闇のキャビネットⅠ ―会議始まる―
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■読者様キャラ化企画、参加キャラ■
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アシュレイさん キャラ名:アシュレイ
【イベルタル】
フェンデリオル国の北東部に位置し、東をフィッサール連邦西部分地領と、北をヘルンハイト公国に隣接している貿易商業都市だ。
数あるフェンデリオル国内の主要都市の中でも経済活動が最も盛んな都市であり、外国人の出入りが激しい都市でもある。
その経済活動を支える商業企業の件数は国内屈指であり、その経済活動が生み出す税収入もまた、国内各都市の中で最高額を維持している。
それゆえに古くから政争の舞台となることが多く、政治をめぐる権謀術数の飛び交う剣呑な街でもあった。
フェンデリオル国の中央政府は、イベルタルの持つ財力を意のままにしようとその権力を行使し、イベルタルの市民は都市の権利を守ろうと政治意識は高かった。
国家権力と都市の自治権をめぐる争いは150年以上にわたるといわれており、その結果今から約100年前に誕生したのが、
――イベルタル都市自治会議――
である。
自治会議が発足してもなお、中央政府との対立は止むことはない。熾烈な権力の綱引きの結果、イベルタルは極めて高度な都市自治を確立するに至った。
そして、表向きの自治議会のその裏でイベルタルの権力の全てを掌握する会議があった。
その存在を知る人々は、その会議をこう呼んだ。
――闇のキャビネット――
知る人ぞ知るイベルタルの最高権力である。
† † †
私とシュウさんは特別控室から出ると、水晶宮の建物の中を最上階でやる4階へと向かった。全ての通路から隔絶された螺旋階段があり、それを伝って最上階へと向かう。
その途中には環境な警護役が1か所につき2人、途中4箇所、万が一の侵入者に対して備えていた。
大理石と御影石のモザイクのような床の上を歩く。純白の漆喰の壁を彩る装飾は金箔の縁取りが施され建物の豪華さをより絢爛なものにしていた。
螺旋階段は人間が5人横になって登れるほど広く、通常はるかに広い空間を確保している。その壁や天井には眩いばかりの最新式のガス灯による明かりが所狭しと設けられている。
降り注ぐ光を浴びるように螺旋階段を上り詰める。
そしてたどり着いた4階、階段を上りきったその場所に広い踊り場があり、そこにも二人の警護役が控えている。踊場から通ずる扉は複数存在するが、その中央両開きの最も大きな扉があり、重い木製のその扉を二人の警護役の制服姿の男性が白い手袋はめた手で開けようとしていた。
「ご苦労」
シュウさんが放つ労いの言葉とともに扉は開かれる。
――ギィィィ――
重く軋む音と同時に扉の向こうの会議室の様相が私の視界の中に飛び込んできた。
雰囲気は一転し、壁は高級なチーク材、木目の感じを生かし、床には落ち着いた色柄のラグカーペットが広い空間の中に隙間なく敷かれている。
会議室空間の中央にはマホガニー製の巨大な円形のテーブルが据えられている。当然ながらソファーも高級木材であり座面は革張りで作られている。
頭上には明るさを落としたシャンデリアが下がっている。
円卓の周囲には座席は9人分あり、それぞれの席のテーブルの部分には水差しとコップとペン立てと白紙の紙が数枚、テーブルの席を見守るように部屋の壁際にいく人かの侍従や侍女たちが控えていた。
そして円卓の周囲には、昼食会の会食の席で顔合わせをしたあの7人がそれにそれぞれの席についていた。
ドアから入ってすぐの席が二つ開いている。私とシュウさんの席だろう。
その二つの席を挟むように――
アシュレイ
ガフー・アモウ
バナーラ・カラコルーモ
艮 大門
この4人が両脇を固めている。
残る3つの席に、
カーヴァ パトロ
曽 我六
颯 蓬鬆
この3人が続いている。
先ほどの会食の席とは打って変わり、無駄口を叩く者は無く、会議の主役が現れる時をじっと待っていた。
会議室の中へとシュウさんが先になり私がその後に続く。
席が近くなるとアシュレイさんが立ち上がりシュウさんの席を操作する。無論私にも男性侍従がついて、椅子を操作してくれた。
そして私とシュウさんがそれぞれの席について全員が揃うことになった。
アシュレイさんが元の席に戻りいよいよ会議は始まった。イベルタル都市自治会議、裏の権力を掌握する〝闇のキャビネット〟の懇談会議の始まりである。
アシュレイさんが立ち上がり最初の宣言をする。
「それではこれより定例の会議を開催いたします。今回、議題となるのは四つ。
まずは、この都市の商業上の長年の問題である在外商人について
さらに、最近になり急速に国家状況が異常をきたしつつあるヘルンハイト公国について、
次に、早急な対応が求められる、とある二人の人物について、
最後に、外来の犯罪組織である黒鎖についてです。
四つの議題がございますが、今回はそれを同時に並行しながら討論させていただくこととなります。
それでは、シュウ支配人、よろしくお願いいたします」
四つの議題について語られると次に声を発したのはシュウさんだった。
「さてそれじゃ、早速だけど定例会議を始めるよ。色々と頭の痛い問題があるけど、それについて話し合う前に、特別に招いたゲストの話から聞こうじゃないか。私の隣に控えているエルスト特級傭兵だ。みんなはどうだい?」
シュウさんが会議に集まった全員に意見を求めるが反論は出なかった。それを受けて私は声を発した。
「ただいまご紹介にあずかりましたエルスト・ターナーです。今回は私のような部外者を末席にお加えいただき誠に感謝いたします。私が今回、皆様に対して情報提供させていただきたい事案がありこのような運びとなりました」
今回の会議の流れが、いつもとは違うということはこの場にいる全員がわかっているようだ。そして、このイベルタルの街に厄介な問題が噴出しているという事も。みんなの視線が私の方へと一点に集まった。







