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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第1話:特別幕:軍外郭特殊部隊イリーザ、強制制圧作戦
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―最終ブリーフィング―

 11月も終わりに差し掛かった終盤、

 私達は軍警察中央本部庁舎の大会議室にいた。

 犯罪取締第4局のゼイバッハ大佐と初めて話し合ったあの場所だった


 集められたのは私をはじめとするイリーザの8名、


 その他、

 軍警察犯罪取締第4局の幹部級が5名、

 軍警察実力執行部隊から隊長格が7名


 これに加えて、フェンデリオル正規軍より通信師が複数名派遣されていた。

 そしてさらに、ドルスが短期間で鍛えあげた銃火器制圧部隊から、代表者として成績主席者のクレスコも参加となる。


 これらの顔ぶれを揃えて行われるのが最終打ち合わせ(ブリーフィング)だ。

 制圧作戦実行の5日前のことである。


 巨大な環状テーブルの周囲に所属別に別れて席が設けられている。

 クレスコはかつての教官であるドルスと並ぶように控えていた。


 そして、この場を仕切る総責任者となるのは、軍警察取締第4局の本部局長であるゼイバッハ大佐だ。司会進行は大佐の副官であるガルフ大尉が仕切る。

 大佐の隣でガルフ大尉は起立して声を発した。


「それでは最終ブリーフィングを開始いたします」


 その声に全員が気を引きしめる。会場を一斉に沈黙が支配して、視線が大尉と大佐の所へと集中した。


「密輸出地下組織〝闇夜のフクロウ〟緊急制圧作戦の概要説明を行います。 

 まず、各方面から集められた情報からフェンデリオル東部地方貿易商業都市ガローガ郊外、国際物流街道付近にて、制圧対象組織の活動拠点である倉庫建物を発見。

 同建物への身元不明の不特定多数の出入りを確認。さらにこれらの不特定人物の中に、制圧対象組織の幹部級の人間の存在を確認するに致しました」


 まずここまでで、制圧対象となる建物の概要が語られた。次が制圧作戦を行うその理由だ。


「次に制圧行動のその理由についてです。

 制圧対象組織である〝闇夜のフクロウ〟は密輸行為を主体とする犯罪性組織です。かねてよりフェンデリオルの精術武具の盗品売買や密輸行為を行なっていたのが確認されています。

 しかしながら、彼らの行動が徐々に密輸出を主体としたものに変化して行き、さらには内部解析を目的とした精術武具を分解、精術武具技術情報の国外への不正供与に行動比重が変化していることを確定いたしました」


 ここでガルフ大尉はことさら声を強くして念を入れて指摘した。


「皆様も御存知の通り、フェンデリオルの国家法において、精術武具は国家体制を維持するために必要な重要戦略軍事物資であり、不正輸出・国外持ち出し・分解解析・構成部品の国外持ち出しは厳罰を持って臨む重罪として規定されています」


 その事実をもってして〝闇夜のフクロウ〟に対して、軍警察から下された重要判断がこれだ。


「この国家法に基づき、制圧対象組織〝闇夜のフクロウ〟の壊滅を目的とした強制制圧戦闘行動が実行されることとなりました。作戦決行日時は11月末日深夜。今回ここに集まっていただいた皆様方には、その制圧作戦への参加が下命されます」


〝制圧作戦への参加が下命〟


 大尉ははっきりとそう告げた。大会議室に集まったすべての人間たちが息を呑むのが分る。

 私も周囲の人間を見まわしたが、ドルスの傍らにて控えているクレスコ伍長が緊張でガチガチに固まっているのがわかった。それに気づいたドルスがそっと肩をたたいて緊張を和らげているのが印象的だった。


 大尉の説明が一段落したところで、それまで沈黙を守っていたゼイバッハ大佐が皆に告げる。発言役を大尉から私へと引き渡すためだ。


「さて、説明ご苦労だった。ガルフ大尉。次に移るぞ。

 本制圧作戦の詳細だが、軍外郭特殊部隊イリーザの隊長である〝エルスト・ターナー特級傭兵〟に説明してもらう。エルスト特級、頼むぞ」

「はい!」


 名前を呼ばれてはっきりと返答すると、私は立ち上がり発言を開始した。


「エルスト・ターナー特級傭兵です。制圧作戦詳細についてご説明させていただきます。まず、お手元の資料を確認しながらご拝聴ください」


 環状テーブルの上には、それぞれの席のところに、部外秘となる重要資料が配布されている。それぞれがその資料書類を開いたのを目視しながら、私は作戦概要を語り始めた。


「最初にご覧頂くのが、別紙に記載されている軍用地図です。その所定ポイントに制圧対象となる廃倉庫建物が存在します。

 まずこの廃倉庫建物へとつながる路上に二つの監視地点を設置、建物に出入りする重要人物の動向を掌握します」


 まずは監視ポイントだ。

 制圧対象となる場所への人の出入りや、周辺状況の把握はなされて当然だろう。

 今回は念を入れて2箇所に監視地点を設けることにした。


「次いで、制圧対象組織の主要幹部3人が建物内に潜伏しているのを確認次第、正面と裏側の両面攻勢で制圧行動を実行いたします。なおその際、あらかじめ配置しておいた狙撃班により、制圧対象施設周辺に常駐する見張り役を強制排除します」


