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ダルム老、かつての主家と語らい合う

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■読者様キャラ化企画、参加キャラ■

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橋本ちかげ様 【ジェスル・アルフ・アルズィッル】

きたのあかり(ФωФ)様 【レノルド・シャン・リミエール】


 一隻のチャーター運河船が運河航路を行く。

 中央都市オルレアの西の郊外にある衛星都市の1つ、ウルデルクから出発していた。

 途中、オルレアを経由して数日滞在しイベルタルへと向かう。

 その運河船に乗っていたのは4人の男女だった。若い男性当主が1人に、褐色の肌の異国人男性が1人、美しい中年女性が1人に、60過ぎの白髪頭の老人男性が1人と合計4人が乗っている。

 その船上で談笑していた彼らだったが、船はまもなくイベルタルの停泊場の1つに着こうとしていた。


 船の中の4人のうちの1人の褐色肌のフィッサール人が懐中時計を見ながら時間を確認する。彼の服装はズボンにルタンゴトコートと言うフェンデリオルでは古式ゆかしい定番の服装だったが、頭にはかぶり布のクーフィーヤを乗せ、留め輪であるイカールで押さえている。

 フェンデリオルの風俗に馴染みつつも、自らの民族としての価値観は大切にしている、そんな風だった。


「夕方5時、もうすぐイベルタルですな。停泊場はイベルタルの西のはずれのトルメントになります。そこで我々は二手に別れましょう」


 同じ船の中に乗っている中年女性が言葉を添える。

 着用しているのは質素な装いのリージェンシースタイルドレスで、防寒用に丈の長い女性用のルタンゴトジャケットを重ねていた。


「若旦那様の付き添いは私が行います」

「では、ギダルム殿の送迎は私が行いましょう」

「よろしくお願いいたします」


 意外ではあったが、フィッサール人の男性とフェンデリオル人の中年女性は若当主の側近のようだった。執事職の者はいないが、女性が家令を兼ねた家政婦で、男は側近兼相談役というところだろう。

 そこに居合わせたのが、ルストの率いるイリーザの隊員であるダルムだ。彼もまた彼らの家族が身内であるかのようにすっかりなじんでいた。


「ご当主のアドニス様にはすっかりお世話になってしまいました。送迎までしていただき本当に感謝いたします」


 当主の名はアドニスと言う。外見からして歳の頃は二十歳そこそこというところだろう。白い肌に赤毛の髪が特徴的だった。


「いえ、これぐらい当然のことです。ギダルム殿には大叔父のダブリオ候の時代に大変お世話になりました。時代を経て、ローレム家が候族家として再興を果たしたのは、間違いなくギダルム殿のおかげですから」


 若当主の言葉にギダルムは謙遜しつつも礼の言葉を述べた。


「いやいや、俺は20年前の古い記憶を頼りに当時しでかしてしまった自分の過ちを自分で尻拭いしただけです。あの時と同じ過ちはもう御免ですから」


 するとその言葉に中年女性が口を開いた。


「あの時の事は私は今でも覚えております」

「ノルドさん、そうですな。あなたもあの時の悲劇の場に居合わせたのですな」

「ええ、当時私はあの館のメイド長でしたが、乗っ取りの流れに逆らえず、次々に入ってくる外部からの新参者たちに邸宅の中を我が物顔に荒らされ放題でした。それを食い止められれば悲劇は起こらなかったのではと今でも夢に見ることがあります」

「俺もです。ですが時は巻き戻せません」

「ええ、そうですわね。ならばなおのこと〝今〟を大切に守っていきませんと」

「そうですな」


 その中年女性の名前はノルドと言った。20年前に失われたローレム家、ダルムとともに当時の記憶を共有している人物だったのだ。

 ダルムはフィッサール人の彼にも告げた。


「ジュスル殿にも大変お世話になりました。あなたの尽力があってローレム家の失われた継承者の血筋を見つけ出すことができた。あなたのご協力がなければ再興は叶わなかった」


 フィッサール人の彼の名前はジュスルと言った。


「私は私の商人としての生き方に準じて1つ1つの出来事に向かい合っただけですよ。むしろ、この国においては居場所の無いフィッサール人である私を受け入れてくださったご当主様とギダルム殿には心から感謝を申し上げたい」


 お互いがお互いに感謝の言葉を口にする。それは相互信頼という絆のかたちだったのだ。


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