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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第1話:特別幕:軍外郭特殊部隊イリーザ、強制制圧作戦
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殺傷許可判断と最終選抜訓練


 そしていよいよ――

 来たる11月末の制圧作戦実行日が決まった。


 参加する人員、必要とする要員、それなら事細かく決められて必要な情報が共有される。それと同時に不用意に情報が漏れないように情報封鎖が敢行される。敵に悟られば逃げ出される恐れがあるからだ。

 ゼイバッハ大佐たちを交えた会議を設けると、プロアたちが集めた情報を公開した。

 制圧対象となっている〝闇夜のフクロウ〟が実行しようとしている密輸出案件の概要である。

 一番最初に、私たちとゼイバッハ大佐たちが面会した大規模会議室。

 その巨大な環状テーブルを囲んで私たちは情報共有に望んだ。

 席に付き落ち着き払って、プロアは語る


「やはり、事前の2次情報の通り、闇夜のフクロウの配下の者たちは今、低価格の安物の精術武具をかき集めてます」

「やはりそうか」


 大佐が漏らす言葉にプロアは答えた。


「詳細を深めるため、密売ブローカーの証言を得ましたが、密輸業者が安物を集める理由は一つ。『高級品はバラしてしまうのには惜しい』と言う事だそうです。それだけ言えば勘のいい人間には分かるだろう? と言われました」


 プロアが掴んでいた言葉に大佐は張り詰めた表情を浮かべた。


「やはり分解解析は間違いないか」

「はい、おそらくそうだと思います。もしくはもっと具体的な行動として分解解析のために必要な部分を国外へと持ち出そうとしているのかもしれません」


 疑惑と推測だったのが、ここでほぼ確定となる。

 精術武具の分解解析と、重要部分の国外持ち出し。

 いずれも、極めて重い重罪だ。

 傍らで耳を傾けていた私もプロアの報告に言葉を添える。


「それ、国家反逆罪クラスの重罪ですよね?」


 私の言葉に大佐は頷いてくれた。


「そうだ。精術武具の密輸出も重罪だが、精術武具そのものを理由なく分解しこれを内部解析しようとするのは、国家法で定められた国家に対する反逆の罪に該当する。絶対に看過できん事実だ」


 そして、大佐と同席していた人物がこう発言した。


「強制制圧だ。敵の抵抗状況によっては殺傷も許可されるべきだ」


 その発言に私も深く同意する。真剣な表情で深くうなずく。


「その判断は正しいと思います。精術武具を密売する組織は自らも精術武具で武装している可能性も極めて高いです、これを悠長に無力化して身柄拘束を絶対条件として考えるのであればこちら側もそれなりの犠牲者を避けられません」


 制圧作戦はただ敵を取り押さえるだけではない。敵の抵抗を排除する段階があるのだ。

 私に同行して話し合いに同席してくれた人物がもう一人居る。白兵制圧戦闘のエキスパートであるカークだ。彼も発言する。


「特に今回は緊急を要する案件です。現場における、制約条件の判断は極めて速やかに行われる方がいい」


 カークの言葉に大佐は深くうなずいた。


「同感だ。それならば抵抗の意思ありと判断した場合、即殺傷許可と事前通達しておく」


 私は大佐の即断に感謝した。建前よりも実利を優先する。彼のような性格の人は嫌いではない。


「大佐、ご英断です」


 大佐の言葉に感謝すると、大佐は顎に手を添えながら、もう一つの懸案事項を口にする。


「残るは、現在訓練中の銃火器部隊の訓練完了待ちか」


 そこに、私に付き添っていたダルム老がある報告をする。


「大佐、それについてですが報告があります」

「ほう?」

「明日、最後の選抜訓練試験が行われるそうです。それの終了をもって総合成績評価の上位20名を合格者として選抜します。それにより新設銃火器部隊の完成ということになります」


 大佐は思わずニヤリと笑っていた。


「明日が最終選抜、その次の日が修了式か」

「そして、間髪おかずに初戦闘任務となりますね」

「予定通りにうまくいきたいものだな、ルスト隊長」

「ええ、おっしゃる通りです大佐」


 そして大佐は、ある要望を口にする。


「それならば、明日の最終訓練。時間の許す範囲で見聞したいものだな」

「私もです、大佐。どうしても目にしておきたいので」

「ならば行ってみるか。1日くらいなら私も時間を開けれるだろう」

「それではご一緒に」

「うむ」


 こうして私と大佐は、今回の制圧作戦の要となっている銃火器部隊の完成状況を内密に視察することになったのである。


 私たちが制圧任務に臨んで組み立てる際の、パズルのピースの最後のひとつがハマろうとしていた。

 制圧作戦開始まで一週間と迫ろうとしていたある日のことだった。



 †     †     †



 中央首都オルレアから南部方面に馬車で半日程かかったところにその野外訓練場は存在する。

 昔から新兵の訓練や、新部隊の選抜訓練や、重要な試験などに用いられてきた場所だった。フェンデリオルで正規軍に関与するのであれば誰もが一度は必ず利用する場所だ。


 その野外演習場からさらに山間に小一時間ほど行ったところに小高い岩山がある。そこが最終選抜訓練の舞台だった。


 最終選抜訓練は〝200発連続狙撃〟

 岩山の小高い場所まで登り、そこから離れた別の岩場の岩を目標に連続で弾を当て続けるのだ。その数なんと200発。かなりの長丁場になることが予定された。


 私も大佐も、残念ながらその任務の多忙さから、最終選抜訓練全てを見ることは叶わなかったが、最後には間に合ったようだ。

 選抜訓練を管理監督する、教導育成事務局の軍士官が私たちに説明してくれた。


「1回に時間がかかり、さらに人数が多いので、3名を一組として、これを8回行います」

「現在行なっているのは?」

「第7組目です」


 私たちが立っていたのは岩山の麓の近くだ。そこに仮設本部が設けられ、見上げる位置に存在する3箇所の射撃地点を見守ることができた。

 そこに3人の志願者たちが最後の試練に臨んでいた。


「一人、射撃が止まっているな」


 3人のうちの一人が動きが止まっている。


「大佐、おそらく集中力が切れているのでしょう」


 私たちが言葉を交し合っていれば今回の選抜訓練を推し進めていた私の部下のドルスが姿を現した。職業傭兵として標準的な野戦用ジャケットではなく、カーキ色の正規軍訓練作業着姿だ。頭にはツバ付き帽がかぶられている。

 私たちの傍らに佇んで説明を始める。


「この訓練は精神力の限界を試すと同時に、限界状況での対応能力を見極めるためのものです。無論ただ現場に臨めば良いというわけではない。前日からの準備状況も含めて総合的に判断します」


 それを聞かされて大佐はうなずいた。


「なるほど、準備も含めてその者の能力というわけだな」

「はい」


 そうしている間にも3人の結果が出た。一人は120発で断念、もう一人が172発、最後の一人は190発という成績だ。


 3人とも精も根も尽き果てたという状態で山から降りてくると休憩用のテントに向かう。

 そして、いよいよ25人目の時、

 大佐とドルスがやり取りをする。


「ほう? 女性兵志願者か」

「はい、大佐。今回唯一です」

「名前は?」

「クレスコ・グランディーネ伍長、今回私が一番期待をかけている人物です」

「ならばお手並み拝見といこうじゃないか」


 私と大佐と、それに彼女を見守り続けたドルスが見上げるなかで、岩山での連続狙撃と言う彼女の挑戦が始まったのだった。


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