46センチ目「オタクコンビ襲来」
入り組んだ部屋を抜けると、そこは開けた空間になっていた。
そして、そこには出てきた俺たちを待ち構えるようにして、四人の人物が立っていた。
前列にいるうちの一人は、整った顔を持つセーラー服の青髪少女。その後ろには、メガネをかけたやせ型の男性が立っている。
もう一人は、緑色のヘルメットをかぶった迷彩服の少年。その後ろにいるのは、同じようにヘルメットと迷彩服を身につけた男性だ。
「よくぞ俺たちの狙撃を攻略した。目の付け所は褒めてやろう」
迷彩服の男性はぱちぱちと拍手をした。
一方、メガネの男性は真っ先にミラを指差した。
「そこの女! よくも僕のドローンを壊してくれたな! 修理代、高いんだぞ!」
「いや、知らねーし」
ミラが吐き捨てるように言うと、メガネの男性はわなわなと震えた。
「これだから三次元の女は嫌いなんだ……! 未羽ちゃんだけが僕の心の支えだよ!」
「気持ち悪いから名前を呼ばないでくれる? キモ豚」
「はうっ! その毒舌もたまらん!」
「そいつだって三次元じゃねーか……」
ゴンタの冷静なツッコミが冴え渡るも、メガネ男は未羽と呼んだツクモにメロメロで、意に介さなかった。
「茂夫。そろそろ真面目にやるぞ」
「あっ、はい、権造殿。『ここから先は通さないぞ!』ってやつですね。一度やってみたかったんですよ、こういうの」
茂夫と呼ばれたメガネ男の顔が、キリッとした表情に変わる。俺たちは腰を落として戦闘態勢に入った。
「クリア、スキルだけ読み上げてくれ」
「女の子は硬化、消化。男の子は武装、爆弾、必殺」
「よし。解析終了」
必殺持ちが一人いるだけで、戦闘の危険性はグッと高まる。俺はより一層気を引き締めた。
そのとき、茂夫が口を開いた。
「まずはこれ! 未羽ちゃん、解除を!」
「了解よ、キモ豚」
未羽が手を挙げると、地面の感触が突如なくなった。いままで床だと思っていたものが、柔らかい布地へと変わっていく。
「しまった!」
俺の体は重力に任せて自由落下を始めた。後方に控えていた美咲とミラ以外の全員が、足場を失い階下へと落ちていく。
「くっ……触手!」
翔太さんの合図で、マッキーの両手から伸縮自在のネクタイが伸びる。
そのネクタイは俺とクリアの胴体をそれぞれ掴み、後方へ投げ飛ばした。おかげで、俺たちは足場が残っている部分に着地することができた。
「俺たちのことはいい! 上を目指せ!」
翔太さんペアと春菜ペアはそのまま穴に落ちていき、見えなくなった。
「二組減ったか。上出来だ」
権造はにやりと笑った。
床には穴が空いており、未羽のスキルでその部分にも床があるように見せかけていたのだろう。敵の策にまんまと引っかかってしまったというわけだ。
だが翔太さんの言った通り、少しでもたくさんの味方が敵の心臓部にたどり着くことが重要だ。見捨てるようで心苦しいが、いまは戦闘を続行するべきだ。
「やるぞ、美咲、ミラ」
「トーゼン」
俺たちは穴を回り込むと、改めて敵に相対する。
「刀化!」
「武装」
「硬化!」
「武装」
双方が武器を構え終わる。
そして束の間のにらみ合いの後、全員が同時に行動を開始した。
クリアの半透明の剣を、未羽は両手で受け止めていく。刃が通らないほどに皮膚が硬くなっているようだ。
一方、迷彩服の少年とミラは激しい撃ち合いを始めた。レーザービームとBB弾が所狭しと飛び交い、爆ぜる。
互角に競り合う双方の陣営を見た茂夫は、メガネをくいっとずり上げた。
「なかなかやるようですね。ならば、こんなのはどうですか! 消化!」
未羽の両手にドロリとした液体がまとわりつく。
このスキルは、岩本先生が生み出した七つ石の少年も使っていたので知っている。なんでも溶かしてしまうスキルだ。
戦法を読んでいたとはいえ、それが脅威であることに変わりはない。クリアは直接触れないようにしながら、拳を避けていく。
この辺りが潮時だと思った俺は、クリアに背後から呼びかける。
「クリア、『アレ』やるぞ!」
「分かった!」
クリアは、未羽の手に当たるのも厭わず、積極的に前進し始めた。
捌き切れなかった未羽の拳が皮膚にかすり、煙を上げる。それでもクリアは突き進む。
そうして致命の間合いまで近づくと、クリアは胴体目掛けた突きを放った。
「あんたの狙い、バレバレよ!」
未羽はそれを両手で掴み取ろうとする。そのタイミングに合わせて、俺は叫んだ。
「発射!」
俺のかけ声に合わせて、クリアの手首から剣が分離し、発射される。
「なっ……!?」
そんな攻撃があるとは思わなかったのか、未羽は胸元にモロにそれを食らい、数歩後ずさった。
刃の突き刺さった傷口からドクドクと流血する未羽に向かって、クリアは残る左手でVサインをした。
「やーりぃ!」




