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57センチ目「ゲームクリア」

「クリア、行けるか?」


「うん、もう大丈夫」


 俺が差し伸べた手を取って、クリアはなんとか立ち上がった。


 苦しそうな様子を見せつつも、健気に笑ってみせるクリアを見て、俺は一層気合いを入れた。

 このままやられっぱなしでは終われない。ここから一矢報いてやる。


「いくよ、ミラ!」


「合点承知の助!」


 クリアはミラに呼びかけると、二人で再びリバサに向かっていった。ここが踏ん張りどころ、なんとか頑張ってほしいところだ。


 俺は美咲の下に駆け寄ると、ついさっき思いついたばかりの作戦を耳打ちした。


 この作戦の肝になるのは、ミラが持っているあの強力なスキルだ。成功させるには、四人のスムーズな連携が重要になる。


 美咲は俺のアイデアを一通り聞き終えると、ポーカーフェイスな彼女には珍しく、口角を上げてにやりと笑った。


「面白いじゃん、それ。やってみよう」


「よし! それじゃあ作戦開始だ!」


 クリアは先ほどの失敗にも臆さず、再びカプセルに触れた。茶色いエフェクトがクリアの体を包み込み、その周囲に大量のまきびしがばら撒かれる。


「こんどは上手くいったかも!」


「ちぃっ、面倒なアイテム拾いやがって!」


 足元に散らばったまきびしを目にしたリバサは、クリアとの距離を取りながら足場を渡っていく。


 そうして、クリアとちょうど同じくらいの高さの離れた足場にリバサが着地した瞬間だった。


射撃(シュート)!」


 放たれたミラの狙撃を、リバサは後方にバク宙しながら回避した。銀色の弾丸はリバサの足元に着弾して、あさっての方向へと跳ね返っていく。


 空中に高く翻ったリバサの体に向かって、俺は指を差しながら叫ぶ。


「そう、その位置だ! 必殺(ウルト)!」


 クリアは両手を高く掲げた。

 エネルギーの奔流が一点に集まり、巨大な定規を形作っていく。


 しかし、その定規が振り下ろされ、眼前に迫りくるのを目の当たりにしても、リバサは動揺しなかった。


 空中に浮かんでいるカプセルに触れると、リバサの手中に長いムチが出現した。

 リバサはそれを斜め下方に向けて思い切り振り抜いた。


 すると、ムチは床に並んだ筐体の一つにくるりと巻きついた。

 リバサはそちら側に引っ張られることによって、必殺(ウルト)の軌道から逃れていく。


「そんな大振り、当たらないよ!」


 俺はそれを見て、ほくそ笑んだ。

 事前に予想していた通りの動きをしてきたからだ。


 そして、俺たちの作戦はこれで終わりではない。


 不審そうにこちらをにらむ悠斗に向けて、俺はドヤ顔を見せつけた。


「それはどうかな?」


反射(リフレクト)!」


「なにぃっ!?」


 巨大定規はミラが出した大きな鏡にぶつかると、トランポリンに当たったかのように勢いよく弾かれ、斜めに跳ね返った。

 方向を転換した巨大定規が、並んだ筐体を根こそぎ破壊しながら、横薙ぎにリバサを襲う。


「ぐああああああああっ!」


 リバサは、必殺(ウルト)の絶大な威力とともに壁面に叩きつけられた。


 さすがにこの攻撃は堪えたらしく、リバサはそれまでたたえていた余裕ありげな笑みを崩し、苦悶の表情を見せた。

 そして、激突の衝撃にひび割れてくぼんだ壁から剥がれるようにして、よろよろと前進していく。


「やっぱり、チームを組んでいる方が強かったか……!」


「リバサ!」


 悠斗は駆け寄ると、前のめりに倒れるリバサを抱きかかえた。


 リバサが倒されたことにより、周囲の足場やカプセルが消えていき、室内が元の空間へと戻っていく。

 留魂石を破壊されて消えていく最中でも、リバサは満足そうに笑っていた。


「楽しかったね、悠斗」


「うん、そうだね。協力プレイできてよかったよ」


「これからも僕を使って遊んでくれよ?」


「当たり前だろ、まだ積みゲーがたくさんあるんだから。崩し終わるまでは壊れずに頑張ってもらうよ」


「ゲーム機使いの荒い人だなぁ」


 リバサと悠斗は少し笑いあった後、真剣な表情に戻ってこちらを見つめた。


「せっかく僕たちを倒したんだ。竜馬さんに絶対勝てよ!」


「もちろん、そのつもりだ!」


 俺が力強く宣言すると、リバサはこちらに向かってサムズアップしながら消えていき、やがて元のゲームハードに戻った。

 悠斗はそれを見届けると、すっくと立ち上がった。


「竜馬さんとその護衛はこの先にいる。くれぐれも気をつけて行けよ」


「護衛?」


 王城竜馬に直属の護衛がついているというのは初耳だった。できれば、その敵の情報を少しでも聞き出しておきたいところだ。

 しかし、悠斗は肩をすくめた。


「行けば分かるさ」


 どうやら、それ以上語る気はないらしい。百聞は一見にしかずということなのだろう。


 何はともあれ、先に進まなければならないのは決まっている。俺たちは悠斗の横を通り過ぎて、次の部屋へと向かった。


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