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緊急招集Ⅲ ―七随臣、行動方針決まる―

「先ほども申し上げた通り、イベルタルは様々な結社や組織が複雑に繋がりあう〝魔都〟です。巨大な犯罪都市と言っていい。ルスト隊長と言えど何の足掛かりもなくにこの街に足を踏み入れたわけではない。彼女なりの〝コネ〟がある。しかしこのコネとなる人物が非常に厄介なのです」


 皆の視線が集まる中でパックは言葉を続けた。


「そもそも、ルスト隊長は3年前に家出騒動を起こしています。その際にイベルタルにて当時のルストさんを保護して、生活の場を与えた人物が居ます。彼女はその時の繋がりをもとに、その恩人に協力を求めているはずです。

 その人物の名前は〝シュウ・ヴェリタス〟、人々からはこう呼ばれています」


 パックは息を吸い込むとより印象的に皆に聞こえるように強い口調で語った。


「――〝北の女帝〟――と」


 皆が言葉を失う中で、ダルム老は顎を撫でながら呟いた。


「〝あの女〟か!」


 プロアが問う。


「知っているのか? 爺さん」

「ああ、候族界隈じゃ有名な人物だ。イベルタルで商売をするなら、最低1回は面通しをして挨拶しなきゃならねぇ。仲間にしてもらえれば手厚く保護してくれるが、へそを曲げたらとにかく面倒だ。失礼働いて怒らせて、イベルタルを事実上の出禁になった上級侯族も居るって話だ。

 ましてや彼女が考えている事を邪魔でもしたらどんな目に遭わされるか分からねえ。女の権力者っていうのはとにかく厄介だからな」


 ダルム老はさらに続ける。


「シュウ女史は、そもそもがイベルタルの花街の顔役なんだが、そこからイベルタルの裏社会に顔が広い。当然、商売も上手く莫大な財産を所有している。金があるというだけでなく、商才に恵まれ機会を読む力に長けている。今では表社会の政治にも手を出していて、イベルタルの都市自治に深く関与している。表社会においても、裏社会においても、イベルタルを掌握しているのは彼女と言っていいだろう」


 その時、ゴアズが尋ねた。


「その彼女に会って事情を説明すれば?」


 だが、ダルム老はその考えを一蹴した。


「それが通じる人物だったらな。言っただろう? へそを曲げさせたら厄介だって。彼女はフェンデリオルの国民であるという認識より、イベルタルの住人であると言う認識の方が強い。イベルタルの身内を守るためならどんな手も使う。しかし逆に言えばイベルタルの外から来た人間に対しては、あくまでも外から来たよそ者と言う認識をとる。彼女にとっちゃルストは目の中に入れても痛くないほどに縁のある人間だろう。しかしだ――」


 そこで、ダルムは最も重要な点を指摘した。


「今現在、ルスト自身が隊長として俺たちの同行を認めていない状況下にある。そんな時に俺たちが勝手に乗り込んでルストの行動を邪魔するようなことがあったら、北の女帝さんは果たしてどんな風に思うだろうな?」


 カークはそこで、深く大きくため息をついた。


「そうか、そもそも、そこに至るための交渉が必要なのか」

「そうだ、何のつながりもなくノコノコと訪問して会えるような人間じゃない。それなりの段取りが必要になるだろうぜ」


 そこにドルスが畳み掛けた。


「そういう事だ。そこで俺たちは行動を二つに分ける。ルストを監視する側と、シュウ・ヴェリタスにコンタクトを測り交渉する人間だ」


 プロアが言う。


「俺とドルスのおっさんとパックは、事前にこの街に入って土地勘がある。カーク、バロン、ゴアズの3人は事前潜入の3人と、それぞれにペアを組んでルストの身辺を見守る。組み合わせは――」


 プロアは集まったみんなに視線を走らせる。


「パックとゴアズ」

「御意」

「はい」

「ドルスとバロン」

「おう」

「はい」

「俺とカーク」

「うむ」

「この組み合わせで動く、ダルム爺さんは――」

「あの女との交渉だな?」

「できるか? 爺さん」


 ダルム老は頭を掻きながら大きくため息をついた。


「やらない訳にはいくまい。なんたって、イベルタルで行動するためには1度は仁義を切らなきゃならない女帝様だからな。何が何でも繋がりを作ってみせるさ」

「頼んだぜ、そこが突破できれば今後の事がやりやすくなる」

「分かった、任せろ」


 そう答えるダルムの顔は真剣だった。それはまさに覚悟を決めた男の顔だった。

 ドルスは全員に改めて問いかけた。


「全員、覚悟はいいな?」


 その言葉に全員が頷いていた。


「よし、それじゃ準備に入ろう。当面の間、お互いの連絡はこの店のこの個室を起点にする」


 と、その時だった。個室の入り口のドアがノックされた。


「誰だ?」


 ドルスが尋ね返せば、顔出してきたのはバロンに同行してきたリサだった。


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