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45センチ目「敵地突入」

 俺たちは数時間をかけて、ようやく目的の建物へとやってきた。


 その建物は宮崎県と鹿児島県の県境にそびえる高千穂峰(たかみほがみね)の中腹に立っている。

 工事中のため、周囲は柵で囲まれており、中には入れないようになっている。


 俺たちは見張りを警戒しながら、柵の内側へ入る場所を探した。

 やがて、柵の途切れたところに低木が生い茂る藪を見つけ、俺たちはそこから敷地の内部へと侵入した。


 幸いなことに、巡回している警備員は誰もいないようだった。


「それでは、作戦開始だ」


 豪さんの合図で、俺たちは二チームに分かれて行動を開始した。


 俺のチームには春菜、翔太さん、美咲。一方、豪さんのチームには瑠璃、俊彦さん、亮助がいる。

 それぞれ、戦闘と補助のバランスを取った組み合わせになっていると豪さんは言っていた。


 そして、チームクウは西側の入口から、チームゴウは東側の入口から、分かれて侵入する。

 それによって、敵の戦力を少しでも分散させようという狙いだ。


 そんなわけで、俺たちは西側の入口から建物内部へと足を踏み入れた。


 建物の中に入ると、俺たちは早速それぞれのツクモを人間態に変身させた。


 翔太さんのマッキーは、バーテンダー風の衣装を着たスレンダーな男性。

 美咲のミラは、パンクなファッションに身を包んだツインテ紫髪の色白少女だ。


 サバゲーフィールドというだけあって、室内は木の板やドラム缶などの障害物に遮られ、入り組んだ空間になっている。

 空調設備の音かなにかだろうか、ブーンという小さな音が響いている。


「クリア、解析(スキャン)。敵が見えたら即行(そっこう)で教えてくれ」


「分かった」


 俺たちは敵襲を警戒しながら二列横隊で進んでいく。手に汗握る緊張感の中、じりじりと進んでいくのは肝が冷える。

 そして、その瞬間は唐突に訪れた。


 クリアが首を大きく傾けたかと思うと、背後で大きな破裂音がした。とっさに振り返ると、真後ろに立っている分厚い木の板に穴が空いており、(ふち)が黒焦げになっているのが見えた。


「敵の攻撃か!?」


「うん。小さいタマが、頭に向かってとんできた」


「どこから来た?」


「カベからはねかえってきたよ」


「跳弾か……!」


 おそらく、弾を壁に何度も反射させて、壁越しにこちらを狙っているのだろう。

 そして、どういう原理なのかは不明だが、向こうからはこちらの位置が正確に分かるらしい。そうでなければ、クリアの頭部をピンポイントで射抜いたりはできないだろう。


「ゴンタは先頭に立って、盾を展開。他のみんなは二発目に備えて、後ろに控えるように」


「了解。ゴンタ、盾化(シルド)


「大きめにしといたぜ」


 ゴンタの身の丈ほどもある巨大な盾にできる限り身を隠すようにして、俺たちはゆっくりと前進していく。


 すると突然、クリアは俺を押し倒した。尻餅をついた俺と春菜の頭上で、大きな破裂音が聞こえた。


「あぶなかったよ!」


「横や後ろからも狙えるのか……!」


 まさに死角なしといったところだ。クリアの類稀(たぐいまれ)な動体視力と観察眼がなければ、いまごろとっくにやられていただろう。


「どうするの? このままじゃ撃たれ放題だけど」


「待ってくれ、いま考えてる」


 美咲から急かすような口調で言われ、俺は必死に頭を巡らせた。


 跳弾で三六〇度どこからでも狙える敵。その能力を十全に発揮するためには、それに対応した索敵能力が備わっていなければならないはずだ。


 直接視認するのと同レベルで、正確に位置を把握しなければならない。

 となると、狙撃手とは別に索敵役がいる可能性が高い。


 障害物に関係なく、全体を見られる位置となるとーー。


 俺はふと視界を上に向けた。天井は高めに取られており、開放感がある。

 そのままぐるりと頭を巡らせると、後方で黒い機械のようなものが飛んでいるのがちらりと見えた。


「美咲。五時の方向、天井近くにドローンが飛んでる。狙えるか?」


「トーゼン。ミラ、武装(アムド)。レーザー用意して」


「オッケー」


 ミラは親指を立て、人差し指と中指を伸ばし、残りの指を曲げ、いわゆる銃のような手の形を取った。すると、二本指が小振りの銃口へと変化した。

 それから右腕を伸ばし、左手でそれを支えて、射撃の態勢に入る。


 ドローンは気づかれたことを察知したのか、慌てて急降下して障害物に隠れようとする。しかし、美咲が発声する方がわずかに早かった。


発射(シュート)!」


 ミラの指先から紫色の光弾が発射され、ドローンの羽に命中する。ドローンは揚力を失い、よろよろと落ちていった。

 それと同時に、室内に響いていたブーンという音も途絶えた。


「これでもう狙撃は出来ないはずだ。先へ進もう」


 俺たちは障害物を避けながら、バトルスペースを通り抜けた。念のため、ゴンタの盾に隠れながら慎重に歩いたが、もう跳弾は飛んでこなかった。


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