総金属拵え】


 様々な戦場で私の武器となり、いくつもの危機を乗り越えてきた大切なパートナーだ。


 それを手に現場にて息をひそめている私の視線の先には、石造り構造の頑強な倉庫があった。地上2階、半地下階から成っており、複数の出入り口がある。建物周辺に人影は今のところ無い。

 私は息を潜めたまま制圧対象の施設を遠巻きに見守っていたが、傍から近づいてきた一人の部下に声をかけられた。

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