 いわゆる〝つゆはらい〟と言うやつだ。幸いにして私の部隊にはこの国最高の狙撃手が居る。私の視線は仲間のバロンに投げかけられた。彼も視線に気づいて頷いている。

 今回は彼に存分に活躍してもらうことにしよう。


「そして、ここから先が制圧行動となりますが、制圧は正面と裏側の2正面にて行います。これについては各班編成を紹介しながら説明させていただきます。班分けは総数5班となります」


 制圧行動そのものは二手に分ける。正面からの圧力を加える班と、裏側の侵入ポイントから内部突入する班だ。それぞれに求められる役割があるのだ。


「まず先ほど説明した第1路上監視班、及び、第2路上監視班、これは軍警察実力執行部隊に担当していただきます」


 監視任務ということで、ここは戦闘状況となる可能性が低い。ならば通常の犯罪取り締まりに従事することの多い彼らに任せるほうがいいだろう。監視とて重要な役割なのだから。


「続いて狙撃班、これはイリーザ所属弓狙撃手、バルバロン・カルクロッサ1級傭兵に担当していただきます」


 狙撃班と言いつつ、実質バロンさん単独になる。有能な彼なら補助役も不要だ。私の言葉にバロンさんが無言で頷いている。

 そしてその次が、正面制圧だ。


「続いて正面制圧班、これはイリーザ所属隊員、ルドルス・ノートン準1級傭兵が率いる新設の銃火器部隊20名を投入いたします。

 今回の制圧作戦においては、不正隠匿された精術武具が広範囲に用いられる可能性が極めて高いです。これに対処するため新型銃火器による一斉制圧を試みます。短期間ではありますが入念な訓練を積み重ねており迅速な一斉制圧が期待できるでしょう」


 この説明にドルスもクレスコも、熱心に聞き入っていた。彼らなら全面的に信頼しても成果を出してくれるだろう。


「最後に、施設裏側班には、我がイリーザの残りの隊員全てを投入します。こちらの運用は私が班長を兼任いたします」


 指揮官だからといって安全なところで眺めるつもりはない。現場にて実動行動あるのみだ。


「なお当日は複数の通信師を用意し、全体で綿密な連携のもとに制圧作戦を進めるものとします。なお制圧対象組織側に制圧作戦が露見することを防ぐため、制圧作戦実行手順については当日現場において説明するものと致します」


 通信師を複数用いる。

 これは私がかつて大成功を収めたワルアイユ動乱の大規模野外戦闘にて見出した手法だ。情報連絡を密にすることで、手勢を複数に分けても緻密な連携行動が可能になるのだ。


 私はガルフ大尉やゼイバッハ大佐と視線を合わせてうなずきあう。

 私から説明できるのはここまでだ。

 ガルフ大尉が補足事項を告げる。


「制圧作戦、最終打ち合わせは以上となります。なお作戦実行現場までの移動手段については各部署に対して別途通達いたします」


 そして、ゼイバッハ大佐が最後を締めた。毅然として立ち上がると、力強く叫んだ。


「諸君! この国の組織犯罪取り締まりを、より一層推し進めていくためにも、今回の作戦の成功は極めて重要なものになる。失敗は許されん!」


 皆が真剣な顔で頷いていた。


「祖国の存続と繁栄のためにも全力を尽くしてもらいたい! いいな!?」

「はっ!!」


 今ここにすべての意思は一つになった。それを認識して大佐の怒号が飛んだ。

 

「行動開始!」


――ザッ!――

 

 大佐の号令とともに皆が一斉に立ち上がった。


「了解!」


 掛け声とともに全員で一斉に敬礼をした。そして最後に大佐はこの言葉を唱えた。


4つの光を(クヴァーロ アオーレ)!」


 全員がそれに一斉に呼応する。


4つの光を(クヴァーロ アオーレ)!」


 それは民族の言葉。

 このフェンデリオルに生けるものなら、誰もが尊ぶであろう四大精霊に栄光と幸せを願う言葉だからだ。


 そしてついに制圧作戦は始まった。


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