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新・旋風のルスト ―英傑令嬢の特級傭兵ライフと精鋭傭兵たちの国際精術戦線―  作者: 美風慶伍
第5話:北の街イベルタルにて(中編) ―ルストとイベルタルの闇のキャビネット―
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闇のキャビネットⅡ ―ルスト、事実と経緯を語る―

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■読者様キャラ化企画、参加キャラ■

━━━━━━━━━━━━━━━━━

澁澤まことさん キャラ名:シュウ・ヴェリタス

アシュレイさん キャラ名:アシュレイ

――に続き、

もふもふ大好きさん キャラ名:颯蓬鬆サー・パンソン

曽我 二十六さん キャラ名:ゾン 我六ウォリィ

かばパパさん キャラ名:カーヴァ パトロ

daimonさん キャラ名:艮大門ゲン ダーメン

平凡なカラコルムさん キャラ名:バナーラ・カラコルーモ

天生諷さん キャラ名:ガフー・アモウ


「その前に、私がここに訪問するまでの大まかな流れを説明させていただきます。なお話の中に一部部外秘となる機密情報が絡むことをご承知おきください」


 前提条件を伝えなければ会議にもならない。機密情報が絡むという部分についても頷く姿が見て取れたので理解してもらえたと見ていいだろう。


「まず事の発端は、フェンデリオル中央首都の軍警察が、とある組織の精術武具密輸出事件の制圧作戦を行なったことから始まります。精術武具の密売ではなく、非合法に精術武具を集めこれを分解、その中心部分のみを国外へと持ち出そうとした事件です」


 この説明に反応したのが、先程対話をさせてもらった颯さんだ。彼の素性を考えれば当然だろう。


「それは私もある筋から聞き及んでいる。新興組織がある大型の組織の影響を受けて、敵対国への引き渡しを最終目的とした精術武具素材の密輸出案件を引き起こしたと言う。その組織の名前は〝闇夜のフクロウ〟と言ったはずだ」

「はいその通りです。国家反逆罪級の大罪を犯し組織は大規模の討伐を食らうこととなりました。若い女性首魁は捕らえられ公式には処刑が断行されました」

「当然ですね。精術武具の分解解析、正当な理由のない海外への持ち出し、心臓部の重要部品の国外持ち出し、これらはいずれも国家級の重罪として、高確率で処刑対象となる」


 颯さんの言葉に皆の視線が集まる。


「加えて言うと、私の所属している地下オークション組織では〝強盗殺人による収奪〟と〝国外持ち出し〟〝内部の分解解析〟〝主要構成部品のみの売買〟の4点は御法度となっている」


 私はあえて彼に問いただした。


「もしそれに違反した場合は?」

「決まっているでしょう? 〝粛清〟です。地下組織にも秩序が必要ですから」


 なるほど納得に答えだ。


「話を戻します。問題はこの組織そのものではなくこの組織に介入していた黒幕の2人です。そしてさらに、この重要人物2人が機密情報のやり取りに使用していた極秘文書から、とある人物の名前が浮かび上がりました」


 ガフー氏が尋ねてくる。


「その人物の名前は?」

「ヘルンハイト出身の製鉄工学博士ケンツ・ジムワース氏です」

「彼か――」


 ガフーさんも大きくため息をついていた。シュウ女史が質問する。


「知ってるのかい?」

「ええ、工業系の企業の間では有名人ですよ。製鉄工学の世界的権威、一時は世界に鉄の時代もたらすとまで囃し立てられた人物です」

「それほどまでかい」

「はい」


 ガフーさんの言葉は続く。


「鋼鉄製造の重要技術である溶鉱炉の開発と研究に多大な実績を残しています。現在は鋼鉄の板を連続で製造する連続圧延技術とか言うのを研究していたといいます」


 その事実に私も思わず尋ねた。


「金属の板を連続でですか?」

「ええ、研究が完成すれば建築にも軍事にも革命をもたらすでしょう。例えば軍艦の表面に金属の板を貼り付ければ旧型の大砲では傷をつけることもできません。建築物に用いれば今までの常識をはるかに超える巨大な構造物を作ることも夢ではありません」


 商業に明るいバナーラさんも意見を述べた。


「工業系や建築系だけではなく投資家界隈の間でも実用化が心待ちにされていたはずですね」

「ええ、ヘルンハイトでの彼の活動が動向が注目されていますよ」


 だがそこに艮氏が口を挟む。


「待て、それほどの人物の名前がなぜ密輸出組織の黒幕の機密情報のやり取りの中で出ているのだ?」

 

 さらに颯さんがある推測をぶつけてくる。


「もしかしてその極秘文書というのは〝老鼠語〟ではありませんか?」

「はい。その通りです極秘文章は〝老鼠語〟で作成されていました」


 老鼠語の事が話題に出ても誰も疑問をさし挟まない。彼らも老鼠語について基本情報を知っていると見ていいだろう。無論その危険性も。

 私ははっきりと頷いた。その答えに颯さんは自らの顎を撫でながらしきりに頷く。


「やはりそうか。それならばその〝闇夜のフクロウ〟の背後にいるのは〝黒鎖(ヘイスォ)〟で間違いないな――」


 颯さんのつぶやきに曽さんが渋い顔で大きくため息をついた。


「また〝彼ら〟ですか……」


 その言葉の端々には、現在の彼らがどれほどまでに黒鎖に苦しめられているかが伝わってくる。

 彼の言葉に私は告げる。

 

「はい、残念ながら。闇夜のフクロウの背後にいた黒幕の二人、一人はフェンデリオル系の東方人の混血で、もう一人は黒鎖の東方人でフェンデリオル国内での活動で極めて重要な位置を占めている事も判明しています」


 そして、シュウさんが尋ねてくる。


「それで、その2人の名前は?」

「はい」


 2人の重要人物の名前を口にした。


「1人はデルファイ・ニコレット、闇夜のフクロウの組織内部で実質的指導者として動いていた人物です。

 そしてもう1人が〝古 小隆(グァ シェンロン)〟、黒鎖の重要幹部で闇夜のフクロウの全ての行動を実質的に取り仕切っていた人物です。私の方の情報網でフェンデリオル国内での黒鎖の活動を一手に牛耳っているとも言われています」


 私がそう語った時、傍らのシュウさんの表情を垣間見た時、そこに見たのは恐ろしいほどの憤怒の表情だった。


古 小隆(グァ シェンロン)! あいつか!」

「ご存知なのですか?」

「ああ、知ってるも何も、今、イベルタルの花街を派手に荒らしている大悪党さ」


 そう言い終えてシュウさんの視線がカーヴァさんの方へと向かう。

 そのカーヴァさんも、会食の時の朗らかな表情とは打って変わった非常に冷静な表情で語り始めた。


「花街には花巻の秩序があります。当然ながら、金の動きも、名誉も、地位も、花街独自の理屈と習わしに基づいて100年以上の時を営々と守り続けてきました。ですがそこに外部から暴力的手法をもって介入しようとしているのがその人物なんですよ」


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